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株式会社JERA

小さい頃から大好きだった「ものづくり」

――そもそも山名さんの「ものづくり」の欲求は、いつ頃から芽生えてきたのでしょうか?

山名さん 記憶がある限り、ずっとものを作ってきましたね。

――ずっと! 何か「原体験」のようなものがあったのでしょうか。

山名さん 飛び抜けて印象的だったのは「飛び出す絵本」との出会いです。ロバート・サブダという絵本作家の展示を大昔に見に行ったことがあって。

▲サブダの絵本。重厚です

山名さん 作品が開かれてショーケースに置かれていたんですけど、それを見て衝撃を受けました。家に帰ってから、記憶を頼りに自分で真似して作ってみたんです。クオリティは、雲泥の差ですけど。

今でも見たことを覚えているくらいなので、すごく感動したんでしょうね。「飛び出す絵本」は小校低学年ぐらいまでずっと作っていました。

▲山名さんの作った「飛び出す絵本」

――そこで「作ろう!」と思えるのも山名さんならではですね。

山名さん とにかく紙工作にハマっていたので、誕生日プレゼントでハサミを買ってもらったこともあります。折り紙、切り絵、紙飛行機などを作っていました。ちなみに、ハサミは今でも現役です。自分のハサミがあると、いつでも工作ができるんですよね。

――いい話ですね。知的好奇心を邪険にしないご家庭の様子が伝わってきます。

▲「バイオリン奏者」の折り紙

――紙工作は手先が器用でないと大変なイメージがあります。ほかに何かに取り組まれたんですか?

山名さん レゴブロックですね。立体を扱う能力が鍛えられた気がします。小学校6年の時からは、ビジュアルでブロックを繋げるタイプのプログラミングもよくいじっていました。コードを書くようなプログラムとは少し違うんですが、思い返せばそれが最初のプログラミング経験ですね。

▲視覚的に操作できるプログラミングの例(クリックで拡大できます)

――なるほど、「工作」と「プログラミング」が山名さんの2つのルーツといえそうですね。

中高時代にのびのびと伸ばせた「知的好奇心」

――幅広い興味を持っていた山名さんの中で、最終的に一番しっくりきたのが情報系の分野だったんですか?

山名さん そうですね。中学ぐらいから技術の方面へ進んでいったのは、通っていた小石川中等教育学校という中高一貫校の環境の影響が大きかったです。めいめい自由に研究するような風土のある学校で、クラスにロボットを作れる人がいたり、小学生時代から研究をしている人がいたり。

――ロボットを作れる同級生がいるというのは、なかなかレアな状況では?

山名さん そうだと思います。小石川での6年間は、自分の中ですごく大きな出来事でしたね。合格するかどうかはわからなくて「受かったら儲けもんだ」くらいのノリで受けたんですけど。

▲小石川、思い出の詰まった物理室

――具体的に小石川に決めたきっかけはあるんですか?

山名さん 近所の人が小石川に通っているらしいと聞いて、のぞいてみた文化祭(創作展)がすごく面白くて。あとは、受験形式が肌に合ったのも大きいですね。「泡で出てくるハンドソープの原理は?」みたいな、「その場で考えなさい」という形式の問題が出るんです。

▲液体が出てくる容器と、泡が出てくるものの違いは何だろう?

山名さん 他にも「鉛筆は消しゴムで消えるのに、赤鉛筆は消えにくい理由」などを考えさせる問題がありました。その場で与えられた情報や日々の生活で感じたことをもとに考察していくのが楽しかったです。

――「発想力勝負」という感じですね。そんな入試をくぐり抜けた人たちの集まる学校、自分も通ってみたかったです。

山名さん クラスメイト同士、お互いモチベーションを高め合えるのも魅力です。けど、他人と競うこと自体は、そこまで好きではないんですよね。

――オセロAIを極めたのも「ライバルが少ないおかげ」とおっしゃっていましたね。

山名さん いい具合に、他人に興味がないんだと思います。過去の自分と戦うのは好きなんですが。明確に順位がつくコンテストより、何でもありの展示会のような場のほうが好みで、試行錯誤しながら作品を作っていました。

▲展示会のため、ニューヨークまで出向いたことも

――学校行事や課外活動などで、印象に残っているエピソードはありますか?

山名さん やはり学校祭ですかね。結構特殊で、1週間の間に3つ行事をやります。「芸能祭」「体育祭」それから「創作展」。期間中はとてつもなく忙しいですが、面白いです。

▲「創作展」の様子

山名さん 行事以外でも課外活動への懐の広さは抜群で、部屋を開けておいてくれるんですよね。実験装置がその辺にあるという環境もすごくありがたくて。壊さなければ怒られないんで。そういう時点で、理解のある先生がいっぱいいたんでしょうね。

広がり続けた「ものづくり」の未来

――山名さんは、もともとルービックキューブのロボットを製作していたんですよね。ルービックキューブからオセロへ興味が移った理由が気になります。

▲こんなロボです

山名さん ルービックキューブ関係でできそうなことをだいたいやり尽くして、オセロの方がやりたいことが増えてきたからですね。

基本的にあまり考えすぎず、とりあえずやってみるのが好きで、「やっぱりうまくいかなかったけど、この辺が特に難しいことはわかったぞ」「じゃあこの辺ちょっと調べてみるか」といったことをいろいろな分野で繰り返しています。

――「とりあえずやってみる」、大事なことだなあと思います。

山名さん 間違いないです。「自分でもこれ、できるんじゃない?」という盛大な勘違い。思い返せば昔から、人が作ったものの展示を見て「あ、これおもろい。できそう」というモチベーションで作ってきました。

――「盛大な勘違い」、いい言葉ですね。心に留めておこうと思います。

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この記事を書いた人

中川朝子

医学部5年生の中川朝子です。普段は小説を書いたり、美術館を巡ったりしています。中日ドラゴンズの大ファン。文理の架け橋となるような面白い記事を書きたいと思っています。よろしくお願いします!

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