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レッツゴー戸隠

▲というわけで、戸隠に行ってきました!
黒い忍びは私(あさぬま撮影)
▲赤い忍びは、同行したライターのあさぬまさん(筆者撮影)

忍者は、日本の伝統のひとつとして、国内外問わず様々なモチーフにされてきた。私の好きな「スーパー戦隊」シリーズでも、全45作品中3作品でモチーフになっている。恐竜と同じくらいリピートされている。それだけ、人々の興味を惹く存在として認識されているということだ。

フィクションでの忍者は、黒装束に身を包み、手裏剣を投げたり、水の上を走ったりする姿を見ることが多い印象だが、実際はかなり異なる存在だった。戸隠忍法資料館の館長に聴いた話を踏まえて、その実態を紹介しよう。

どんな人が忍者になっていた?

▲戸隠忍法資料館の館内(筆者撮影)

忍者のほとんどはスカウトされて、その職を手に入れる。スカウトされるのは、何があっても自分の身を守れるような、運動能力の高い存在。かつては、山へ籠もって厳しい修行をする山岳修験が盛んで、山伏がスカウトされることが多かったそうだ。忍者になるための学校があるのではなく、鍛えた者に忍者の職を与える、というわけだ。

戸隠に伝わる「戸隠とがくれ流」を開いた、仁科大助も山伏だった。仁科大助は、木曽義仲(※)に仕えていた人物で、800年以上前、戸隠山で山岳修験をし、その後伊賀で学んだ伊賀流忍法を、戸隠修験で得たものと織り交ぜ、戸隠流忍法を開いたといわれている。

※木曽義仲:信濃の武将。倶利伽羅峠の戦いで、平家を破った。源義仲とも。

▲九字の印の図解(筆者撮影)

九字の印の展示があり、山伏が関わっていることを実感した。小説の中で、深行が九字を切る様子を何度も見た。護身法として唱えていることが多く、私もいざというときに備えて覚えようと試みたことがある。私は山岳修験をしていないので、覚えたところでたぶん身は護れない。

忍者の仕事に関して、もっとも印象的だったのは、大名に雇われる副業のようなシステムであること。大名は、他の大名の情報を仕入れるなどして、自分に有利な方向に事が運ぶことを目的に、忍者を雇っていた。忍者になる人の本職は、農民や商人などが多かったらしい。

また、忍者であることは、家族にも知られてはいけないので、「ちょっと旅に出てくる」と言って家を離れる人が多かったとのこと。情報解禁前の役者みたいだ。

ひとえに忍者といっても、その仕事は様々。情報を集めるために動く者もいれば、嘘の情報を流して敵を惑わす者など、雇い主に有利な方向に働くようなものであれば、手段はひとつではない。

忍者が戦うのは、逃げるときのみ

そして忍者が戦闘を目的に動くことは、基本的にない。忍者が戦うのは、任務遂行中に敵に囲まれてしまったときや、自分が忍者だと誰かにバレてしまった際などの非常時のみ。忍者の使命はあくまで、雇い主である大名の依頼を遂行し、雇い主のもとに必ず帰ることなのだ。

フィクションでは無尽蔵に投げているように見える手裏剣も、実際は重たいのでそんなに多くは持ち歩かなかったそう。敵に阻まれたときに、相手の動きを封じ、逃げるために使用することがほとんどだったらしい。

▲農民が忍者となることが多かったため、農具が武器に使われることも多かった。(筆者撮影)

戸隠忍法資料館では、伝承をもとに、戸隠流の宗家が作成したレプリカを展示しており、たくさんの武器や道具を見ることができる。戸隠にまつわる忍者のはたらきを知ることができた。

今もなお残る「身を守る」ための技

現在の戸隠流の宗家は、第34代の初見良昭氏。初見氏は、千葉県野田市に道場を構え、戸隠流忍法を教えている。初見氏の教えを請おうと、世界中からたくさんの人が集まるそうだ。

とはいっても、教えるのは、手裏剣の使い方でも、吹き矢の吹き方でもない。忍者に最も大切な、必ず生きて帰ること――すなわち、自分の身を守ること。戸隠流忍法を軸にした、古武術や体術のような、現代の人が役立てられるようなものだそう。

ちなみに、第35代は筒井巧氏が継承することが明らかになっている。この筒井巧氏は、1988~1989年放送の「メタルヒーロー」シリーズ第7作『世界忍者戦ジライヤ』で、戸隠流宗家の養子・山地闘破(ジライヤ)を演じた役者だ。このとき、戸隠流宗家を演じ、忍術のアクション指導なども担当したのが、第34代の初見氏。この縁で初見氏に弟子入りし、2019年に後継者に指名された。すごい話だ。

▲伝承をもとに技を習得していく現代の忍者。再現された写真も多数展示されていた。(筆者撮影)

ところで、なぜ忍者という仕事は消えていったのか、という質問を館長さんに投げてみた。

「『明るい世の中に忍者はいない』とよく言うんですよ」

忍者の仕事は、おもに諜報活動。敵の情報を手に入れ、自分に有利な方へと導く仕事。明るい世の中になるうちに、腹の探り合いも必要なくなり、だんだんと忍者の仕事はなくなっていったそうだ。

明るい世の中で、忍者の技は、いついかなるときでも自分の身を守るという大切な役目だけを残し、現代へと受け継がれているのだった。

からくり屋敷に挑戦!無事に出られるかな?

▲からくり屋敷(筆者撮影)

今回は、戸隠忍法資料館に併設された、忍者からくり屋敷にも挑戦した。

館長によると「大人でだいたい30分くらいかかる」とのこと。これは30分を切りたいところだ。そう思いながら挑戦するも――

▲ネタバレ防止のため、館内は撮影禁止。

しっかり30分かかった。無念。とても楽しかったし、結果出られたので大成功!

このからくり屋敷の仕掛けは、年に1回、変えているそう。何度来ても、楽しめるぞ!

日本三大そばのひとつ、戸隠そば

さて、戸隠と聞くと、「戸隠そば」を思い浮かべる人がいるのでは? 「RDG」第3巻で戸隠を訪れたなかでも、戸隠そばを食べる様子が描かれていた。

岩手のわんこそば、島根の出雲そばと並んで、日本三大そばに数えられる、戸隠そば。その最大の特徴は、「ぼっち盛り」という盛り方。一口程度の束を5〜6つ並べて、盛り付ける。また、茹でたてのおいしいそばを食べてもらおうということから、水を切らずにざるに盛るのも特徴だ。

▲ぼっち盛りが特徴。

せっかくならそばを食べる前に、戸隠そばの知識を入れておきたい。というわけで、戸隠そば博物館とんくるりんの館長に、戸隠の地ととそばの関わりを聞いた。

いただきまーす!

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この記事を書いた人

山森 彩加

東京理科大学卒業生の山森です。在学時は天文研究部でプラネタリウム解説をしていました。三鷹の国立天文台で展示解説をしたり、科学館で解説をしたりもしました。日常のなかに“楽しい”や“おもしろい”を見つけられるような何かを発信していければと思います。学士(理学)。

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