みなさんこんにちは。女流棋士の香川愛生です。
前回の記事を読んでくださった方から、たくさんのコメントをいただきました。ありがとうございます!
▲前回のゲスト・中村太地先生は、その後見事順位戦で昇級!
連載2回目のゲストには先輩女流棋士で、小学生時代から20年近くお世話になっている山口恵梨子さんをお迎えします。
鳥取県
NHK Eテレの番組『将棋フォーカス』に、高橋茂雄さん(サバンナ)とともにレギュラー出演中。2023年1月、番組内で入籍したことを発表。
山口さんもYouTubeをされていて、私のチャンネルと何度もコラボさせていただいております。
▲2人で10万人記念の盾を手に。思い出の写真です!
昔から「優しいお姉さん」という雰囲気で接してくださった山口さん。今回のインタビューも和やかに進むかと思いきや、「2歳からが人生一の地獄だった」など、穏やかでない話も飛び出して……!?
幼少期からとことん突き詰める性格だった山口さんは、将棋、そして人生にどう向き合ってきたのでしょうか? 20年一緒にいた私も知らなかったエピソードが満載です!
目次
◎ ポケモンブームを先取り、2歳で英会話……幼少期から冴えた「先読み力」
◎ 将棋を「戦う」大変さと、「広める」ことの難しさ
◎ コナンともコラボ! 将棋界の多様な取り組み
「先読み力」と「粘り強い努力」
▲香川宅に山口さんをお迎えしました
ーーそもそも、山口さんが将棋界を目指そうと思ったきっかけは何だったんですか?
山口 小学1年生のときだったと思うんだけど。職業選択について考える授業があって、いろいろ調べるなかで「女流棋士になったら面白そうだな」と思ったの。
▲将棋を始める前に「女流棋士になりたい」
ーーなんと! 「もともと将棋をしていて、好きだからプロを目指す」という方がほとんどだと思うので、先に「女流棋士になろう」と思ってから将棋を始めるのはかなり珍しいですね。しかも、その決断を6歳で!
山口 私はそんなに才能とかないけど、当時から「早めに決めちゃって努力を重ねれば、才能ある人にも追いつけるかな」って思ってたの。
▲才能の差は、決断力と努力でカバーできる
ーー小学生にして、ただ者ではない感じがします。
山口 将棋以外でも、小さい頃からゲームが好きだったんだけど、4歳のときに出た初代ポケモン(『赤・緑』)は発売日から遊んでたなー。
▲時には大量課金も辞さないほどのゲーム好き
ーー初代のポケモンって、今みたいに「絶対売れる」とは言われてなかったですよね。耳が早いですね。
山口 一緒に英会話教室に通ってた男の子が「絶対面白いよ」って教えてくれて。どうしてもポリゴンがほしくて、タマムシシティのスロット※を8時間ぶっ通しで回したこともあったな。
タマムシシティのスロット:当時、ポリゴンを入手するにはタマムシシティのゲームコーナーでスロットを回し続けるしかなかった。
▲ゲームのときは対局くらい真剣……?
山口 さすがにゲームのしすぎで熱出しちゃって、親から時間制限されちゃったんだよね。でもさ、楽しすぎて時間を守れるはずもなくて……(笑)。家中のリモコンや目覚まし時計の電池を抜いて、ゲームボーイに投入したりしてたよ。
ーー何事にも超真剣だったんですね。ところで英会話の方も、随分とスタートが早くありませんか?
山口 2歳で始めたかな。英会話を習っていた頃が人生で一番の地獄で、確か7歳で英検取ったと思う。鼻血出しながらやってたよ。
▲ひえー! とんでもない英才教育です
山口 本当にきつかったけど、教室の帰りにミスタードーナツのドーナツを食べながら、さっきの男の子とゲームするのが楽しみだったんだ。
ーーその年齢でそんなに厳しい経験をされるとは……でも息抜きはかわいらしいですね(笑)。
高め合うカギは「人と違うことをする」
ーー山口さんといえば、大盤解説会※で聞き手を務める際の軽妙なトークも印象的です。
2021年の竜王戦、伊藤真吾六段との大盤解説会で(読売新聞オンライン動画より)
大盤解説:将棋盤を模した大きなパネルなどを使い、戦局を解説するイベント。女流棋士が「聞き手」として解説役の棋士とともに進行することが多い。
ーー盛り上げ方がお上手ですし、解説の先生への踏み込んだコメントもあって……その勇気はどこから来るんですか?
山口 陰キャが頑張ってしゃべってるみたいな感じじゃない?(笑)
▲いや言い方! でもそんな山口さんが昔から好きです
山口 昔から「自分の人気を出したい」とはあまり思ってなくて。将棋界が大きくなってほしいし、そこに自分が少しでも関われたら嬉しい、という一心でやってるかな。
▲自分の人気より「将棋界のため」
山口 愛生ちゃんこそ、YouTubeもがんばってて尊敬するよ。
ーー私は、何か他のプロ棋士の先生方と違ったことができないか、と考えてて。もともとニコニコ動画とかを見るのが好きだったので、まだあまり将棋が浸透してないYouTubeを始めてみようと思い立ちましたね。
▲初コラボの思い出
ーー最初は右も左もわからなかったけど、ここまで続けられて、たくさんの方に観ていただいて本当にうれしいです。
山口 「人と違うことをする」、プロ棋士でも意識してる人は多いと思うな。それぞれの得意分野を活かして、お互い頑張れるような環境っていいよね。
ーーそういう意味では、山口さんがYouTubeで講座を始められたときはすごく嬉しかったですし、心強かったです。
ーーテレビ出演とYouTubeでの活動とで、違いを感じることはありますか?
山口 今やってる『将棋フォーカス』は将棋の初心者向けのコンテンツもあるから、どれくらい噛み砕いて話すかの取捨選択ですごく悩むかな。YouTubeは編集とかが大変だけど、好きなだけ時間をかけられるじゃない。
▲テレビ収録には独特の難しさがある
ーー確かに個人でやっている動画と違って、テレビの収録は時間の制約という難しさがありますね。
山口 そうそう。その点、共演しているサバンナ高橋(茂雄)さんはプロだよね。私が台本読むの忘れたりしても2秒でフォローしてくれるよ。誰も気づかないくらい自然に。
ーー2秒! さすが、頭の回転が早いんでしょうね。