sponsored by クロップライフジャパン(旧JCPA農薬工業会)
皆の衆、よく集まってくれた。
吊り下げ照明に円卓……ずいぶんと大層な会場ではないか。
▲いつもとは雰囲気の違う会場からお届けしております
まぁ、我々の悲願が叶うのだ。これぐらいの「舞台」は必要だろうな。
皆さん、それぞれの“思い”を持って集まっていらっしゃいますからね。
ではあらためて、司会進行の志賀くんから、今回の円卓会議の概要について説明してもらおうか。
は、はい!(今日はずっとこういうノリでいくのか……)
この世には、世間の思い込みによって力が過小評価され、真の実力が知られていないものがたくさんあると思うのです。
誠に遺憾であるッ!
しかし、今日ここに集まったメンバーは、ものの価値を見極められる方々だと存じております。
まぁ、的確なチョイスといったところだな。
▲「俺たちならものの価値がわかるぜ」の眼
そこで皆さんには、そういった実力が知られていないものを1つずつ持ち寄っていただき……
それを世に伝えて思い込みをひっくり返していただきたいんです!
▲自信ありげな一同
いいだろう……だがいいのか?
思い込みどころか世界がひっくり返ることになるぞ?
一体何を持ってきたんだ????
かまわぬ! この会議にはそれだけの価値があろう。
(今日のノリ、けっこう時間かかりそうだな……)
……ということで!
ここに、「実力が知られていないもの円卓会議」の開会を宣言するッ!!
今回の参加メンバー
須貝駿貴:東大卒で博士号を取得している超インテリ。QuizKnock随一の物理学徒。
あさぬま:QuizKnock編集部に所属。言語学を専攻していた「ことば」オタク。
シャカ夫:サソリ毒の研究で学位を獲った京大卒の農学修士。毒に並々ならぬ思いを向ける。
伊沢拓司:QuizKnockの精神的支柱。クイズ王として培った知識の多さは説明するまでもないだろう。
志賀玲太:今回の司会進行役。東京藝大出身。そのセンスを活かし、ライターや歌人などマルチな方面で活躍する。
メンバーの皆さんも読者の皆さんも「なんか今回は雰囲気が違うな」と感じていらっしゃるかと思いますが……
本日の企画は、クロップライフジャパン様の提供でお送りします!
ありがとうございますッ!!!
圧倒的感謝……!
では、あらためましてプレゼンを始めていただきましょう。
1人目:須貝駿貴
最初のプレゼンターはQuizKnockのエンターテイナー・須貝。物理学で博士号を取った彼が伝えたい「実力が知られていないもの」とはいったい何なのだろうか?
プレゼン開始!
私がトップバッターのようだな。
立ち姿に自信が垣間見える。これは期待できそうだ。
私がお前たちに伝えたい、「実力が知られていないもの」……それは!
▲「えっ!?」
あっ、まだ自己紹介スライドだった! ごめん!
▲「笑ってはいけないムード」が一気に崩れる
先が思いやられるぞ
失礼したな! あらためて、私のテーマはこちらだ!
超伝導!!
トップバッターから「現象」をもってきたか……!
超伝導体の研究で博士号をとった私があえて言うが、君たちは超伝導を何もわかってはいない!
名前くらいは聞いたことありますけどねぇ?
それではダメなのだ。どうせ君たちの超伝導の認識など、「なんか速い」「なんか浮く」程度だろ!?
▲なんとなくのイメージ
▲「それでは大きな誤解につながっているぞ」
う~ん……まぁ否定はできませんね。
まず超伝導とは何かについて説明しよう。
超電導をざっくり説明すると、物質をキンキンに冷やしていくと突然電気抵抗がゼロになる現象のことだ。
それは聞いたことがあるぞ。
一般的に、物質に電流を流すと、物質が持つ抵抗によって電気のエネルギーの一部が熱などに変わって放出されてしまうのだ。
実はこれがすごくもったいない!
▲超伝導があるとうれしいこととは?
しかし、超伝導の状態では電気抵抗がゼロになるから、エネルギーの損失なく電流を流すことができるようになるのだ!
わかりやすい……! いろんなところで超伝導がありがたがられているのはそういうことなんですね。
しかし、だ! 心のどこかで、遠い世界の現象みたいにしか考えていないのではないか?
でも、超伝導なんてそういうものだろう?
ならば、私が君たちにクイズを出してやろう。
このなかで超伝導を示す元素は?
▲「さあ、選んでみろ」
クイズとは、QuizKnockらしいプレゼンだな。
どうだ? どれも君たちがよく知っている元素だ。
ニオブはそこまで知らんだろう……。
ニオブ:灰白色の金属で、延展性に優れる。合金への添加素材として広く用いられている。
なんだと!? リニアモーターカーの超伝導体にニオブが用いられていることを知らないのか!?
じゃあ、それが答えじゃねーか!!
いや……
話の流れ的に全部正解なのではないか?
クイズ王のよくない癖が出てる……。
そうか、解答はそれでいいんだな!?
かまわん!
…………
おめでとう、正解は「全部」だ!
ふん、造作もない。
▲高貴な拍手をする一同
それにしても、酸素も超伝導を起こすなんてすごいですね。
勝手に、金属特有のものだと思ってました。
そう、そこが君たちの偏見なのだ! 君たちレベルであれば、「超伝導」と聞いたらこう思ってほしいのだ……
「超伝導? いや、当然ですよ?」
▲「えっ? 当然ですよ?」
▲いまいちピンときていない皆さん
つまりは今日、私はこれを言いに来たのだ。
超伝導、一部だけチヤホヤされすぎ!
チヤホヤした覚えはないですけど……どういう意味ですか?
ふっふっふ……聞いて驚け!
超伝導はけっして珍しい現象ではない!
めっちゃ冷やすか、めっちゃ圧力かけるかすれば、大体の物質は超伝導体になるのだ!
この周期表のうち、色がつけられている元素は全て超伝導体になることができるとされている!
ほう……めちゃくちゃあるではないか!
ヨウ素(I)とか硫黄(S)とかもそうなんですね。
常温常圧の世界で考えてるから縁遠く感じがちだが、本来は多くの物質に“備わっている能力”であることが知られていない!
たしかにこれだと、「遠い世界の現象」なんて言えないかもしれないな……。
つまり、こういうことだ!
あるところに優しそうな見た目の人と怖そうな見た目の人がいるとするだろう?
ずいぶんとクラシックなヤンキーだ。
そう、ふだんはヤンキーに対して「なんか怖そうだな」と思ってしまうかも知れない。しかし、ここに「捨て猫」と「雨」という2つの条件を追加する!
すると……?
どちらも優しく見えるだろ?
完全に須貝さんのさじ加減だろ!
でも猫に優しい人に悪い人はいませんからね。
「優しさ」という性質は本来みんなに備わっているものだろう? それが条件によって他人には見えたり見えなかったりするというのは理解できるんじゃないか?
なるほど……。
それがまさに超伝導の性質にも言えるのだ!
「超伝導」という現象は、本来は多くの物質で起こりうるのに、「低温」や「高圧」という条件でないから知られていないだけなのだ!
▲「酸素はまさに超伝導を示さなさそうなヤンキーなのだ!」
ちょっと無理やりだが、わかったような気にはなれるな!
ちなみに、宇宙空間のほとんどは極低温の状態にあるのだ、だからこそ……
もっと極低温の視点持ってこ?
急に友達みたいになった。
でも、私たちの「当たり前」で物理現象を語ってはいけないってことですね。
君たちが常温・常圧から解き放たれてはじめて、超伝導の実力は知られるところとなるのだ!
以上だ!
参加者の感想
「常温・常圧」がいかに人間の視点から生まれた言葉か理解できましたね。
この宇宙のあちこちで、今でも超伝導が起こっているかもしれないということか……。
「実力が知られていないことすら知られていないもの」を見つけるとは、なかなかやりおるな。
トップバッターにふさわしい、専門性を活かした発表でした!
超伝導はありふれた現象だと主張した須貝。学問としても中身のある内容で、メンバーからは高評価の嵐だった。
私が2番手ですか。私が愛してやまない、それでいてちっとも優遇されていない「もの」をプレゼンします!
2人目:あさぬま
次の発表者は言語学専攻のあさぬま。彼女は「ある文字」に並々ならぬ思いをもっているようだが……?
私が紹介する「実力が知られていないもの」、それは……
▲どういうこと???
次ページ:次に「思い込み」をひっくり返すのは!? プレゼンターの熱意を目に焼きつけろ!