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クイズプレイヤーは研究者と似ている

――田村さんといえば、大学時代に一度クイズの世界を離れていますよね。

田村 さっきも話したんですが、大学に入ってから人のために頑張る感じが嫌で、いったんクイズとは距離を置きましたね。

――しかし、QuizKnockと関わるようになってクイズの世界に戻ってきました。今はクイズとどういう風に向き合っていますか?

田村 クイズを始めてからは結構経ってますが、今はプレイヤーというよりは、広がっていくクイズの舞台でみんなが活躍していくのを横目に眺めつつ、クイズの魅力を「クイズをやっていない人にどう伝えるか」を考える立場ですね。

――クイズの「魅力」は、具体的にどのあたりにあると思いますか?

田村 クイズは「広く浅く知ること」に繋がる営みだと思います。それがダメというわけじゃなくて、広く浅く知っておくだけでも、自分の人生の裾野が広がる瞬間はたくさんあると思っていて。

田村 たとえば、大学に入ると授業がたくさんあるじゃないですか。広く浅く知っていると、「その分野でノーベル賞を受賞した人」とかは、少なくとも見たことはあるんですよ。「大江健三郎」に関する授業だったら、「日本人でノーベル文学賞をとってる人じゃん」「え、小説家ひとりで1学期分、13回も授業やるのやばくね?」みたいな感じで、もっと興味が出るんです。

――面白いものが自分のアンテナに引っかかる可能性がめちゃめちゃ広がりますよね。

田村 100個の中に1個か2個知ってるのがあると、そこから興味・関心を広げていくきっかけになる。僕の場合は、特に「早押しクイズ」が興味を広げるのに役立ったんです。

田村 早押しクイズってすっごく不思議な競技で、単に「問題に答える」だけなら文章を最後まで聞けばいいのに、わざわざ人の話を途中で遮ってまで答えようとするのが、よくよく考えると面白くて(笑)

――確かに。それだけに、問題文の先を正確に読む推理力が必要ですよね。

田村 強いプレイヤーは、最初の数文字を聞いただけで、問題文を全部予想できたりする。

▲文頭たった5文字で正解を確信する東問(問題文の一部だけ聞いて全員で正解せよ!【人気企画】より)

――レベルが高いクイズの場だと早めに押さないと解答権が得られなくて、少ない手がかりと短いシンキングタイムで、何とかそれらしい答えを捻り出すわけですよね。

田村 よくクイズ番組で「押してから考えるのはズルい」みたいな話があるんですが、競技クイズの世界ではそれが当たり前なんですよね。ボタンを押して3秒考えたらわかりそうだなという感覚を基準にしてボタンを押してる。「わかりそう」という予感をしっかり飼い慣らしているんですよ。

田村 そういう意味では、クイズプレーヤーと研究者って似ているなと。仮説を立てて、考えながら答えてみるという研究につながる営みがある。タイムスケールはぜんぜん違うけど構造的にはちょっと似ているし、そういう風に僕はクイズを楽しんでいて、同じような研究者の道を歩んでいるのかも。

――なるほど、「クイズプレイヤー・田村」があっての「研究者・田村」なんですね。

【クイズプレイヤーから哲学の研究者となる歩みを綴った記事はこちら】

田村が出会った「ひとつの奇跡」

――今後QuizKnockで、やってみたいことはありますか?

田村 そうね……。みんなが楽しい人生を過ごせるようなものをなにか生み出せたら

――どうしたんですか急に!? 今が楽しくないみたいじゃないですか!

田村 たとえば須貝が「ワンツーツーワン」って言うだけで「承久の乱」の年号を覚えて、授業に出てきた瞬間に「これ須貝さんが言ってたやつじゃん!」ってテンション上がったりする。勉強に「別の何か」をつなげて、勉強を「もっと楽しめる形」にしてお届けできたらいいんじゃないかな。

――これまでにどんなことをやってきましたか?

田村 こちら、小川さとしさんが書いた『君のクイズ』という小説です。実は、僕のクイズとか学問とか、人生の中でやってきたことが奇跡的につながってできた作品なんですよ。

『君のクイズ』:クイズをテーマにした小川哲さんの小説。今年(2023年)の日本推理作家協会賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされた。

田村 小川さんって、僕の大学院の先輩にあたる人なんです。徳久さんみたいなクイズが大好きで仕方がない人を主人公にした小説を執筆したいから、クイズと人生の関わり方とか、早押しクイズを極めてる人がどんなことを考えてるかについて、インタビューさせてほしいって話がきまして。

田村 僕は高校までクイズに熱中して、大学で哲学を専門的にやって。どちらも好きな人間としてクイズを哲学的な角度で考えられないかな、とずっと考えていたんです。そしたら『君のクイズ』の話が出てきて。これは僕にとってすごくいい「奇跡的な出来事」でしたね。

「本作を執筆するにあたって、友人であり、かつクイズプレイヤーでもある徳久倫康くんと田村正資くんの2人に助言していただきました。クイズという題材を扱う上で、2人がいなければ執筆できなかったというか、そもそも執筆しようとすら思わなかったはずです。」

田村 これは『君のクイズ』の「謝辞」の中にある文章なんですが、これがとても嬉しくてですね(笑)。ということで宣伝させていただきました。ぜひみなさんも『君のクイズ』を読む際は、「謝辞」から読んでみてください(笑)

――さすがに頭から読んだ方がいいと思います(笑)


今回は、田村と伊沢の関係性やクイズとの関わりについて、そして田村が考える「クイズの魅力」について迫りました。後編では、田村の思考の源流となっている「哲学」についてお送りします。

【後編はこちら】

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この記事を書いた人

チャンイケ

京都大学大学院修了のチャンイケ(池田和記)です。さまざまな学問・エンタメに関心があります。趣味:クイズ・ボウリング・ゲーム・謎解き・食べ歩きなどなど。

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