QuizKnockには物理を愛し、物理に愛された男がいます。それは「ナイスガイ」こと須貝駿貴です。
▲ナイスガイこと須貝駿貴
幼少の頃から「物の理」に興味を持ち、東京大学では超伝導現象を研究し博士号を取得。国立科学博物館の認定サイエンスコミュニケータとして、物理を「伝えること」にも力を入れています。
そんな須貝さんが物理と出会い、研究するに至るまでの道のりをインタビューで紹介していきます。今回は須貝さんが考える「物理」について、幼少期の思い出や高校物理を理解するコツを交えて聞きました。
目次
◎ 「物理」との出会いは「生まれたとき」!?
◎ 物理の教師だった父と取り組んだ「自由研究」
◎ 公式は覚えてない!? 須貝流攻略法「物理は絵で理解できる」
「物理」との出会いは「生まれたとき」
――早速ですが、須貝さんと物理との出会いはいつだったんでしょうか?
須貝 「物理」との出会い……生まれたときじゃないですか?
▲「え、生まれたときじゃないですか?」
――生まれたとき?
須貝 そう、「重力を感じるなぁ」「床からの反力を感じるなぁ」みたいな。
――え? 赤ちゃんのときから「力」を感じ取っていたということですか?
▲!?
須貝 それはさすがにないけど(笑)。でも、「物理」って「絶対そこにある」んですよね。物理、つまり物の理だから。
「物のルール」っていうのは絶対ずっとそこにあるから、出会いというと生まれたときにはもう出会ってる。だから授業のときにだけ出てくるものじゃないんですよ。
――なるほど、須貝さんにとって物理はこの世にはたらいている物理現象すべてのことを指すんですね。では、学問としての物理に出会ったのはいつでしたか?
須貝 一般的に学校で習うタイミングですよ。ただ、保育園のときにミニ四駆が好きだったんですよ。そのときはただ好きなだけだったんですけど、小3か小4くらいの理科の授業で、ミニ四駆にかなり似た学習教材が出てきたんです。電池を入れてモーターで動かして、めちゃ遅いけどちょっと走るみたいな。
――確かに、そういう理科の工作キットありましたね。
須貝 それも好きで、当時は「これが理科なんだったら俺は理科が好きだ。間違いない、だってミニ四駆だもの!」という感覚はあったと思います。
▲ミニ四駆に対する絶大なる信頼
須貝 ミニ四駆、つまり電池でモーターを駆動させるみたいなものは、理科のなかでも物理の分野ですよね。当時ミニ四駆が好きだったのは、「図工が好き」みたいなモチベーションが高かったのかもしれないけど、今思えば保育園のときには物理が好きだったかもしれないな、っていうのはあります。
――好きだったミニ四駆が、理科や物理とつながっていたんですね。
須貝 あと中学のときは、落ちていく台車にストロボを当てたり、台車に長い紙をつけて1秒間に60回点を打ったりする機械とかありましたよね。
▲こういうやつ
――あぁ、ありました!
須貝 なんだっけ……「記録タイマー」か! あれは結構好きでしたね。他の教科も、生物とか数学とか国語とか、別に嫌いじゃないんですよ、全部できるから。
――全部できるから!
▲「全部できるから」
須貝 だからあんまりどれかが好きとか嫌いとかはないんだけど、グラデーションがあるなかでもやっぱり物理が結構好きで、なんでかはあんまりわからないけど……振り子とか見てるほうが好きだったかもしれない。
高校の物理の先生だった父
――そういえば、須貝さんのお父さんが高校の物理の先生だったと聞きました。お父さんからの影響も大きかったのでしょうか。
須貝 それはありますね、ないはずはないと思います。なんだろうな……子どものころ、夜に父と車に乗っていたときに、父から「月がついてきとるように見えるで。なんでついてきとると思う?」みたいなことは聞かれたりしましたね。
――学校で習うような会話が……。
須貝 僕は「遠いからやで」みたいな。当時はまだ習っていなかったので、「じゃあなんで遠かったらついてくるように見えるんや?」みたいなことまでは答えられなかったと思いますが、そういう会話がある幼少期でしたね。
▲幼少期の思い出を語る須貝氏
――家で物理を教えてもらうこともあったんですか?
須貝 家で授業が始まるみたいなことは特になくて、わからないから教えてもらうとかいうこともなかったです。だってわかったから。
――賢いがゆえの……!
須貝 人に「家に先生がいていいなあ」ってよく言われるけど、「まぁ別に聞くことはないけどね」みたいな。
でも、自由研究は父に協力してもらうこともありましたね。一番協力してもらったのは、小5のときですね。リニアモーターカーを作りたかったんですよ、僕は。
――そのときから超伝導に興味があったんですか?(リニアモーターカーには超伝導現象が応用されている)
須貝 そう、磁石で駆動するやつを作りたかったんですけど、浮上の仕組みは無理だったので、むっちゃでっかい工作をしました。
まず塩化ビニルのパイプをホームセンターで買ってきて、ドリルでチュインチュインって穴を開けて、ブロワー(送風機)で風を吹きこんで。リニアモーターカーというか、ホバークラフト(空気を高圧で噴出して浮かせる乗り物)状態ですよね。これでプラ板みたいなのをちょっと浮かることには成功しました。
▲超伝導との出会いは小5だった
須貝 せめて推進力は磁石の力でと思って、ねじに導線を巻いてコイルを作って、ネオジム磁石(実用化されている磁石の中で最も磁力が強い)を貼ったりしましたけど。箸にも棒にもかからず全く動かなかったので、結局浮かび上がるだけのホバークラフトができたっていう。指でつついたら動くんですよ。この自由研究は父にすごく協力してもらった記憶があります。
――おぉ、小5の自由研究でそこまでやっているのはすごいです。
須貝 ちなみにその後に超伝導と再会したのが大学3年生のとき。実験の授業で超伝導を扱ったんです。自分で超伝導体を作るっていうもので、「あぁお久しぶりです超伝導。僕小学5年生のときにあなたのこと自由研究しましたけど」みたいな気持ちになりましたね。
――そういった経験もあって、物理を身近に感じていたんですね。
須貝 あとは書籍『QuizKnock Lab』にもあるんですが、小学4年生のときの自由研究で「潜望鏡」を作って賞をもらったこともあるんですよ。その工作では父に百円均一で買ってきた鏡を割るのを手伝ってもらったりしましたね。