こんにちは、服部です。
耳の早い方や書店に足を運んだ方はすでに御存知かもしれませんが、1月19日(木)に選考会が行われる、第156回直木賞・第156回芥川賞の候補作が発表されました!
目次
そもそも「直木賞」「芥川賞」とは?
これくらいはみなさん知っているとは思いますが、QuizKnockではまだ扱っていなかったので、簡単に紹介します。
芥川賞と直木賞は、「文藝春秋」の創業者である菊池寛(きくち・かん)が創設した賞で、数ある文学賞の中でも最も注目を集めています。
芥川賞は、おなじみの芥川龍之介にちなむ賞で、短編・中編の優れた純文学(芸術性を重視した小説)作品に贈られます。
他方で直木賞は、時代小説の『南国太平記』などを書いた直木三十五にちなむ賞で、長編を含む優れた大衆小説(娯楽やエンタテインメント性を重視した小説)の単行本に贈られます。
芥川賞に関していえば、一昨年にはタレントとしても活動する又吉直樹さんが『火花』で受賞。また、前回の受賞作『コンビニ人間』や著者の村田沙耶香さんも、まだまだ注目を浴び続けていますね。今回の芥川賞は果たしてどうなるのでしょうか。
今回の直木賞に注目!
上記のように話題性のある作品の受賞が続き、最近はどちらかというと芥川賞が注目されがちでした。
ところが今回は、直木賞の候補作品の著者がビッグネーム揃いであることに大きな注目が集まっています。
さて、候補作の作者5人のうち、何人の作家さんを知っていましたか?
冲方丁(うぶかた・とう)さんは『天地明察』、恩田陸さんは『夜のピクニック』で過去に本屋大賞を受賞し、どちらも映画化されています。森見登美彦(もりみ・とみひこ)さんは、既にアニメ化された『四畳半神話大系』や、主演を星野源としてアニメ映画化が決まった『夜は短し歩けよ乙女』などで人気を博しています。
ここまで挙げた4作品のタイトルを「聞いたことがない」という方は、最近の文芸に疎いほうでしょう。「常識Knock」文芸編などがあれば、じゅうぶん取り扱われるレベルですよ。
垣根涼介さんについても、私のなかでは少し知名度が落ちる印象こそありますが、多方面で活躍されています。『ワイルドソウル』は日本推理作家協会賞をはじめとする三冠を達成。サラリーマンの苦悩を描いた『君たちに明日はない』は「直木賞の前哨戦」ともいわれる山本周五郎賞を受賞しました。
かと思えば、今回の候補作の『室町無頼』は自身2作目の時代小説です。
有力候補は?
ここまでに紹介した4名のなかでは、恩田さんの作品が直木賞候補となるのは6度目です。何度も候補となっているだけに、恩田さんのファンの多くが「そろそろ受賞させてくれ」と待ち焦がれているよう。
最近では、第151回を『破門』で受賞した黒川博行さんや、第134回を『容疑者Xの献身』で受賞した東野圭吾さんが「6度目の正直」でした。
恩田さんの候補作『蜜蜂と遠雷』は、国際的なコンクールを舞台としてピアニストたちを描く青春小説です。ピアノや楽曲と向き合う多様な人物を見事に描ききり、これまでの作家活動を度外視しても、大本命としている予想記事は多いです。
他の候補作では、私の知り合いで読んだ人が多いのは森見さんの『夜行』で、いずれも好感触とのこと。しかし、冲方さんの『十二人の死にたい子どもたち』を読んだという別の知り合いはこれを激推ししていました。
やはり、簡単に行方がわかったものではないということですね……。
須賀しのぶさんの『また、桜の国で』
さて、ここまで比較的名の知れた4名を紹介してきましたが、大変申し訳ないことに私の知識から漏れていたお一方が残りました(私の知識の漏れとはいっても、オリコンの速報記事でも本文では触れられていないことなどを見ると、やはり知名度は低いのでしょうが)。
須賀さんは当初はライトノベルをメインに書かれていましたが、最近は一般の文芸作品も手掛け、昨年に『革命前夜』で大藪春彦賞を受賞されているとのこと。前情報を全く仕入れていなかったのですが、私が候補作の『また、桜の国で』をチラッと立ち読みしたところ、ものの数ページで見事に世界観に引き込まれました。
「選考会の後になればどのみち受賞作を読むだろうが、この作品が受賞するかどうかはわからない。しかし、これは新たに作家さんを知る絶好のチャンス!」
というわけで次ページからは、「今しかない」と購入して一気に読み終えた『また、桜の国で』を紹介していきます。