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【提供】サントリー

通学や通勤で見上げた空、窓の外から聞こえるさえずり……意識をすれば生活の近くにいる「鳥」。当たり前の存在すぎて、普段から鳥を気に留めている人は少ないのではないでしょうか。

そんな「もしも」の世界を専門家に聞いてみたら、「人類に関係なくない」大きな問題が見えてきました

藤井たかしさん
鳥の調査保護などを行う日本鳥類保護連盟の調査研究室室長。これまで絶滅危惧種である渡り鳥「コアジサシ」の中継地の調査などを行ってきた。好きな鳥はキツツキの仲間のアオゲラ。植物の名前を覚えるのは苦手。
山田たけしさん
サントリーのサステナビリティ推進部チーフスペシャリスト。サントリーが手掛ける「天然水の森」や愛鳥活動の普及に取り組んできた。好きな鳥はタカ。おいしいお酒を藤井さんによく紹介しているらしい。

聞き手:野口みな子
撮影:チャンイケ

▲サントリーさんのオフィスで鳥や自然を愛する2人に聞きました

もしも世界から「鳥」がいなくなったら?

――さっそくですが、もしも突然「鳥」が世界から消えてしまったら何が起こると思いますか?

難しい質問ですね。今までの調査から想像できることもありますが、まだ見えていない何かが起こる可能性もあるんじゃないかなと思います。

でも、少なくとも私たちはこれまでのように生きていけなくなっちゃうんじゃないですかね。

――鳥がいなくなることで、人間が生きていけなくなる。どういうことでしょうか?

自然はさまざまな動物や植物が複雑に関係し合って成り立っています。鳥がいることでバランスが取れていたものが、一気に崩れ始めるはずなんです

たとえば、鳥がいなくなると、鳥が餌としていた昆虫類が異常発生するでしょう。大量に増えた昆虫に植物が食べ尽くされて、森林が荒れていきます。

すると、昆虫たちの生きる環境も失われていくという悪循環につながっていきます。

――鳥がいなくなるだけで、ドミノ倒しのように影響が広がっていくのですね。

鳥は昆虫の数をコントロールするだけでなく、もともと森そのものを育てる役割を持っています。

――鳥が森を育てる?

木々が種をまく方法は、風に乗せて遠くに飛ばしたり、川の水に流したり、動物の体にくっつけて運んでもらったり、色々な方法があるのですが、実は「鳥に運んでもらう」という方法が結構大きな割合を占めているんですよ。

たとえば、どんぐりの木が種子を落とすだけであれば、重力に従って木はより低い位置にしか増えていかないですよね。

――確かに! でも、実際はそうはなっていないですよね。

それは、木の実を餌とする鳥がいろんなところに種子を運んでいるからなんですよ。鳥が実を丸ごと飲み込んで糞をしたり、蓄えのために木の実を埋めたりすることで、種まきをしてくれるんです。

木も鳥のこうした生態を前提に進化しています。たとえばコナラやミズナラは何年かに1度実がたくさんできる年を作って、鳥の食べ残しが生まれるようにしてるんです。

▲カケス(左)画像出典:サントリー「日本の鳥百科

だから、鳥がいなくなってしまえば、木が寿命を迎えるまではよくても、その木が倒れたり枯れたりした時点で広がらなくなってしまうんですよね。

――今当たり前に森や山に木が広がっているのは、鳥がいるおかげなんですね。

種の散布だけではなく、ほかにも植物は鳥と密接に関わっているんですよ。

たとえば、椿が赤い花びらを咲かせるのは、メジロに見つけてもらいやすいように進化したと考えられています。

▲メジロは椿の蜜が大好物で、受粉を媒介してもらうために椿はメジロに好まれる赤い花をつけるという

これは、メジロが蜜をなめることで受粉を媒介してくれるからです。花の色だけではなく、花びらの大きさや丈夫さもメジロがとまりやすいように、また雄しべの形や大量の蜜を作ることもメジロが花粉を媒介しやすいように進化したといわれています。

でも、こんな風に鳥と共生関係にある植物は、鳥がいなくなったら途端に立ち行かなくなってしまいます

――なるほど……。鳥が消えることで植物や森に多大な影響を与えることはよくわかりました。その結果、人間にはどんな影響があるのでしょう?

森林が減っていくと、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を吸収するものがなくなってしまうので、地球温暖化はいっそう加速するでしょう。異常気象にもつながっていくのではないでしょうか。

そうしたらもう、私たちもこれまで通りには暮らしていけないですよね

▲鳥がいないことで地球温暖化が加速していく……

――人間の暮らしも脅かされてしまうと。

自然とは本当に絶妙なバランスで保たれているものなんです。だからこそ、いまの当たり前の風景があるんですよね。

これまで何千年、何万年とかけて成り立ってきた生態系が崩れてしまったときに、環境がそれに対して順応していくにはやはり時間がかかります。10年やそこらでは戻らないでしょう。たぶん、順応する前にダメになっちゃうと思うんですよ

――自然のバランスを保つ一員として、鳥はとても重要な役割を果たしていたんですね。

そうなんです。鳥は日本の水辺や森において生態系ピラミッドの頂点に位置しています。

ピラミッドの下層、つまり鳥たちの餌にあたる小動物や昆虫、植物がいなくなるだけで、すぐに数を減らしてしまいます。鳥たちの存在が、環境のバロメーターでもあるんです。

▲出典:サントリーの愛鳥活動

鳥ってね、翼があるじゃないですか。だから、住みづらいと感じたらすぐにいなくなっちゃうんですよ。

でも、環境がよくなると戻ってきてくれます。鳥を見ることで、環境の変化がわかるんです。

――ちなみに藤井さんも山田さんも、普段から鳥に触れ合っている愛鳥家でもあります。おふたりは、突然鳥がいなくなったらどう感じますか?

どうなっちゃうんでしょうね……。私はデスクワークでストレスがたまっているときも、森に入って鳥を見るとやはり気分がリラックスするんです。鳥がいなくなったら、おかしくなっちゃうと思います
私にとっても鳥は癒やしですからね。……お酒の量は増えるんじゃないかな

▲おふたりにとって鳥は生活の一部

鳥って街中や公園、どこにでもいるんですよね。普段あまり鳥を意識しない人でも、何らかの形で癒やしをもらっているはずなんです。

それがなくなったときに、気づかないかもしれないけど、知らず知らずのうちに心がすさんでしまうかもしれませんよね。

その「もしも」は近づいてきている

次ページ:北米では「30億羽」が消えた!? 私たちにも身近な「あの鳥」が、実は密かに数を減らしている……。

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