どうも、サソリを世話するひとときが癒しの時間、シャカ夫です。大学院でサソリの毒について研究をしています。
▲サソリと筆者
皆さんは「サソリ」という生き物にどんなイメージを持っていますか? とても怖い毒虫……そう思っている方も少なくないと思います。人気ゲーム『あつまれ どうぶつの森』(以下、『あつ森』)でも、刺されたら一瞬で気絶してしまう厄介な生き物として登場しています。
▲現実では一刻をあらそう重症状です
「サソリは怖い」と思っているあなたへ伝えたい……。
実際には瞬時に人間を倒すほど毒の強いサソリは見つかっていません! そもそも、『あつ森』のサソリのモデルと推測される「ダイオウサソリ」は、おとなしく毒も弱いペット向けのサソリですし……。
こんな風に誇張され、むやみに怖がられてはサソリがかわいそうです。本日は私が責任をもって皆さんの誤解を解き、サソリが素敵で興味深い生き物であるということを証明します!
これだけでも覚えて!サソリの三大推しポイント
フォルムが4億年ずっと大勝利
▲見目麗しきサソリの全体像
ハサミと毒針を兼ね備えたサソリの姿には、感動を覚えずにはいられません。この姿は、4億年以上前からほとんど変化していないことが、化石調査からわかっています。それだけサソリのフォルムは、生存に有利な洗練されたデザインなのです。
▲4億年ほど前のサソリの化石
体長の半分近くが毒を打つための尻尾になっているのも、控えめな見た目が多い他の有毒生物とは一線を画します。カニとハチのいいとこどりみたいで、お得感もありますしね。星座やエンブレムなど、色々なところでモチーフに使われているのにも納得です。
まさに毒のデパート
サソリがもつ最大の魅力といえば、なんといっても毒です。とはいえ、サソリのターゲットはあくまで餌となる昆虫類。ヒトにとって危険な種なんて、ほんの一握りにすぎません。サソリは我々を傷つけるためではなく、昆虫類を捕えることに重きを置いて毒を進化させてきたのです。
▲ヒトはターゲットではないのだ!
サソリの毒は複雑な化合物が100種類以上ブレンドされており、種によってその配合は異なります。現代の技術をもってしても、毒の全貌を解明するのは至難の業です。それをサソリたちは、何億年も前から自分たちだけで生成しているのです。その生き様に独特の「賢さ」を感じませんか?
ということで、サソリの毒はヒトに効かないものがほとんどなので、むやみに怖がるのはやめましょう。※だからといって、知識がないのに素手で気安く触るのはNGです。見つけたそのサソリが、どこからか逃げ出した危険な種である可能性もゼロではありません。
光る
サソリは紫外線を当てると光ります。ブラックライトで照らすとこの通り。フォトジェニックでしょう。
▲闇に浮かび上がる宝石
サソリの表皮に含まれる物質が、このような幻想的な光景を作り出すのです。この絶妙に緑がかった青色、完璧ですよね。時間を忘れてずっと見ていられます。若者のSNSに「光るサソリブーム」が訪れるのも、そう遠くないと見ています。
サソリは日本にもいる
サソリは南極大陸以外の様々な環境に適応し、棲息しています。もちろん、日本にもいます。
沖縄県の八重山諸島には、ヤエヤマサソリとマダラサソリという2種類のサソリが棲息しており、木の皮をめくると意外と簡単に見つかります。
▲良アングルのヤエヤマサソリ
▲ちょっと木の皮をめくるだけで……
▲いましたヤエヤマサソリ。ちっちゃい
この話を聞いて「え、沖縄って怖いところじゃん……」と思った方はご安心ください。どちらのサソリも、恐るるに足りません。マダラサソリは刺されても少し痛い程度で済みますし、ヤエヤマサソリにいたっては小さすぎて針がヒトの皮膚を貫通しません。健気でかわいいですね。
マダラサソリの飼育は法律で禁じられていますが、ヤエヤマサソリを飼うのは問題ありません。世話はあまり難しくないので、ペットにもオススメです。
▲癒しの時間。これで明日も頑張れる
このように、サソリは砂漠にしかいない特別な生物というわけではありません。ヒトの生活のすぐそばにいる、なじみ深い生き物なのです。石垣島などに訪れる機会があれば、皆さんもぜひとも探してみてください!
もう皆さんサソリの虜ですよね?
今回では語りきれませんでしたが、サソリの魅力はまだまだこんなもんじゃありません。サソリは怖いだけの毒虫ではなく、環境に適応しながら賢く生き続ける、とても興味深い生き物なのです。
もし動物園などで展示されているのを見かけたら、ぜひとも1回まじまじと観察してみてください。彼らの体にこれでもかと搭載された「生きるための工夫」に酔いしれることができますよ。
【このライターの他の記事もどうぞ】
【あわせて読みたい】