3人目:志賀玲太
お次は、東京藝大出身の志賀さん。芸術の面白さだけでなく、それに伴う苦悩も知っています。常軌を逸したエピソードが飛び出すやもしれません。
披露!
よろしくお願いします! いやぁこの場所に座ると緊張しますね。
▲視線が自分に集中する緊張感
大学2年生の……夏の終わりぐらいだったでしょうか。そこで体験した出来事をお話しします。
私は東京藝術大学の美術学部で勉強しておりまして、2年生ともなると1年間勉強してきた自負があるわけです。
「私って、芸術のこと理解ってきたんじゃないかな」とか「これがこう面白いんだ」とか、そう思ってくるころなんですよ。
まさに「大2」だね、若いなぁ……!
僕も同じころ、化学の神髄に触れた気になってたな~。
勉強で一気に世界が広がる時期ですよね。
そんな大学2年生の夏、事件が起こったのは学園祭の開催期間でした。
芸術大学の学園祭ですから、やはりメインは学生たちの作品展示になるわけです。
あちらこちらの教室で色んな作品が展示されていますので、大学内外の人たちはじっくりと見て回るんですね。
藝大の学園祭って、巨大な展覧会みたいな感じですもんね。ケタが違う。
他の専攻の作品をじっくりと見る機会もなかなかなかったもんですから、私も喜び勇んで鑑賞しに行きました。
隙あらば友達と語るわけですね、彫刻を見ては「もうミニマルは遅い」だとか、絵画を見ては「写実は時代遅れだ」とかそういうことを。
ミニマル:「ミニマルアート」のこと。主観的・感覚的要素を極限までそぎ落とすことを目指した芸術の傾向。
▲思わず笑みがこぼれる一同
一丁前に講評してるな~。
僕らがもう失ってしまった「最高の若さ」ですね。
そうこう言って回っているうちに、ある展示室にたどりつきました。
その展示室はいわゆるカオスな空間でして、絵画や彫刻はもちろん、写真や映像作品なんかもあって、色々な作品がひしめいていました。
そういうところもあるんですね。
そこであるものが目に入るわけです。それは……壁際に置かれたキックボードでした。
▲イメージ
怪しいアイテムが出てきましたね。
▲何か起こりそうな予感
美術というのは多岐にわたりますから、既存のものを使って作品を表現するのも、美術家としての腕の見せ所なわけですよ。
それでいて、あまりにも雑多な空間ですから、良い味が出てたんです。
「そうか、移動手段をこういったところにチョコンと置くと、違った面白みが出るものだな」と、私熱心にそのキックボードを見始めたんですよ。
空間と調和してたのか。面白いですね。
でも、鑑賞しているうちにだんだんと、嫌な予感がしてきたんですよ。
ここで!?
この企画、いきなり嫌な予感しがち。
そのキックボード、あまりに他の作品から浮いてたんですよ。
そんな違和感を私が抱いたちょうどその時、ある男が部屋のドアをガラッと開けてスーッと入ってきたんです。そして、その男が……
キックボードをガッとつかんで、そのまま部屋の外に消えていったんです……。
▲最高のオチ
本当にただの移動用だったのか~!
めちゃくちゃ恥ずかしい体験ですね……。
わかった風な顔して眺めていた分、反動はデカいでしょうね。
それが作品でないと気づいた瞬間、私はゾッとしましてね。
その後しばらく、芸術というものが何かわからなくなってしまいました。
いい勉強になりましたね。
いいなぁ、若いなぁ……。
▲「若いなぁ」を連呼する最年長参加者
当時の私のリアクションも良くなくて、さも「わかってましたよ」みたいな顔でその場を離れちゃったんですよね。
きっつ~~~~!
まぁ、でも私は……
「そのキックボードが持ちだされるイベント込みで作品だった」説も捨ててはいませんけどね。
いや、さすがにないでしょ。
幻想にすがるのは、もうやめましょう……。
私のお話は以上となります。皆さんも、芸術作品には謙虚に向き合ってくださいね。
結果
いやぁ、大学生ならではの若さがあってよかったなぁ。
似た体験はしたことないのに、なぜか羞恥心だけすごく伝わりました。
僕もキックボード買ってオフィスに置いとくか~。
芸術大学ならではの若気の至りを語ってくれた志賀さん。ほどよく笑えるところもあり、他のメンバーからは好印象でした。
僕は怪談にかける想いが違いますからね。目にもの見せてやりますよ……!
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