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「すべては情報を出す順番」クイズへと繋がる創作原理

――河村さんは文芸というよりもインターネット寄りの文章がルーツにあるとも話していましたが、文章といっても色んなジャンルがあるわけじゃないですか。純文学だったりラノベだったり、またはクイズだったり、それぞれ書くときの違いってなんなんでしょう?

河村 何が違うかというと、たぶんそんなに違うとは思っていないかもしれませんね。

――おお、そうなんですね。

河村 詩とかになるとまた別物だとは思っているんですが、他の小説とかクイズとか、評論に関しては共通して「情報を出すタイミング」が結構大きな部分を占めているなと思っていて。

▲「多くのものに共通すると思っています」

――なるほど。

河村 ミステリーの例だと一番わかりやすいですね。事件の真相が最後に明かされるとして、パートを2つに区切るとすれば前半は問題の出題にあたる部分、後半は解決編になります。後半での解決を導けるようにしましょうってなったら、そのための情報を前半でうまくたくさん盛り込まなきゃいけないんですね。

「なんで警察が来ないんですか?」って声に対して「いやぁ、嵐の中の孤島だからです」みたいな言い訳もしなきゃいけなくて、ミステリーは言うべきものとそれを言うべきタイミングが小説の中でもかっちりわかるものだと思っています。骨組みからそこまでできる気がするんですよね。

――クイズに通じるのも、なんとなく納得できます。

河村 僕は地元が栃木なんですが、例えばこんな問題があるとするじゃないですか。

鮭の頭や酒粕などをごちゃごちゃにした栃木の郷土料理はなんでしょう?

答え:しもつかれ

河村 これは「鮭の頭と酒粕をぐちゃぐちゃにしたもの」を先に想像してもらってから、「あ、ちなみにそれは栃木の料理なんですよ」っていう情報を後出ししているわけじゃないですか。

――はい。

河村 これは別に「栃木県の郷土料理である鮭の頭と酒粕とかをぐちゃぐちゃにした料理はなんでしょう?」って問題にもできるんですが、こうするとどんな料理かを考えさせる前に頭を栃木状態にすることになるんですよね。

▲順番が違うだけで、実は大きく問題の性質が変わる

――その出し方だと、選択肢を並べさせるような形になりますね。

河村 これは相手にどう思ってほしいかを、情報を出す順番とタイミングで操作できている、ということだと思うんですよね。

それで、これは小説でもできることで例えば

太郎は朝起きて大きく背伸びをした。

河村 という文章があれば「太郎というなら日本人かな」「背伸びをしているなら平和的な状況だろうな」などと思えるわけです。これをもっと現代の話だとわかりやすくしようとして、

太郎はスマホのアラームで起こされ、

河村 みたいになると思います。このくらいのことで、情報の流入ってコントロールできるんだよなと。これはあくまで小さい部分の話ですが、情報の出し入れみたいなことは同じだと思いますね。

――確かに、それは全てに通じそうですね。

河村 評論も何か言いたいことがあるわけだけど、いきなりバンって言っても伝わらないからちょこちょこ説明していくわけじゃないですか。この順番でこうやって思ってもらって、これを納得してもらえたら次はこれが言えるんじゃないか、みたいな。結局情報の出す順番ですよね。

▲文章の、根幹の部分について語る

――なるほど。それを軸にして、ちょっとずつ違う求められる文章にアジャストしていく、みたいな感覚なんでしょうか。

河村 骨の部分は一緒だと思うんですよね。やっぱりそれは硬い部分なので、論理の構造という名の、情報の出すタイミングで大体決まっちゃう気がしていますね。

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この記事を書いた人

志賀玲太

志賀玲太です。東京藝術大学美術学部芸術学科を卒業。なんだかよくわからない記事を書きます。大概のことは好きです。

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