将棋を「戦う」大変さと、「広める」難しさ
山口 棋士や女流棋士は対局と将棋の普及活動が両輪といわれるけど、普及で新しいことに取り組みつつ、対局もしっかり勝ってる愛生ちゃんは本当にえらいと思うな。女流ABEMAトーナメント、2連覇おめでとう!
▲女流将棋の団体戦で2連覇しました!
山口 年間の対局数ランキングも、全体4位(45局)だったもんね。
ーーありがとうございます。山口さんも、2022年度は40局近く対局されてましたよね。
山口 女流棋戦が増えたおかげだよね。私たちがプロになったときは4つくらいしかなかったのが、今では8タイトル。本当にありがたいです。
私は2021年度はがんばったんだけど(勝率7割近い好成績)、22年度はタイトルホルダーの方と当たる機会も増えて、なかなか勝てなくなっちゃった(笑)。
ーー山口さんの将棋を見ていると、数年前から雰囲気が変わったような印象があります。
▲何か心境の変化があったのでは?
山口 正直に言うと、将棋も普及も頑張りたいなと思っていたけど、普及の時間を削ったって感じかな。自分のキャパシティは決まってるから。
ーー……なるほど。それは覚悟の要る決断だったと思います。
山口 女流棋士って、周りの人が思ってる以上に普及活動を頑張ってるんだよね。女流は男性棋士に比べて棋力が……なんて言われるのには、将棋以外で考えるべきことの量も影響してるんじゃないかな。
▲「女流棋士」という仕事は、想像以上に大変
山口 そこで自分は「ある程度、普及活動をやりきった」という思いもあって、将棋に軸足を移すことにしたの。
ーーおお……山口さんはそれを言う資格がありますよね。
山口 普及を頑張れたのは、藤井聡太竜王が将棋ブームを作ってくれたのも大きいかな。
▲やはり「藤井効果」は大きかった
山口 おかげでワイドショーに出演させてもらう機会も増えて、20〜30分の出番のために6時間半打ち合わせしたり……あの時期は自分でも「頑張った」と思えるな。
ーー6時間半も! ワイドショーは将棋に詳しくない方もたくさん見ますし、「将棋の面白さ」を伝えるコツがあればぜひ知りたいです。
山口 番組の作家さんに言われて印象に残ってるのは、言葉に感情を乗せるのが大事という話かな。ただ話すだけならアナウンサーさんの方が上手だけど、技術だけじゃない伝え方もあるんだなと。
コナンとコラボしました!
ーー対局中心にシフトされたとはいえ、山口さんは今も様々な形で将棋界に貢献されています。新・将棋会館のクラウドファンディングでは委員をされていますよね。
新・将棋会館のクラウドファンディング:将棋の聖地「将棋会館」の老朽化に伴い、2024年秋に新たな建物がオープン予定。その資金集めに、多くのプロ棋士も協力している。
山口 返礼品のオリジナルグッズを考えたりしています。最近では、愛生ちゃんが『名探偵コナン』とのコラボを実現してくれたんだよね。
ーーようやく発表できました。コナンが大好きで、作中に六冠王の棋士・羽田秀𠮷が登場することもあって、ダメ元で当たってみようと。
▲寄付を行うと「コナン」グッズがもらえる!(Twitterより)
ーーほぼ初めて企画書を書いたり、グッズ案を考えて、印刷所やデザイナーさんと相談して……
山口 女流棋士の枠を超えて、もはや敏腕プロデューサー(笑)。
ーーいやいや、不慣れなことばかりで……正直実現するとは思っていなくて、まだ夢みたいです。小学館様と青山剛昌先生をはじめ、協力してくださった方々のおかげです。
山口 駒の根付(ストラップ)とか、かわいいよね。
▲かわいい
ーーコナンファンと将棋ファン、双方が大事にしていることをすくい上げて、グッズの形にするのが難しかったですね。両方の世界の未来に、ほんの少しでも役立てていたら嬉しいです。
山口 これからも、将棋界のためにいろいろとよろしくね。
ーーこちらこそ! よろしくお願いします。
▲ありがとうございました!
おわりに
今回は、山口恵梨子さんにお話をうかがいました。身近にいてくれて本当に頼りになる方ですし、改めて「一緒に将棋界を盛り上げていきたい」という気持ちになりました。
そんな山口さんの魅力は、コミックエッセイ『山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々』でも知ることができます。こちらもぜひお楽しみください!
今後もゲストの方をお迎えし、様々なお話を伺いたいと思います。「こんな人にインタビューしてほしい」「こんな内容が読みたい」など、ぜひ#香川愛生の研Q会でつぶやいてくれると嬉しいです!
最後に、おまけのクイズでお別れです。また次回の連載でお会いしましょう!
おまけの写真たち
インタビュー前には、山口さんのご結婚を祝って色違いのコノヨザルを進呈。昔からなかなかタダではもらってくれない山口さん、お返しに色違いのイダイナキバをくれました
こちらはこうちゃんの記事にも登場したお天気キャスターの檜山沙耶さん(さやっち)との1枚。これからも仲良くしましょう!
筆者プロフィール
東京都調布市出身、29歳。女流四段。立命館大学文学部卒。
2008年、中学3年生でプロ入り。2013年に初タイトル「女流王将」を獲得。
趣味はポケモン、名探偵コナン、クイズや謎解きなど。
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