こんにちは、木村です。普段はライターとして記事を書いているほか、クイズの制作にも関わっています。
私は高校生のとき友人に誘われてクイズに興味を持ち、大学でTQC(東京大学クイズ研究会)に入ったことで本格的に競技クイズを始めました。4年間クイズに向き合う中、常に意識し目指していたのはabcという大会の舞台です。
abcは、大学4年生以下を対象として年に一度開かれる、日本最大級の競技クイズ大会です。この大舞台で活躍することを目標に掲げるクイズプレイヤーも少なくなく、私もそのうちの一人でした。憧れの舞台に挑み続けること4年、壇上に手が届いたのは最後のチャンスとなる大学4年の一度きりでした。それまでに味わった色々な感情と一緒に、自分なりにクイズを「苦しみながら楽しんだ」4年間を振り返ってみたいと思います。
忘れられない「49位」
遠くても壇上に立ちたい
abcでは初めにペーパークイズで予選を行い、成績上位者のみが早押しクイズのラウンドに進みます。何百人、年によっては1000人近い参加者の中から、ボタンに触れることを許されるのはたったの48人です。
大学1年生で初めてabcに参加したときは、正直「すごいクイズ大会を観に行く」という気持ちでいました。当然、成績はペーパークイズ通過にはほど遠く、「悔しい」と思えるレベルにも達していませんでした。当時からペーパークイズへの苦手意識があった私にとって、この狭き門を通過することは夢のまた夢に思えました。

しかし、翌年2年生で参加した大会では私と同じように大学からクイズを始めた同期や、他の大学の2年生のうちの何人かが、ペーパークイズを突破したのです。いざ彼らを壇上に見送るとなったとき、自分でも驚くほどに悔しかったことを覚えています。その悔しさのまま、帰り道で予選突破を果たした同期に「来年は壇上で勝負するから」と宣言しました。
「3度目の正直」を目指して
2度目のabcを終えて完全に火がついた私は、自分なりに全力でクイズと向き合います。大の苦手だったペーパークイズも、壇上で大好きな早押しクイズをしたい一心で勉強を重ねました。その甲斐あって、abcと同じ傾向のクイズ大会に出場した際も安定して予選を突破できるようになり、早押しでも上位に食い込めるようになりました。
そして迎えた、3度目のabc。まずまずの手応えでペーパークイズを解き終えます。予選通過しそうな人を数えただけで48人を優に超えてしまい不安になりながらも、直前期に4年生の先輩から「お前が今年ペーパーで落ちることはないよ」と背中を押してもらったことを何度も思い出し、今年こそはabcで早押しをするんだと意気込んでいました。通過者の名前が発表されるのを見守りながら、自分の名前が呼ばれる瞬間を今か今かと待っていました。

abcは「憧れの舞台」のまま
しかし、48人の通過枠に私は入っていませんでした。最後まで名前を呼ばれなかったことに気持ちの整理がつかないまま時間が経ち、ぎりぎりで通過を逃した「49位」の参加者が発表されました。
私の名前は、そこにあったのです。

「悔しい」以上に、「情けない」という気持ちが溢れました。
あと1問正解できれば、正解できる努力をしていれば報われたかもしれないのに、この1年間は何だったのか。
大会後には、最後のabcを終えた先輩たちが声をかけてくれました。3回目のabcでは、「お世話になった先輩方と最後にabcの舞台で戦う」ことも私の大きな目標だったのです。結果、自分だけが早押しの舞台にたどり着けず、その目標も二度と叶わなくなってしまったと思うと、せっかくの励ましにもうまく応えることができませんでした。
諦めきれなかった早押しの舞台
大きな大きな挫折を引きずったまま、最後の年度が始まりました。少し前まで毎日かじりついていたクイズの問題集や暗記アプリのデッキは、報われることのなかった対策期間を思い出させ、見るのも嫌な存在になっていました。
それでも、このまま貴重な学生クイズの時間を終わらせてたまるかと思い直し、私はしばらくしてクイズの勉強を再開しました。
ラストイヤーで目指していたのはもちろん、abcの壇上に立つこと。というより、最終的な目標は優勝でした。「初通過のプレイヤーがabcで大活躍したらカッコよくないか?」と、内心ワクワクする気持ちまでありました。
最後のabcが1ヶ月先に迫った頃、「abcペーパー1位、優勝」という大それた目標を手帳に記しました。それくらいの気持ちで臨まないと、また後悔することになると思ったからです。この目標を実現するためにやるべきこともいくつかメモし、手帳を見返しながら1日10時間くらいクイズに向き合う日々を過ごしました。
最後のabc
ラストチャンスとなったabc the23rdには、これまでの参加人数を遥かに上回るおよそ1200人のプレイヤーが挑みました。ただ、今までになく対策を重ねたおかげで、人数の多さに怯む自分はいませんでした。
そして、いよいよペーパークイズが始まります。

ペーパークイズを解き進めていくうち、「まずい」と思いました。どう見ても、私が苦手としている難しめの範囲を突いたペーパーだったのです。
ただ、その中には、私が本番ぎりぎりまで対策し覚えた問題もいくつかありました。去年の嫌な光景がよみがえりながらも解答欄を埋め、「これで落ちたらしょうがない」と言い聞かせながらタイムアップを迎えました。
4度目の正直
いよいよ、通過者が発表される時間がやってきました。1組目、2組目では名前が呼ばれず、クイズが進んでいくあいだ、時間の流れがとてつもなく遅く感じました。
そして、3組目の35位で、自分の名前が呼ばれました。

4年間憧れ続けたabcの壇上に、ようやく手が届いた瞬間でした。近くに座っていた後輩たちに送り出され、小走りで招集場所に向かいました。
最初で最後の壇上
やっと、abcで大好きな早押しができます。優勝するまでにはいくつものステージを突破する必要があり、むしろ本番はここからでした。
「自分を信じられれば強い」
5問正解で勝ち抜けとなる早押しラウンドが始まりました。周囲は倍率25倍をくぐり抜けた強敵ばかり。私も2問を正解して食らいつきますが、上位のプレイヤーたちとのポイントの差はなかなか縮まりません。

この状況に焦りながら、私はある言葉を頭の中で繰り返していました。
「自分を信じられれば強い」
以前、「優勝」の目標を手帳に記したそのすぐ下に、自分を鼓舞しようと書き足した言葉でした。
ずっと対策してきたんだから信じて押せばいい。押さずに負けて後悔する、それだけはやめよう。そう言い聞かせて、次の問題に集中します。
問題。
「時間外労働や休/……」
ボタンをつけた瞬間、「らしくないな」と思いました。
読まれた部分から判断するに、この問題のジャンルは私が苦手としている公民。聞き覚えのある問題ではありましたが、普段なら誤答を恐れてボタンを押さずにいたのではと思います。実際、私の得手不得手をよく知る同期も「お前が押すんかい」と思ったとのこと。
それでも、答えることは決まっていました。4年間クイズをしてきて、abc直前にもたくさん対策をして、この場で答えるならこれしかない。

「
正解音が鳴り、勝ち抜けに一歩近づくことができました。拍手と一緒に、客席から心強い声援をもらったことを覚えています。
結局は悔しかったラストイヤー
「自分を信じた正解」こそできたものの、これが私のabc最後の正解でした。このあとは思うように点数を重ねられず、勝ち抜けを果たすことはできなかったのです。

最後の1枠をもぎ取った選手の背中を見送って、見納めとなった壇上からの景色に一礼して階段を下りました。そこに、いま同じ組で戦ったばかりの同期が待っていました。2年生のときに早くもペーパークイズ突破を果たし、今回ようやく同じステージでぶつかることができた同期は、「苦手なペーパーだっただろうけどよく抜けた」と声をかけてくれました。
このとき、今自分が憧れの舞台に立っていたこと、そしてその舞台が一瞬で終わってしまったことをようやく実感しました。「もっと早押ししたかった」「ここで終わるつもりじゃなかった」という言葉と共に、その場で涙がこぼれました。
4年間目指し続けた壇上に立てたことは本当に嬉しかったのです。それでも、自信のあった早押しで十分に戦えず、その後の自分がいないラウンドを見守るのはやはり苦しいものでした。
「abcペーパー1位、優勝」の目標を記した手帳に「35位、2R敗退」と書き足し、私の学生クイズキャリアが終わりました。
競技クイズをやってよかった
今では、最後のabc当日のことをもう少しだけポジティブに捉えています。
少なくとも、最後のabcに向けて対策を重ねてきた時間に後悔はありません。あの期間の対策を少しでもサボっていたら、今年のペーパークイズを私が突破することはなかったはずです。
そして、壇上で残した最後の正解は、対策してきた自分を信じきってこそできたものでした。誰かの印象に残るようなカッコいい正解ではありませんでしたが、私にとって紛れもなく「思い出のクイズ」の1つです。
何より、大学に入ってからこれほど何かに夢中になって、泣いたり喜んだりするとは思っていませんでした。
この4年間を濃いものにしてくれた競技クイズ、サークルの仲間、そしてabcのような大会の存在に感謝の気持ちでいっぱいです。
これからもクイズが好き
ただし、abcの結果が悔しかったのは事実。クイズに関してはなかなか負けず嫌いなもので、早押しの借りはどこかで返してやろうと思っています。それまで、大好きな競技クイズにもうしばらく向き合ってみます。
クイズプレイヤーとして、ときにはクイズを届ける側として、いつかみなさんとも大会の会場でお会いできたら嬉しく思います。
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