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バルス!」の呪文でもお馴染みの、ジブリの名作『天空の城ラピュタ』。

物語の重要な役割を担っているのが、そのタイトルの通り、古代文明が遺した天空に浮かぶ城・ラピュタです。

▲小さな頃、空飛ぶ城に憧れた方も多かったのでは?(出典:スタジオジブリ

この超巨大な城は、作中で「飛行石」という不思議な石の力で浮いていることが明かされます。飛行機やヘリコプターの仕組みについて学ぶ航空工学専攻の私にとって、こんなに興味深い技術はありません。石でいいの? すごすぎ

▲小さな飛行石でも人間を支えられる(出典:スタジオジブリ

もちろんこんな石は実在しないので、ラピュタのような巨大建造物を宙に浮かせることは現実では不可能……

……いや、待てよ?

飛行石の代わりにヘリコプターのローターで、ラピュタを浮かせられないだろうか。

▲この部分を「ローター」という

ローターとはヘリコプターの上についている回転翼です。「プロペラ」と呼ばれることも多いですが、厳密には進行方向に平行な回転翼は「ローター」といいます。

ということで、「ラピュタを実際に浮かすには、ヘリコプターのローターが何個必要か」計算してみます。

ラピュタの重さってどれくらい?

今回の目標は、ヘリコプターのローターを使ってラピュタを浮かすことです。 つまり、「ラピュタの重量=全ローターの合計推力」 となるときのローターの数を求めればよいのです。 そこでまずは、ラピュタの重さを調べていきましょう。

▲ラピュタの重さなんて考えたことないぞ(出典:スタジオジブリ

ラピュタは下部に半球状の構造があるなど、複雑な形をしています。また、素材もわかりません。そこで今回は、計算をしやすくするために、ラピュタの3段になっている部分の形状を円柱、素材をだと仮定し、この部分の重さのみを考えることにしましょう。

▲限りなく単純化されたラピュタ

ラピュタの大きさは、パズーとシータがラピュタに不時着したシーンや、ラピュタのジオラマの画像を参考に、以下のように概算しました。また、土の密度は2.0g/cm3としました。

▲ラピュタの幅(1.8km)は東京〜秋葉原間の直線距離よりちょっと短いくらい。かなりでかいぞ

この値から、ラピュタの重さを計算したところ……およそ2,274,000,000トン!

▲23億トンは東京スカイツリー63,000基とだいたい同じ重さ

さすがに重い。これは、かなりのローターが必要になりそうな予感です。

ラピュタを浮かすために必要なローターの数は?

では、いよいよローターでラピュタを浮かせてみましょう。

▲こんな風に飛ばしたい

今回は非常に(どころではない)重いラピュタを浮かせるため、大きな推力を出せるローターが必要です。そこで、陸上自衛隊・海上保安庁などで活躍しており、大型物資輸送・大量人員輸送にも適しているAirbusの大型ヘリコプター「H225」のローターを搭載することとしました。

▲「H225」系列の機体。海上保安庁の「みみずく」 via Wikimedia Commons lasta29 CC BY 2.0

このヘリコプターの最大離陸重量、つまり離陸できる限界の重さは11,160kgです。

この値から、ラピュタを浮かすために必要なローターの数を計算すると、なんと……

約204,000,000個!

▲怖すぎる

ムスカ大佐が見つけたあの飛行石が、ローター2億個分の推力を生み出していたなんて……! 全世界の軍用ヘリコプターの数はおよそ2万台なので、地球上のヘリコプターを集めても全く足りません

恐るべしです、飛行石。もし実際に見つかれば、航空業界に革命が起こること間違いなしですね。

ラピュタに搭載してみたら問題発生

ローターでラピュタを浮かせるためには、もちろんですが、ローターをラピュタに搭載しなくてはなりません。今回は、ラピュタの3段目の下側にローターを搭載してみましょう。

▲赤いスペースにローターをつける

H225のローターの直径は、16.2mです。ここで、ラピュタの下部の構造を半球とし、ラピュタの重心は考慮せず、ローターは対称に設置していきます。ローター同士の間隔は、ローターの直径と同じとしました。

赤色の部分に搭載できるローターの数を計算すると、およそ1,500個

浮かすのに必要なローターの数は2億個だったので……た、足りない! 面積が全然足りません!

▲もうアレを出すしかない(出典:スタジオジブリ

こうなったら奥の手です。赤色の部分を大きくしちゃいましょう。ラピュタ3段目の質量はそのままに、直径をおよそ522kmにすれば、2億個のローターを搭載できました。

▲522kmは東京〜鳥取間の直線距離くらい。でかすぎ

無事ヘリコプターのローターで巨大建造物が空に飛び立った一方、ラピュタとは言い難いクソデカ円盤を生み出してしまいました。憧れの空飛ぶ城はどこへ……。

ということで、現存のローターでラピュタを浮かせることは限りなく厳しいことがわかりました。これからラピュタを観たときには、飛行石がローター2億個分の推力を生み出すすごい石であることを思い出してくださいね。

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この記事を書いた人

小南

小南です。名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻所属。「楽しく読んでいたら、いつの間にか知識も身に付いていた!」と思っていただける記事を提供するべく日々奮闘中。皆さんの一時の気晴らしとなることができれば幸いです。

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