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「世界一の大学生」が見据える未来

――山名さんは今年で23歳になるわけですが、今後何かしてみたいことはありますか。

山名さん 「ものづくりの民主化」を頑張りたいと思っています。

――「民主化」というと、どういうことでしょう?

山名さん 端的に言うと「ものづくりをしたい人が、いつでも・どこでも・誰でも、ものづくりができる社会の実現」ですね。

――なるほど、具体的にはどのような形ですすめていくのでしょうか。

山名さん 今の自分にできる形でいえば情報公開ですかね。自分の持っているスキルを言語化・公開していくことが、ものづくりへの道を開いていく一番シンプルなやり方だと思っています。

――それこそ「オセロAIの教科書」をnoteにまとめていましたよね。未来の「何か作りたい」子たちの参考になりそうです。

▲山名さん「書いたのが1年以上前なので、アップデートしたさはあるんですが(笑)」

山名さん 自分自身、オセロAIを作る時にお手本になるようなコードが少なかったこともあって、「情報」という形で後の世代に貢献できるといいなと思っています。自分が苦しんだところで、他の人も苦しむ必要はないので

もし誰かが自分の情報公開をきっかけにオセロAIを始めてくれたら、こんなに嬉しいことはありません。

ーー素晴らしいお考えだと思うのですが、後進のために道を整えると、山名さんのライバルが出てくる可能性もありますよね。先ほどは「オセロAIはライバルが少ないところが性に合っていた」とおっしゃっていましたが……。

山名さん 当然そうですね。ただ、ライバルは必要だとも思っています。負けないように抗いますし、それでも負けたら「強えな」と奮起するんじゃないでしょうか。そもそも、今の私はオセロAIをやっていますけど、そう遠くない未来、おそらく別の何かを見つけると思うんですよね。自分がオセロAIを辞めた後も、やりたい人ができる環境を整えておきたくて。

――界隈が盛り上がれば本望ということですね。

山名さん はい。文章を書くのは好きだし、説明してみると、自分の中で理解が固まっていきます。自分が歩いたところにクッキーを置いているぐらいの感覚ですね。

――差し支えなければ、情報公開以外の関わり方についてもお伺いしたいです。

山名さん フィードバックのできる雰囲気づくりは重要だと思っています。情報公開は自分が手を動かすだけなので、人と関わらなくてもできますよね。人のプロジェクトを見て、それについて「これ、興味あるんですけど……」みたいな感じで、いろいろ話してみる。

――楽しそうだし、盛り上がりそうですね。

山名さん 自分は高校生の時に「未踏」というプロジェクトに採択していただいてから、そのような機会に多く恵まれました。

未踏:情報処理推進機構(IPA)が実施している、突出した才能を持つIT人材の発掘・育成を目的とした一連のプロジェクトの通称。落合陽一氏をはじめとする第一線の研究者の指導を受けられる。山名さんは小石川の同級生と共に2018年度「未踏IT人材発掘・育成事業」に採択された。

▲報告会の写真。演題は「ヒューマノイドロボットのモーション作成支援システムの開発」

山名さん 情報公開で足りない部分を、人との交流で補っていけたら最高ですよね。実は「弱解決」を達成した方ともお会いしたことがあって、たくさん話しておいてよかったなあと思っているところです。

――人と人との繋がりが創作のクオリティを高めていくんですね。

山名さん はい。あとは最近まで、筑波大の中で「ものづくり」をする団体・OpenEsysの代表をやっていました。いろんな人が「こんなことをやりたい」というアイデアを抱えて集まってくるので、自分のモチベーションも高まりますね。

▲「OpenEsys」の活動風景

――職業であったり、具体的に思い浮かぶ将来像はありますか? 研究者・エンジニア・起業など、選択肢はいろいろあると思うんですが……

山名さん 全然わからないですね。オセロにしても、ツイートを見ていなかったらやっていないわけで。とりあえずすぐさま働くというよりは、やりたいテーマもあるのでもう少しオセロAIの研究がしたい思いが強いです。

――やはりオセロには思い入れがあるんですね。

山名さん ものづくりは自分の中では「趣味」なんです。趣味だからこそやめようと思ったこともないし、将来も絶対に何かしらを作っているという自信があります。それが技術という形をとるかはわからないです。折り紙に立ち戻る可能性もあります。

――ぜひ、作りつづけてください。

山名さんからのメッセージ

――この記事を読んでいる方に向けて、何かメッセージがあればお願いします。

山名さん 中高生の皆さんにアドバイスするとしたら、偉そうなことはあまり言えないですが、手を動かしてみるとわかることって多いような気がするんですよね。先ほど「盛大な勘違い」という話をしたと思うんですけど、とにかく何かやってみるのがおすすめです。

山名さん それに加えて「周りの大人が、手を動かしている子供を見守る」のもさらに大事かなと思っていて。振り返ってみても、学校の先生や両親のアシストの存在はありがたかったですし、「未踏」のような支援・展示の機会も、あるとないとでは大違いなので。

――子供の活躍には大人の適切なアシストが重要ですよね。

山名さん 過去の自分も、知識がある人から見たら適当なことをやりまくっていたと思うんですけど、そういう子も温かい目で見守ってほしい。危ないこと、全然上手くいかなさそうなことはきちんと助言しつつ。叱りたくなるタイミングがあっても、ある程度温かく見守りながら、危険のないように大人側がうまく整備していくのが良いと思います。「優しい心を持とう」ということですね。

――大事なことだと思います。

山名さん 今後はサポート側としても頑張っていきたいですし、もちろん今まで通り、全力でものづくりにチャレンジしていきます!

▲ありがとうございました!

現在22歳ながら、ゲームAIの第一線をひた走る山名さん。幼少期からきらりと光る知的好奇心と、彼の生み出したさまざまな創作物に、心惹かれた方も多いのではないでしょうか。

特に印象的だったのは「ものづくりの民主化」という言葉。何としても実現したいところです。私たちが大人になった世界線で、未来の子どもたちは一体何を作っているのでしょうか?

今後の活躍がとても楽しみです!

▲山名さんのXアカウントはこちらから

◎山名さんのWebサイト

◎オセロAIEgaroucid

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この記事を書いた人

中川朝子

医学部6年生の中川朝子です。普段は小説を書いたり、美術館を巡ったりしています。中日ドラゴンズの大ファン。文理の架け橋となるような面白い記事を書きたいと思っています。よろしくお願いします!

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