でたらめな地震予知に騙されるな!
地震に関する研究の中でもっともその社会的関心が高いのが地震予知だと思います。天気予報のように地震もあとどれくらいで起こるか分かればいいのですが、そう簡単にはできません。地震が発生する地下深くにどれくらい強い力がかかっているかを測定するのが困難だからです。
地震予知をしたと言い張る人は多くいますが、そのいずれもが信頼に足る予知をしていません。現状地震の正確な予知は困難です。信憑性の低い地震予知者に騙されてはいけません。
地震予知が地震予知として価値を持つためには、「いつ」「どこで」「どれくらいの大きさ」の3つを明確にする必要があります。地震自体は毎日起きていますから「今日どこかで地震が起こる」という発言に意味はありません。また小さな地震は大量に起きていますから、場所と日付を指定しても「M6以上」などと指定しなければ意味がありません。
大地震は周期的に発生する?
地震予知は現状では困難ですが、今後の地震の発生を予測・予知するための研究は行われています。内陸断層で発生する地震は不明な点が多いのですが、プレート境界で発生する地震(東北沖地震や南海トラフ地震など)についてはある程度周期的に発生することが分かっています。
有名な例は宮城県沖地震です。19世紀以来宮城県沖でおよそ30年間隔でM7.4程度の地震が発生していました。2005年まで見ると次回は2030年~2040年ごろと予想したくなりますが、2011年に宮城県沖どころか三陸沖から茨城沖までを巻き込む想定外の巨大地震が発生してしまったことは記憶に新しいでしょう。
地震の前兆は見えるのか?
一方で地震の前兆現象の探索も行われています。地震雲や井戸の水がなくなったなどといろいろな話がありますが科学と疑似科学を区別するのが難しいところです。
前兆現象を科学的に評価するためには、前兆現象が発生して地震が起きた場合以外にも、前兆現象は発生したが地震が起きなかった場合、前兆現象は発生しなかったが地震が起きた場合などもきちんと調べ統計的な評価を下す必要がありますが、大きな地震のサンプル数は限られているため難しいです。
東海地震については、前兆滑り(震源域が地震前にゆっくりとはがれ始める現象)を検出することで警戒宣言を出すことができる法体制が整っているのですが、本当に前兆滑りが観測できるかは疑問を抱かざるを得ないのが現状です。実際東日本大震災では前兆滑りは観測されませんでした。
一方で前兆現象から災害の軽減に成功したという例もあります。1975年中国で海城地震というM7.3の大地震が発生しました。この地震では、顕著な前震活動が見られたため、100万人規模ともいわれる集団避難を行ったところ、避難後に本震が発生しました。結果多くの建物が倒壊した割に人的被害が少なくすんだようです。
しかし前兆現象が発生するのは特殊な例で、翌年中国では唐山地震という大地震が発生しました。この地震は予知することができず、公式発表でおよそ25万人が死亡するなど20世紀最大の地震被害となってしまいました。
最後に、政府は日本各地が今後30年以内に震度6弱以上の揺れに襲われる確率を表す地図を毎年公表しています。あくまで「確率」ということで、どんなに低くてもリスクはゼロではなく信用に足るかも怪しいですが、紹介しておきます。(実際近年の内陸直下地震はどれも確率の低い場所で発生しているという批判があります。)
東海・東南海・南海地震を想定して太平洋側は総じて高い確率になっていますね。
次回(下の関連記事より)は緊急地震速報や余震について書こうと思います。