QuizKnock

アプリで記事をもっと見やすく

インストールする

カテゴリ

ログイン

どうも、シャカ夫です。

冬の長さを甘く見積もりすぎまして、私が購入した今年度分のわずかな冬服は完全にすり切れてしまいました。

そんな寒い季節に、テレビやSNSで必ず目にするイベントがありますよね。

そう……

カピバラ……それは世界最大のげっ歯類(ネズミの仲間)にして、動物園の人気者。

冬になると日本各地の動物園で露天風呂に入っている姿を見ることができます。湯船に柚子を浮かべたりなんかして気持ちよさそうに入浴している姿は大変愛くるしく、私自身もメディアでその姿を見ては癒されています。

ですが、これってよく考えたらおかしくないですか?

カピバラの生息地は暖かい南米の水辺。寒い冬の温泉なんて、めったに味わうことができない環境のはずです。

野生でも温泉につかる様子が目撃されるニホンザルならともかく、カピバラが露天風呂に入るのは習性的におかしい気がする……。

▲これは理解できる

それなら、もしかすると動物園のカピバラは別に入りたくない露天風呂に「入らされている」だけなのでは……? 全て、人間のエゴが生んだ虚飾のイベントなのでは……?

そう考えた私はカピバラの露天風呂の真相を暴くため、“こちら”にやってきました。

▲画像は伊豆シャボテン動物公園さんより提供いただきました!

元祖”カピバラの露天風呂を標榜ひょうぼうされている、伊豆シャボテン動物公園さんです!!!

「元祖」、つまりは「日本で初めてカピバラが露天風呂に入った場所」ということ。ここで話を伺えば、南米原産のカピバラが露天風呂に入浴する理由を突き止めることができるはずです。

▲看板には堂々と「元祖」の文字が

ということで、伊豆シャボテン動物公園のカピバラ担当の飼育員・林さんにインタビューをさせていただきました。カピバラの露天風呂についての全ての疑問をぶつけていきましょう!

「カピバラの露天風呂」が始まったきっかけ

――本日はよろしくお願いいたします。

林さん よろしくお願いいたします! 放し飼いにしているリスザルがカバンの中に手を入れるかもしれませんので、インタビュー中も持ち物にはお気をつけくださいね。

――リスザルがいるんですか!?

林さん 伊豆シャボテン動物公園はお客様と動物の距離がとても近くなっております。そちらには放し飼いのクジャクもいますよ。

▲クジャクがそこらにいる

――それでは、リスザルが来る前に本題に入らせていただきます。伊豆シャボテン動物公園さんは、どのような経緯で「カピバラの露天風呂」を始められたのですか?

林さん はい、我々伊豆シャボテン動物公園は「元祖」カピバラの露天風呂をうたっておりますが、その歴史は1982年の冬に遡ります。

▲歴史があるイベントらしい

林さん 当時のカピバラ担当の飼育員がたまたまお湯を使って掃除をしていたところ、できた湯だまりにカピバラたちが寄ってきて、お尻をつけてくつろぎはじめたそうなんですね。

林さん これを見た飼育員は「カピバラは水だけではなく、お湯も好きなのではないか」と考えまして、温かいお風呂を設置してあげたそうです。すると、カピバラたちは喜んで入浴を始めたんです。これが「カピバラの露天風呂」が始まったきっかけですね。

――もともと水を好むのはよく知られていたんですね。

林さん そうですね。カピバラは野生では水辺に生息している動物ですので、水好きなのは有名でした。それがあったかいお湯になっても大好きだった、というのが大発見だったんですよね。

――野生ではあんな温度のお湯にはなかなか出会えない気がしますが、抵抗感や恐怖心はないみたいですね。

林さん そのようです。このあと見ていただけるとわかりますが、みんな自分からお湯に入っていきますよ

林さん 園内のカピバラたちはほとんどが伊豆シャボテン動物公園で生まれた子たちなんです。彼らは親たちがお湯に入るのを見て育ってきたので、お湯には恐怖や抵抗感は抱かないんですよ。早い場合は、生まれてから3日で露天風呂に入る子もいます。

――そう考えると、40年前に初見でお湯に入ったカピバラの勇気はすごかったわけですね。

林さん そうなりますね!笑

林さん ただ、自分からお湯に入っていく動物は珍しいですが、飼育にお湯が欠かせない動物は他にもいますね。変温動物の爬虫類はちゅうるいなどは、寒さで弱ってしまうのを防いだり、脱皮不全にならないようにするためにお湯に入れることがあります。

――カピバラたちがそこまでお湯を好むのはなぜなんでしょうか?

林さん 日本の冬が彼らにとって寒すぎるのが最大の理由かなと思います。カピバラはもともと南米に暮らす動物ですので、寒さは体に毒になってしまいます。

林さん ですから、体を温める目的で自然と入浴しようとするわけですね。ニホンザルが温泉に入るのがよく知られていますが、あれと似た習性が動物園内で見られるようになったと考えられます。

林さん 体があったまると寒さでじっとしていたカピバラたちもよく動くようになりますので、冬に元気に歩き回るカピバラを見ていただけるという点でも、露天風呂は動物園と相性がいいと思います。

▲お湯で積極的に温まろうとするカピバラ

――冬はカピバラたちにとって、お風呂に入らないとやってられないほど過酷な寒さなのですね。

林さん 何の設備もないと辛いでしょうね……。当園では露天風呂の他に床暖房赤外線ライトも飼育環境に設置していますので、カピバラたちが安心して冬を越せるようになっています。

▲奥が床暖房とあったかいライトがあるエリアになっている

露天風呂は、生息地とは異なる過酷な冬を乗り越えられるようにというカピバラへの優しさが詰まったイベントだったのですね。人のエゴにまみれた見世物だと思い込んでいた私は、自らの醜い心を深く恥じました。

――でも、毎日カピバラのためにお風呂を用意するのって大変そうですよね。飼育員さんたちの負担は増えてしまっているのでは?

林さん いえ、実はそうでもなくて、むしろ楽になっている部分があるんです。それはカピバラの「ある習性」が関係しているのですが……

次ページ:カピバラはお風呂の中で〇〇をする!? 飼育の裏側を徹底解剖!

1
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

関連記事

この記事を書いた人

シャカ夫

京都大学出身。クイズと毒とホラーが大好き。見るだけで世界が広がるような知識を皆さんにお届けできるよう、日夜頑張ってまいります。

シャカ夫の記事一覧へ