どうも、シムラです。お酒が好きで、中でもワインを好んでいます。
みなさんはテレビ番組の「芸能人格付けチェック」(朝日放送テレビ)を観たことはありますか? 私は放送の度に観ているのですが、番組の中で毎回抱く疑問があります。それは、
というもの。テレビ番組で高級ワインが紹介されるとき、「1本100万円はくだらない」などというナレーションをみなさんも聞いたことがあると思います。
特定の年に収穫されたワインを後々再生産することは不可能なはずですから、ある年に生産された人気のワインに希少価値がつくのは当然です。当然ですが、とはいえ100万は高すぎるのではないですか。
いつかは飲んでみたい高級ワイン。いったいどんな味なのか。なぜそんなに高いのか。将来、何かの拍子で大金持ちになるようなことがあったとして、その頃には希少なワインが枯渇しているなんてことはないのだろうか。
疑問が次々と湧いてきましたが、調査のために高級ワインを購入できるほどの大金はあいにく持ち合わせていません。でも、すぐに答えを知りたい。ならば、取材だ! ということで、歴史あるワイナリー「まるき葡萄酒」さんにお話をうかがってみることにしました!
《登場人物》
ワイン好き。学生ゆえ安めのワインばかり飲んでいる。
山梨県にある、現存する日本最古の老舗ワイナリー「まるき葡萄酒」の社長。
目次
◎ そもそもヴィンテージワインとは?
◎ ヴィンテージワインはなぜ高い?
◎ 「100年超え」のワインはおいしいのか?
◎ いつかなくなる? ヴィンテージワイン事情
そもそも「ヴィンテージワイン」とは
古いワイン、すなわちヴィンテージワイン?
さっそくですが、高級ワインというと、すなわちヴィンテージワインというイメージがあります。そもそも「ヴィンテージワイン」とはどのようなものなのでしょうか?
まず、「ヴィンテージ」と「ヴィンテージワイン」は、ちょっとニュアンスが違うんです。ワイン業界で「ヴィンテージ」といえば、単なる生産年のことを指すんですね。
ということは、「ヴィンテージワイン」は必ずしも古いワインというわけではないんですね。
そうなんです。ただ、熟成の進んだ古酒のことを「ヴィンテージワイン」ということもあります。また、特にすごくよかったとされる当たり年のワインのことも「ヴィンテージワイン」と呼ぶこともありますね。
一言で「ヴィンテージワイン」と言っても、さまざまな意味があるんですね。
長期熟成ってどれくらい?
古酒の意味で「ヴィンテージワイン」と呼ばれるのは、どれくらい古いワインからになるのでしょうか?
古酒、つまり「だいぶ古いヴィンテージ」のワインについては、定義はないんです。その年に収穫されたワインは「新酒」といいますが、2〜3年目のワインを「古酒」と呼ぶことはないですね。最低でも5年は経たないと、いわゆる熟成ワインとは言いづらいのではないでしょうか。
定義がないとは知りませんでした!
明確な定義はないので、各社が自由に「ヴィンテージワイン」という呼び名を使っていると思います。弊社の場合だと10年以上熟成させて、かなり古い部類になったものを「ヴィンテージワイン」と呼んでいます。
10年でもう古い部類なんですか?
フランスの有名なシャトー(ワインの醸造所)のワインであれば、平均的にみれば10年でも古くないかもしれないです。ただ、世の中にあるテーブルワインやちょっとハイクラスなワインであれば、10年であれば飲み頃か、それを過ぎているかなと思います。
思ったよりも飲み頃が早い! もっと長い月日をかけて熟成させているイメージでした!
▲まるき葡萄酒の古酒シリーズ(まるき葡萄酒提供)
ヴィンテージワインと値段の関係
ヴィンテージワインはなぜ高いのか?
長期熟成のヴィンテージワインには高い値段がつけられていることが多いですよね。どうしてなのでしょうか?
基本的には、長期熟成するための保管コストですね。ワインは繊細な飲み物なので、よい環境で熟成させないと、味が落ちてしまいます。なので長い時間熟成させるためには、それだけのコストがかかります。
なるほど。ワインの熟成はどのように行うものなのですか?
熟成には、樽で熟成させるパターン、製造用のタンクのような容器で熟成させるパターン、ボトルに詰めて熟成させるパターンの3つがあります。
▲樽での熟成(まるき葡萄酒提供)
それぞれはどのように使い分けるのでしょうか?
樽で熟成させる場合は、必ず短期間です。完全密閉ではないため、樽で長期間熟成すると、蒸発してワインが少なくなりますし、雑菌の繁殖や酸化が進みすぎてしまうことがあります。またタンクは、製造用の道具ですので何年も占領させるわけにはいかないです。
▲タンク貯蔵庫(まるき葡萄酒提供)
長期間熟成させる場合はボトルで行います。弊社の場合、ワインを一升瓶に入れて熟成させます。コルクを打って、さらに王冠も打つので完全密閉になり、ほぼ空気はシャットアウトされます。そのため、ボトルでの熟成は、20〜30年を超えて熟成させることができます。
何十年もどのように保管しているのでしょうか?
弊社の場合は、甲州にある勝沼の山の斜面に地下セラーがあります。天然の空調が効いた非常に涼しい空間で、セラーの中に伏流水が湧き水として流れています。日が当たらず、年間15〜20℃に保たれ、湿気があって、変な香りがありません。そのような保管環境がおいしい長期熟成の絶対条件です。
▲地下貯蔵庫での熟成(まるき葡萄酒提供)
山梨の環境がワイン造りに最適だったんですね!
そうなんです。家庭の戸棚などで保管している方もいらっしゃると思いますが、室温の上下が大きく、ワインが急激に熟成されてしまいます。
それだけワイナリーでは丁寧に保管されているんですね。長期熟成のワインは、どれくらいの幅で値段が上がるのでしょうか。
弊社の場合は毎年1月1日に定価を1000円ずつあげています。今販売しているもので、最も古いのは1964年のもので9万円です。
「ヴィンテージワイン」と聞くと何百万円もするイメージがありましたが、思ったよりも安いんですね!
▲1964年の古葡萄酒(まるき葡萄酒提供)
熟成ワインが「高額な理由」は他にもある
長期熟成ワインは、最初から長期熟成用のワインとして製造されているのでしょうか? それとも通常のワインが数十年保管された結果として長期熟成ワインができるのでしょうか?
これは、両方ありえると思います。本当にたまたま作って、たまたま10年経過したらおいしかったという成功例もあれば、10年後や20年後を見据えてつくるケースもあります。これらの両方に共通していることは、長期熟成に耐えうるワインは、もともとの品質がよくないといけないということです。品質が高いからこそ、コストが高くなるということはあります。
そんな理由もあったんですね。
あとは、誰かがおいしいと評価したことで値段が高くなるということもありますよね。
たしかに、そういうこともありそうです。
あとはワインって感じ方が人によって違うので、メーカーの打ち出し方ですね。市場が価格をつけるというより、売る側が値をつけてそれに乗っかるかどうかというところはありますね。
売り手主体の価格設定でもあるんですね!