こんにちは、藤原です。
食品用ラップフィルム、とても便利ですよね。食品の保存から温めるときの蓋、はたまた流行りのモイストヒーリングまでこなしてくれる便利な道具です。
しかしこのラップ、接着剤がついているわけでもないのにいろいろなものに吸着するというかなり不思議な性質を持ちます。高校化学、物理の知識まで踏み込んで、この現象を見ていきましょう!
はたらく力1:分子間力
ラップが吸着する原因の1つは分子間力で、特にファンデルワールス力と呼ばれるものです。ファンデルワールス力は極性のない分子どうしが引き合う力で、分子上に局所的に生じた電荷の偏りによって生じます。
この力は接触面積が広いほど強くはたらきます。ラップの表面はとても滑らかなので、吸着するのに十分なほどのファンデルワールス力がはたらくことになります。
食器にはガラスなど、ラップが吸着しやすいものと、木製のものなどラップが吸着しにくいものがあります。この違いも、ファンデルワールス力の仕組みによって説明できますね。図にするとこんな感じです。
はたらく力2:減圧吸着
理由の2つ目は、ラップの柔軟性によって生まれる減圧吸着です。減圧吸着とは、圧力の差によって物をくっつけることです。吸盤がものにくっつく原因もこの原理です。
貼り付ける対象との間に空気が入らないようラップを伸ばして貼り付けると、ラップが元の大きさに戻った時、対象物との隙間には周囲よりも含まれる空気の粒が少なくなります。
圧力を空気の粒が押す力と捉えると、粒の多い領域から少ない領域に向けて力がはたらくので、図のようになり、ラップが吸着します。
もしラップが伸びない硬い素材であったとすると、先ほどの分子間力のはたらきでしか吸着できませんが、ラップが伸びる素材からなることによって、化学のみならず物理の作用を利用することができているのです!
まとめ
減圧吸着のはたらきは直感的でわかりやすいですが、ファンデルワールス力のようにミクロな力が主要なはたらきとして使われているのは意外に感じられるのはないでしょうか。
ラップを触ると、皮膚の分子とラップの分子が引き合っているのがもう目に見えそうです!
参考文献
大須賀弘 (2004)『新・食品包装用フィルムーフレキシブル包装・理論と応用』日報出版