「しゅう曲」「はんれい岩」……中学時代、理科の授業で習ったのを覚えていますか。くねくねっとした地層の曲がりと、黒っぽい火成岩のことです。
では、漢字でどう書くか調べたことはありますか。
中学生の頃、かな混じりの熟語を見ればたちまち漢字を調べていたと語るのが山本祥彰、今回のインタビューの主役です。
「QuizKnockの漢字王」の称号をほしいままにする彼ですが、漢字王のイメージとは裏腹に、早稲田大学先進理工学部を卒業。大学生時代には物理を専攻していたとのことです。
今回のインタビューでは「物理専攻の漢字王」という二足のわらじを履く彼の経歴の秘密に迫ります。
※このインタビューは2021年3月にZoomで行いました
聞き手:永岡 優
2020年QuizKnock加入。山本と同じく中学時代に漢検準1級に合格している。2015年に参加した「高校生クイズ」で、スタッフを務めていた山本にお世話になった。
目次
◎山本祥彰 漢字との歩み
・漢字愛の根源 「そんな漢字読めるんだ!」って褒められたい
・「しゅう曲」の漢字は? 漢検にのぼせた中学時代
・「漢検1級甘くみていた」 高校でぶつかった1級の壁
◎大学時代 物理学生の山本
・物理を志してなお、漢字との縁
・物理と漢字の共通点 「世界の解像度を上げてくれる!」
・「漢字は遊び道具」 文系を選ばなかったワケ
山本祥彰 漢字との歩み
漢字愛の根源 「そんな漢字読めるんだ!」って褒められたい
山本さんといえばやはり、「QuizKnockの漢字王」というイメージをもつ視聴者・読者の方が多いかと思います。
ありがとうございます。中学の頃から漢字は勉強していていたので、QuizKnockのメンバーの中では一番得意かなと思います。
最近も漢字検定(日本漢字能力検定)1級を目指して勉強しています。まだ合格していないので、漢字の世界は深いなーと思いながら(笑)。
漢字の勉強を始めたきっかけは何でしたか?
最初はおそらくテレビ番組の漢字クイズだったと思います。その頃はクイズ番組で漢字がよく出題されるなぁと思いながら、テレビの前で答えるのが楽しくて。両親も「そんな漢字読めるんだ」って褒めてくれたりしたんです。
そんなある日、100円ショップに売ってる漢字の辞書を買ってもらって、おもしろくてずっと読んでました。それから僕の漢字人生が始まりました。
それはだいたい何歳くらいのお話ですか?
だいたい小学3年生くらいだったと思います。4年生のときには、担任の先生に提出する日記の中で「この漢字、何と読むでしょう?」と出題していた記憶があるので。
なるほど。クイズを出題する楽しさみたいなものに当時から目覚めていたのですね。
そうですね。勉強しているなかで、知らなかったけどおもしろいなと思った漢字を母親とかに出したりしてました。
周りの人とキャッチボールをしながら漢字の勉強を楽しんでいたという感じでしょうか?
他人とのコミュニケーションを通じて漢字愛が育まれていった節はありますね。和同開珎パズル※とかもよく作ってました。
※和同開珎パズル:上下左右に配置された漢字全てと熟語を作る漢字を当てはめるパズル
やりました、やりました。私も「『あ』から始まる漢字の読み」を10個集めてクイズを作ったりしていたので親近感が湧きました。
自由帳に木へんの難読漢字を書き並べて友達にクイズを出したりね。いきなり出されても解けるわけないのに(笑)。
「しゅう曲」の漢字は? 漢検にのぼせた中学時代
漢検に挑戦されたのはいつ頃でしょう?
まず小学5年生くらいのときに3級を受けて合格しました。ただその後、準2級や2級の問題集を眺めて結構余裕そうだと思ったので、中学1年生のときに準1級を目標にしました。準1級は当時全然知らない漢字ばっかりだったのですが、純粋に新しいことを知るのが楽しいと思ったのが大きいですね。
それからは家に帰ってすぐ猛勉強してました。そして中学2年生のときに晴れて準1級に合格しました。
段階を踏んで、ではなくいきなりのジャンプアップだったのですね。
小学校・中学校の頃に漢字の勉強をしていたからこその「クセ」ってありましたか?
教科書とかで、難しい漢字が使われている熟語が漢字かな混じりで書かれていることがあるじゃないですか。
ありますね。まだ習っていない漢字だったり、常用漢字外の漢字だったり。
そうそう。たとえば、理科で「褶曲」が「しゅう曲」になっていたりとか。いざ漢字を調べてみると、「褶」に【ひだ】という意味があることを知って、「これを昔の人は衣服に見立てたんだ!」という喜びがありました。
漢字を知ることでイメージがより湧きやすくなるという発見があったので、ひらがなで書かれている熟語はその都度、言葉と漢字のつながりみたいなものを調べるようになりましたね。それこそ漢字の意味だけじゃなくて「部首」とかも。
漢字を通して言葉どうしの意味のつながりを広げていったのですね。
ちなみに、漢字のテストとかで背伸びして習っていない漢字を書いたりなども……?
あります、あります。提出するプリントをわざと旧字体で書いたりもして、先生を困らせました(笑)。