河村です。どうも。
先日、目覚まし時計が壊れました。
もし寝ている時に壊れたら永遠に目覚められなかったはずなので、起きている時に壊れて良かったです。
今日は「食の喜び」について考えていました。
僕は食の喜びを知っています。心の底から知っています。
なぜなら一度失ったことがあるからです。
……数年前まだヤンチャだった僕は、食費を浮かせるため、食事を統一し、その全部を完全食にしていました。
毎日毎食「牛乳にプロテインを溶かして、シリアルを加えたもの+サプリメント」。
(美食は悪だ、というイギリス人みたいな考えがあったことも否定できません。僕は食事の一過性さを極度に敵視していたのです)
その結果、食費は浮きました。アホみたいに浮きました。
一方で、フィジカルやメンタルからは潤いが失われ、生活がガッサガサになりました。当然ですね。
大切なものは失ってから気付くもの。そこで初めて僕は、「食の喜び」に気付いたのです。
さて、喜びに目覚めた僕が考えるのは「どんなものが美味しいか」。
この難問について、僕は答えらしきものを見つけました。
脂です。脂は美味い。
野菜や海産物も美味しいんですが、どちらかと言うと「大いなる何かに身を委ねる」タイプの美味しさであって、ッシャオラ感は足りません(ッシャオラ感とは、「ッシャオラ」と口に出したくなる感じのことです)。
ッシャオラ感のある食べ物といえば、脂です。ゆえに脂は美味しいのです。
しかしどうやら、「脂は健康に悪い」。色んなメディアが脂の危険性を叫んでいます。
……そんなことは知っとるのじゃい!
ココらへんをちゃんと調べたところでドーセ「食べ過ぎも食べなさ過ぎも良くないぞい」という含蓄じみたミミタコ結論が得られるだけ。
偉大なる栄養学が辿り着いた間違いの無い結論です。
でもね。
身体に悪いのは百も承知、僕は腹いっぱい脂が食いたい。腹いっぱい脂を食うことを許されたい。
こんな僕を許してくれるものはないものか……。
そうだ! 栄養学的な視点がダメなら、文化的な視点から許してもらおう!
フィリポフ,ミシェル 著(2016)『脂肪の歴史』(服部千佳子 訳)原書房
そういうわけで、本を買ってきました。
脂肪の歴史・文化について書かれた本です(腹回りの脂肪についての本でない旨、前文に書かれています)。
今日は、「脂肪を食べ過ぎても許される」、そんなハートフルな文化を探してみます。
生きるための脂肪――イヌイットの文化
フィリポフ(2016, p13)によれば、通常の我々の食生活において、脂肪の占める割合は4割ほど。
しかし、北極圏・イヌイットの食文化では、脂肪が全エネルギー源の7割を占めるそうです。7割!?
脂肪7割の食事って想像がつきません。「バターの天ぷら」とか作ったらそのくらいになるかもしれませんが……。
イヌイットの皆さん、何食べてるの?
……答えは、アザラシ。
寒い寒い北極圏。冷たい海にすむアザラシは、防寒のため身体に脂肪を蓄えています。体脂肪率は50%を超えるそうな。
イヌイットはそんなアザラシを食べます。アザラシの脂肪を食べます。なぜなら、食べないとエネルギーが足りず、体温が保てないから。
脂肪はエネルギーの塊、炭水化物なんかよりよっぽどエネルギッシュ。
そういうわけで、体温を保つのが大変な、エネルギー消費が激しい北極圏では、脂肪がもてはやされるのです。
他にもイヌイットはクジラなどを食べるそうです。やっぱり脂っぽそう。
権力としての脂肪――インディアンの文化
アメリカ先住民インディアンの伝統行事「ポトラッチ」を紹介します。ポトラッチでは、脂っぽい食べ物が食いたい放題なのです。
ポトラッチ。出産や成人の時など、節目節目に行う祝宴です。
(ここから精神世界)
さて、ポトラッチの始まり始まり。
あなたは招待客。宴に招かれます。
すると食べ物が山ほど出されます。食べたい放題イェーイ!
このごちそうは、主人からあなたへの贈り物なのです!
食べたい放題イェーイ! あなたは食って食って食いまくります。遠慮は要りません、贈り物ですから。
アザラシや魚などの脂っぽい料理(彼らにとって高級品)が出ます。脂で腹を満たせ!
パクパク……。
ムシャムシャ……。
……。
さてさて、さすがにもういいかな。あなたはもう食べられません、大満足。
でも食べ物はありあまっています。とんでもない量が積まれています。
あなたは吐く寸前まで食べていて、もう一口も食べられません。
すると主人、おもむろに立ち上がる!
そして料理を全部火の中へ! 悪魔的笑みを浮かべる主人!
そう――この行事は「主人の財力見せつけパーティー」だったのだ!
いやらしく笑う主人、引け目を感じるあなた、生まれた絶対的「人間格差」!
(ここまで精神世界)
ポトラッチとはこういう行事です。マジです。「贈与による戦争」などと言われることがあります。
こんな「札束ビンタ」みたいなイベントが、インディアンの間では行われているのです。
腹は満たされても心がすさむ……。
※食事会以外のパターンのポトラッチもあります。共通するのは「最強の財力を見せつけて相手を沈黙させること」。
以上、世界から2つの「アブラギッシュ文化」を紹介しました。
脂肪を腹いっぱい食べるためには、とんでもなく寒い地域に移住するか、お金持ち主催の食事会に参加すればいいことが分かりましたね。
……寒いのが苦手で、人脈の無い僕には、両方無理そうです。
さて、ここで考え直します……僕が好きなものを食べることを、誰かに許してもらう必要は、そもそもあるのか?
そうだ! 僕は好きなものを好きなだけ食べればいいんだ! イェーイ!
そしたら身体は太るわ財布はやせるわでエライ目にあいました。
あしたはげつようび。あしたはダイエットも節約もするから許して……。
【きょうのふくしゅう】