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「ナイスガイの須貝です!」の挨拶でおなじみ、「QuizKnockの理科のお兄さん」こと須貝駿貴。科学をわかりやすく解説する「QuizKnock Lab」企画や科学視点の検証記事などで活躍するほか、東京大学ではゴリゴリに超伝導現象を研究し博士号を取得しています。

そんな須貝さんに「物理」をテーマに聞くインタビュー。前編は「物理に出会ったのは生まれたとき」というパワーワードが飛び出す幼少期の話から、高校物理を理解するコツなどを聞いてきました。

今回は、なぜ須貝さんは大学で物理を専攻しようと思ったのか、そしてそのなかでもなぜ「物性物理」を選んだのか、について聞いていきます。

目次

なぜ物理を選んだ? 忘れられない授業があった
物理学徒あるある「まず宇宙に憧れる」
「物質は宇宙ですよ」物性物理を選んだ理由

なぜ物理? 「人の気持ちが見える数式」に出会った

――小中高と理科や物理が好きだったという須貝さんですが、大学で物理を専攻しようと思ったのはどうしてでしょうか?

須貝 えっと……「積極的に物理を選んだぞ!」みたいな気持ちは実はあんまりなくて、「当然物理」みたいな感じだったんですよ、僕の中では。

――当然物理!

須貝 もう、あるべき場所に導かれるように……(笑)。

▲「当然物理でしょうと!」

須貝 僕の高校では、理科系の科目(物理、化学、生物、地学)をⅠ※1までは4つともやったんですよ。

※1)旧教育課程で理科系の科目は「物理Ⅰ」「物理Ⅱ」など、ⅠとⅡに分けられていた。現在は「物理基礎」「物理」など「基礎」がつく科目とつかない科目の2系統になっているので、これを聞くと世代がわかる。

須貝 そのあと「そのなかからⅡもやるやつを2つ選べ」って言われるんですけど、物理と化学を選ぶのが当然な気持ちだったんですよね。「理系だったら物理と化学を選ぶ人が多い」っていうのは言われていて、それに違和感を持ってなかったっていうのはあるけど、「絶対物理だろ」と思っていたし。

別に他の2科目の点数が悪かったわけじゃなくて、地学も生物も5段階評価の「5」はもらえていたから。

▲どんな教科でもやはりデキる須貝氏

――すごい……。

須貝 ただ、僕は大学入るときはちょっと化学のほうが好きだったんで、なんなら「化学もいいな」と思ってたんですよ。

――えっ、物理ひとすじだと思っていたので意外ですね。

須貝 でも、大学1年生で物理の授業を受けたときに、その先生が素敵で授業が楽しかったから、改めて物理に戻っていったような感じですね。

――その物理の授業はどんなところが楽しかったんですか?

須貝 これはいわゆる「物理の授業」としてイメージされるものじゃなくて、物理の歴史の話とかもしてくれるような、ちょっと教養っぽい感じの講義があったんです。

――物理の歴史の話とは?

須貝 たとえば、ヨハネス・ケプラーという偉大な物理学者がいますよね。ケプラーは「惑星の軌道は楕円軌道だ」って導き出した人なんですけど、当時は惑星の軌道は円だとする説が主流だったんですよね。

でもケプラーは観測データから「もう絶対に楕円だ!」と思って、180回以上も検算をして、ケプラーの第3法則を導いたみたいな話があったんです。

▲ケプラーの法則はこちら

――パソコンもない時代に180回も検算を……。

須貝 そういう話に結構感動したりして。やっぱり偉大な発見とか数式の後ろには、必ずそのことしか考えていないような人がいて、人生を捧げるような瞬間ってやっぱりあるんだ、みたいなことに感動して。それで学問全体が好きになったんですよね。

たぶん、そのことばっかりずっと一生懸命考えてないと生まれない発想があるんですよね。ずっと考えていた先にひらめく瞬間があるんじゃないかと思うと、学問ってなんかすごく素敵な営みだなと思ったんです。

――功績の裏にある積み重ねに惹かれたんですね。

須貝 僕は結構人間が好きで、映画やアニメ作品のオフィシャルブックとかを買うのが好きなんです。オフィシャルブックには最初にビジュアルページとかもありますけど、監督とチーフディレクターの対談みたいなところが一番好きなんですよ。名シーンを振り返って、どういう気持ちで作ってるみたいな話とかが好きで。

――表に出ないところにも、どれだけの情熱を注いでいるかというのが伝わってきますよね。

須貝 そういう執念じみた、人の気持ちが見える数式とかに僕は講義を通じて出会えたからこそ、たぶん物理が改めて好きになったんだろうなって思いますね。

――作り手の思いに触れたというのが大きいんですね。

須貝 あとは「QuizKnockと学ぼう」チャンネルの「数学が好きになっちゃう放課後」の動画でも話したんですけど、大学1年生のときに図書館で「ガロア理論※2」の数学の本を読んで、数式で何かを表現することが改めて素敵だなって思えたんですよね。

※2)フランスの数学者ガロアが提起した理論。代数学の大定理で、体の性質を有限群に関連させて調べる理論だが、注釈に収まりきらないので詳しくはこちらの動画をどうぞ。

▲須貝さんのガロア理論の話から再生されます

須貝 それで、より「数式でものを表す」みたいなイメージが強いのは、僕のなかでは物理だったので、大学1年のときに改めて物理を選んだって感じでした。それまで物理はなんとなく当然そこにあるものだったけど、物理を選ぼう、学ぼうと主体的に思ったのは大学1年生のときかな、って僕は思っています。

次ページ:須貝さんはなぜ「物性物理」を選んだのか? 「物理学徒あるある」も登場!

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この記事を書いた人

野口 みな子

QuizKnock編集部で記事の編集をしながら、記事も書きます。記事を通して「知る楽しさ」の入り口を広げていきたいです。インターネットや動物、ポップカルチャーが大好き。大学時代は宇宙物理学を専攻していましたが、星座に詳しくないのが悩みです。名古屋大学の大学院理学研究科卒。

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