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早いもので、夏休みシーズンはあっという間に過ぎてしまった。円安の世とはいえ、長期休みを利用して海外旅行へ行ったという方もいるのではないだろうか。筆者が今月から暮らしているシンガポールも、多くの日本人観光客でにぎわった。

シンガポールというと、多くの方がイメージするのはマーライオンに統合型リゾートのマリーナベイ・サンズ、近未来的な街並み……といったところだろうか。

▲「シンガポールといえば」のイメージもあるマーライオン

だがこうした「キラキラ」なイメージは、シンガポールの一面にすぎない。「ガムを持ち込むと高額の罰金」といった極めて厳格な管理体制もまた、この国を語るときには必ず話題に上るところだ。

快適だが、ルールはあまりにも厳格。なぜこんなにも極端な国家が生まれたのか? いつしか「明るい北朝鮮」とまで呼ばれるようになった国のリアルを読み解いていこう。

「超」快適な社会

まず知ってほしいのは、シンガポールが世界有数の治安の良さ、そして便利さを備えた国だということだ。

よく「海外ではすぐ財布を盗られるから、荷物にはよく気をつけなさい」なんて話を聞くが、シンガポールでは(特定の地域を除いては)バッグを開けっぱなしで持ち歩いていても、スリに遭うことはそれほど多くない。前述のように観光スポットも充実しているし、旅行客にとっては最高の国のひとつといってもいいだろう。

▲マリーナベイ・サンズ

暮らしていて印象的なのは、超高速で動くエスカレーターだ。日本の約1.5倍はスピードが出るので最初は面食らうが、乗っているとなんだか気持ちよく、効率よく生きている気分がする。

▲この速さ。決して倍速再生ではない

更に電車やバスはクレジットカード1枚で乗れるし、とにかく身の回りのストレスが少ない。ここまで読んだ方の9割は「今度の旅行はシンガポールにしよう」と思っていることだろう。

息苦しいほどの「管理社会」

忘れてはいけない。この羨ましいほどの快適さを実現しているものは、ずばり超厳格な管理社会である。

街を歩いていると、あらゆる場所に「NO 〇〇」と書かれた看板が目に入る。バスの中では飲食禁止。公共の場での喫煙禁止。ゴミのポイ捨て禁止。ガムの持ち込み、禁止。違反すれば、約100万円もの罰金が科されることもある。

▲犬のフンを片付けなければ10万円以上の罰金。Fine(素晴らしい)とFine(罰金)のダブルミーニングで、シンガポールを「Fine City」と呼ぶジョークもあるくらいだ

そのほか、「管理社会」シンガポールを象徴するルールをいくつか紹介しておく。

むち打ち刑が存在する。一定量以上の麻薬を密輸すると死刑

◎自動車を買うには、まず1000万円以上する「車を持つための権利」(車両購入権)が必要。渋滞を未然に防ぐため、自動車の台数が制限されている。

◎生活はとにかく自国民優先。地元らしい食事は「ホーカーセンター」と呼ばれるフードコートのような施設で安く手に入れられるが、パスタ・外国のお酒などには高額の関税が課せられる。

先日の記事で紹介した韓国焼酎「眞露(ジンロ)」も、韓国では100円台のところシンガポールでは2000円以上(!)

◎外国企業や観光客は快く受け入れる一方で、定住を希望する外国人は厳しく審査される。職歴から既往症までみっちり調べ上げられ、筆者も手続きに一苦労だった。

容易に想像できるように、こうした「息苦しさ」に耐えかね、国外で暮らす人々もいるようだ。一方で、国民の多くは「クレイジーな国だ」と自虐的に笑いつつも、生活の一部として受け入れている向きがある。

こうしたシンガポール国民の気質は、どうして生まれたのか?

次ページ:建国以来の「戦略」があった

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この記事を書いた人

Alex

シンガポール在住。現在はシンガポール国立大学・リークアンユー公共政策大学院で公共政策を研究しつつ、(株)batonの海外業務も担当しています。 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)出身。世界情勢・国際関係の面白さを伝えていきたいです。

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