QuizKnock

アプリで記事をもっと見やすく

インストールする

カテゴリ

ログイン
PR
ランドマーク税理士法人

長期熟成ワインの味とは

古いほどおいしいの?

熟成ワインが古いほど値段が高い理由はわかりましたが、古いほどおいしいものなのですか?

おいしいか、おいしくないかは人それぞれだと思うんです。納豆が好きな人とそうでない人に分かれるように、古いワインは好みが真っ二つに分かれるように思いますね。

高いからおいしい、という単純な話ではないんですね。

ただ、ワインは熟成すると明らかに味が変わります。酸味がまろやかになるんです。できたてのワインの一番の特徴は酸味です。長期熟成すると、酸味が落ち着いてまるくなります。

まるく……ですか?

酸味、甘み、苦み、渋み、アルコール、が溶け合ってまるくなる。新酒はぎゅっと刺激するような酸味があるけれど、熟成するとまろやかになる。やさしくなる、エレガント、上品になるなどがよく言われる表現ですね。

エレガント! ワインでよく聞く表現ですね!

私がよくお客さんに説明するときには、よく人間にたとえるんです。若者はトゲトゲしいけどフレッシュでさわやかだと。一方で年を重ねた方は、勢いはないけど、深い説得力を持っている

なるほど! 熟成ワインの味のイメージが少しつかめた気がします!

まるき葡萄酒提供

100年熟成させたワインっておいしい?

10年ほどのワインでもかなり古いワインとのことでしたが、テレビ番組の「格付けチェック」ではもっと古いワインが登場しますよね。過去には、収穫から100年近く経過したワインもありました。これほど古いワインとなると、味わいはどのようなものになると思いますか?

100年熟成させたワインを飲んだことないので、勝手な想像になりますが、たぶんおいしくないと思います

えっ!

たぶんですよ! でもワインは熟成させすぎると、苦くて、えぐくて、雑味が出てくるんですよ。酸っぱさも、果実のようではなく、お酢のようになるんです。おいしさにはそれぞれの価値観もありますけど、100年というとちょっと難しいのではないかな

そうだったんですね……。鈴木社長が考える熟成期間の長さの上限はどのくらいですか?

上限は産地で全然違います。日本ワインは50年でも限界を超えていると思いますね。フランスの1級シャトーは、飲んだことはないですけど、50年でも耐えられるのではないかという気はします。100年は……、期間自体に価値を打ち出してるんでしょう。100年も食品をもたせるってすごいことですから。

まさか、テレビで観る高級ワインがおいしくないかもしれないなんて……! ちなみに、日本最古のワイナリーであるまるき葡萄酒でも古いワインを買い求めるお客さんも多いのではないですか?

弊社は古いワインを持っているというのを売りにしているところもあるので、結構問い合わせはあります。最も古いものでは1959年のものから持っていますが、1964年より前のものは味がよくないので販売はしないです。残念感しか与えないので。

熟成しすぎたワインは廃棄するしかない?

売れないほど古くなったワインは捨てるしかないのでしょうか?

それが廃棄できないんですよ。酒蔵は国税庁の管轄で、酒税になり得るものを簡単に廃棄できないんです。腐敗していたら廃棄できますが、まずいまずくないは人の主観によるものですから。

ずっと保管するのですか?

ずっと保管するしかないです。

長期熟成ワインが高額なことにも納得です。

まるき葡萄酒提供

ワイナリーのワインの保管数は?

ワイナリーにはそれぞれの年に生産されたワインがどれくらい保管されているものなのでしょうか。

ワイナリーの経営方針によってそれぞれですが、弊社では2万5千本ほど、単純計算で1年につき500本くらいを保管しています。これほどの数があるのは日本でも数社しかないと思います。

かなりの数ですね!

ただ、近年の日本では未来に向けてワインをとっておく余裕があまりなく、昔ほど古酒を作れていません。農家さんの高齢化によるぶどう不足で、今すぐ売るワインを作るのがやっとなんです。そのかわり、近年はワイナリーが自社でしっかり管理してぶどうをつくるという動きもできてきています。

▲ワインの原料であるぶどう(まるき葡萄酒提供)

特定のヴィンテージのワインは、いつかなくなる?

ある特定の年に生産された長期熟成のヴィンテージワインは、いずれ枯渇するものですか?

日本のワイン産業は小さいので、特定のヴィンテージのワインがなくなることはありえると思います。世界に目を向けた場合は、古酒もかなりの数がまだあるのではないかと。

なるほど。ちなみにまるき葡萄酒さんで最も古いものは何本くらい残っているのでしょうか?

あと数本なんです。50年も経つと、ボトル熟成であっても、王冠がさびてきて、コルクも朽ちてきます。するとたちまち酸化・劣化してしまうので、残る本数は本当に少ないです。

ずっと気になっていたのですが、世の中に残っているワインの本数ってワイナリーは把握しているのでしょうか?

自社に関しては、何年が残り何本というのは把握しています。ただ、個人が持っているものが世の中にどれくらい残っているのかはわからないですね。気づいたらなくなっていたということは十分にありえます。

そうなんですね! 早めにヴィンテージワインに手を出せるようにならなくては……!

社長オススメのワイン

最後に、せっかくなので、鈴木社長おすすめのワインをおうかがいしてもよろしいでしょうか? 私にも手が届く価格帯のものだと、すごく嬉しいです。

自社のワインになってしまいますが、一番おいしいと思うのは「いろ甲州」です。酸っぱすぎず甘すぎず、日本人によく合うワインだと思います。あとは、ボジョレーの中でも少しランクが高い、ボージョレ・ヴィラージュやクリュ・ボジョレーも日本人に合うと思います!

▲こちらが「いろ甲州」(まるき葡萄酒提供)

ありがとうございます! ぜひ手にとってみようと思います!


いやぁ、ワイン好きな私にとって楽しすぎる取材でした。その道の「プロ」にお話をうかがうと、調べてもわからない事実をたくさん学ぶことができます。まさか100年熟成ワインがおいしくないかもしれないなんて! 今回は鈴木社長との話に花が咲き、ワインのことがもっと好きになりました。

そして、買ってみましたよ! いろ甲州!

▲自宅に届いたいろ甲州

魚料理のお供に打ってつけな、とてもおいしいワインでした。取材してみたことで出会えたワインに乾杯!

【このライターの他の記事もどうぞ】

2
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

関連記事

この記事を書いた人

シムラ

東北地方の大学院生でした。2022年3月をもって卒業しました。ありがとうございました。

シムラの記事一覧へ