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3人目:シャカ夫

次なるプレゼンターは、京大農学部出身・シャカ夫。サソリ毒を研究していたアブナイやつは、今回一体どんなものを紹介するのか?

披露!

では、始めようか……!

スライドのアスペクト比(画面の縦横の長さの比率)がやや気になるが、まぁいいだろう!

▲画面余ってる

▲「…………」

…………うちの出身ラボでは、4:3で発表すべきと言われたのだ!
なんか昔のテレビみたいだが、今日の発表内容のガチ度がうかがえるな……!
今回、私が持ってきた「実力が知られていないもの」……それは!

農薬だッ!!!
これはまた、大きなテーマを取り上げましたね。
まず最初に……きみたちは、農薬というものにどういう印象をもっている?

体に悪そう!
無農薬の方が良いという印象がありますね。
ちょっと怖いイメージがありますね。
環境への影響に対する懸念のイメージが強い。
なるほどな……。
きみたちのそのイメージ、全てが思い込みであることを証明していこう!

これは大きく出ましたねぇ。
なぜシャカ夫さんは農薬を取り上げたいんですか? 専門はサソリの毒でしょう?
詳しくは後ほど話すが、実はサソリの研究は農薬に関係しているのだ。
まずは農薬が我々の生活にとって、どれくらい必要不可欠なものかを知ってもらおう。

/コトッ\

リ、リンゴ……?

さぁ……

このリンゴを見て、きみたちは何を感じる?

急にたたみかけてくるな。
目が怖い。

率直な感想を聞いているのだ……!
う〜ん、おいしい、とか?
握力が強いと潰せる!
デッサンで描きがち!

そう、きみたちの言うとおり……

農薬への惜しみ無き賞賛が心に湧いてくるだろう!?

誰も合ってねぇじゃねぇか!
さすがに言い過ぎだろそれは!
ずっと目が怖い。
そもそも、これだけで農薬のすごさなんかわかりませんよ!

▲納得のいかない面々

ならば、もう少しわかりやすい説明をしてやろう。

これが、農薬を使って育てる一般的な農法でのリンゴの収穫量とする。

▲100個あります

これを、農薬を使わないで育てた場合、収穫量は……

こうなる。

▲たったの3個に

激減してしまったではないか!
キティちゃんと同じスケールに……。
農薬を使わない場合、リンゴの収穫量は3%にまで減ってしまうという調査結果が出ている。

日本植物防疫協会『病害虫と雑草による農作物の損失』(2008年)より

▲体積にすると……

▲これぐらい

食べごたえが、ない!
リンゴだけでなく、病害虫や雑草によって収穫量が大きく減ってしまう農作物は多いのだ。
つまり、我々が安定して農作物が食べられているのは、農薬のおかげなのだ!
確かに急に収穫量が減って値段が高くなっても困るが……。
でも逆にそこまで効果が抜群ということは、やっぱり農薬は危険なんでしょう?
それも誤解なのだ。

農薬の具体的な情報を知ることなく、なんとなく危険そうと思ってしまっていないか?
それがわかる簡単な例を挙げて進ぜよう。

「フェンプロパトリン」という農薬が0.02ppm含まれたキクラゲがあるとしよう。
「残留」って書かれているだけで既にちょっと嫌な感じがするな。
「おいしい」と書かれていても、農薬の名前の得体の知れない感じが怖いかも。
じゃあ、体重20kgの元気でかわいい子どもが、その0.02ppmの農薬が含まれたキクラゲを食べるとしたら?

う〜ん、ちょっと不安になっちゃいますね。
かわいくて元気だからな。
ちなみに0.02ppmってどれくらいなんですか?
1ppm=0.0001%だから、0.02ppm=0.000002% だな

0.000002%れいてんれいれいれいれいれいにパーセント……?
農薬がキクラゲ1kgあたり、0.02mg含まれている計算だ。
ほんのちょっとじゃないか!
その通り、ごく微量だ。そもそも、キクラゲどころか、1食が1kgを超える人もなかなかいないだろう。
でもこの「ちょっと」が人体に影響を与える可能性もありますからね……。
と、思うかもしれないが……

この農薬で健康被害が出るには、この子どもは1日に30kgのキクラゲを食べなければいけないという計算になる!

▲キクラゲ地獄

1日で体重20kgの子どもが30kgのキクラゲを!?
農薬で具合が悪くなる前に、キクラゲの食べすぎで具合が悪くなってしまうじゃないか!

その通り!
だが、この0.02ppmというのは、実は基準値を超える量なのだ。
あまりにもシビアすぎるぞ……。

農薬の残留基準値がいかに慎重に設定されているかわかっただろう?
万に一つすら許さない徹底した管理のもと、人体や環境に対する農薬の安全性は保証されているのだ!

▲「確かに思い込みがあったかもしれない……」

だが、そうはいっても農薬は摂取しないに超したことはないのではないか?
それを言うなら、きみたちは農薬、いやそれ以上の危険性をもつものを、ふだん口にしているのだぞ?
なんだと!?
これを見たまえ……。

この植物は何だと思う?

トリカブトかなにかか?
いいや、これだ。

ジャガイモだと!?
ジャガイモの皮には、ソラニンなどの有害物質が含まれている。
この物質を農薬だと仮定すると、国から一発アウトを食らうほどの毒性だ。

だが、世界中で食べられている食材だし、皮付きのジャガイモで体を壊すなんてめったにないだろう? それはなぜか……?

具合が悪くなるほど食べていないからだ。
それに、これらはどうだ?

これってまさか……?
そう、のことだ!

だが、塩も水も人体に重要な成分ではないか!
……つまり我々は、体に悪い影響が出ない程度に摂取してるから大丈夫、ということか?
そう、どんなに重要な食品でも、少なからず危険性をはらんでいるのだ。

農薬も同じことが言える、と?
まさしく。農薬は世界の食料をまかなうためにはなくてはならない必需品だが、他の食品に比べて「よくないもの」というイメージが強すぎる。

農薬を過剰に恐れるのは、水や塩を恐れるのと同じことなのだよ。
水や塩を適度に摂取して生命を維持するように、農薬も適切な使用量・用法で付き合っていくものなのだ。

特別農薬だけが危ないというわけではなく、食のリスクそのものをきちんと考えることが大事なわけだな!
それほど、農薬も我々の生活に根ざしたものなわけですね!
その通り! やっときみたちにも理解してもらえたようでうれしいぞ!
最後になるが、もともと私がサソリ毒を研究していたのは、人間にも環境にも安全な農薬を開発するためだったのだ。

どういうことですか?
サソリの毒成分には、ヒトには効かないが昆虫には効く成分もあってな、それを農薬に活かせないかと研究していたのだ。

サソリの毒も、危険そうだがヒトに効かないものもあるのか。
それも意外ですよね。
一口に「毒」「農薬」と言っても、必ずしも人間に影響があるわけではないのだよ。
単なる毒好きの変態だと思っていたが、なんというか……ちゃんと研究者してたんだな!
きみたちは本当に思い込みばかりだな!

以 上 だ ッ !

参加者の感想

0.02ppmだと、10のマイナス8乗……エグいな!
なんとなく危険なもの」という印象を取り払うことができてよかったです。
「無農薬」が売り文句になっている世間の風潮の中、農薬の本当の安全性・有用性を知ることが過度な商業主義からの脱却につながるのだろうな!(コメンテーターモード)
あんまり意識したことがなかった部分をよく知ることができました、ありがたい!

「農薬はなんとなく悪いもの」という偏見を取り除くことに成功したシャカ夫。ちょっとだけ切ったリンゴは帰宅後すぐに食べたそうだ。

最後は私か。今こそ、反撃の狼煙を上げようではないか!

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