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株式会社JERA

会議室で「ビルシャワー」をする

まず、模造札束を1000万円分用意した。約3000円の経費精算。偽物のお金を本物のお金で買うバカらしさたるや。

▲1万円サイズの紙の束。経費で落とせてよかった

そして、まず100万円分をほどき、ばらまいてみることにする。これだけでもだいぶ興奮したので、感情のないアイムソーリーばかりの人はぜひやってみて欲しい。

 

まずは、私が手を伸ばしたときの高さである2mから100万円の束をパッと離してみる。

すると……札束は、全然舞わない。かなりまっすぐ落ち、床にぶつかった後、結構な広範囲に散らばった。空気抵抗より、床に当たった衝撃のほうがよほど紙を散らしたのだ。

▲セレブ感はまったくない

とはいえ、札束を落下させただけとなると、紙同士がくっつきあっていて離れなかった可能性もある。

今度は、2mの高さから100万円の束を軽く投げ上げてみることにした。こっちのほうがシャワーっぽいだろう。先程一度ばらまいたから、紙同士もはがれた状態だ。

そして……結果はこうなった。ちなみにテキトーな会議室で実験したため直後に人が入ってきてしまい、見た目は単なる会社を散らかしている人になってしまった別の会議室送りになったので床が違うことをご承知おき頂きたい。

▲オフィスの美化にご協力ください

この通り、やはりあまりバラつきがない。床材が柔らかめになったせいで、衝撃での飛び散りも少なくなっている。お世辞にも「華やか」なイメージとは程遠い結果となった。

100万円の束でもこうなったのだから、この100〜1000倍の量をばらまいたら、それはそれは量感を伴って落下していくだろう。どこからどう見ても労働災害だ。なかなかカッコよくは決められない。

 

予想外の実験結果、本当に危ない気がしてきたビルシャワー。お金をバラまくだけでは世間が許さない。これはもう、断念するしかないのだろうか。

 

……とはいえ、この実験ではまだ、圧倒的に不十分な要素がある。

高さだ。

検証のために「禁忌」に手を出す

名古屋テレビ塔の事件は、100mという高さが大きな鍵となっていた。野外で100mも高さがあれば、長い落下時間と気流の影響で、紙はかなりランダムに落ちていくことになる。そうなると、一枚一枚が別々のところに落ちていき、危険性が下がりそうなものだ。

これは、先程の実験では見られなかった部分である。100mという条件をシミュレートしないことには、ドルシャワーの危険性を示したとは言えないだろう。

なんとかして、リアルな条件を設定し、札束が危ないほど固まるのか、それとも飛び散るのかを確認したい。

あれを、やるしかないだろう。

紙幣に、メスを入れるのだ。

日本の法律において、貨幣を傷つけることは罪に問われるが、紙幣に関しては明確な規定がない。国立印刷局は当然ながら「傷つけないで」と言っているので、やっちゃいけないのは間違いない。

▲だけど、今なら……!

普通のお札ならできないことだが、3000円出して買った模造紙幣ならば……GOだ。

 

用意した模造紙幣のうち、400枚をそれぞれ25分割する。単なる紙とはいえ、なかなかの背徳感だ。しめて10000枚分、ミニチュア1万円札が誕生した。

あまりにも時間がかかったのでここを大盛り上がりで綴りたかったが、どう頑張っても1行で説明できてしまう、見た目のショボい作業だった。口惜しいが、画像で訴えていくことにする。

▲地道すぎる作業をやり遂げた

まるで雪の結晶のような10000枚、合計で1億円。ギリ9桁だが、バルクは十分である。

これを、上から落とす。1/25サイズなので、4mの高さがあれば25倍して100mを再現できると思ったのだが、残念ながらオフィスの天井が低く3m程度しか確保できなかった。75m相当だ。とはいえ、紙の動きが大幅に変わるということはないだろう。これぞヘリコプター・マネーだ。

いざ、実験。果たしてビルシャワーは華麗に舞うのか、災厄が降り注ぐのか……?

 

 

 

 

 

……固まった。

 

先述の論文を見る限り、落とした地点から離れたところにピークが来るのかと思ったが、紙の量のせいか、離した地点の真下が露骨なまでのピークとなった。標高4~5cmの山ができている。これは間違いなく、食らったらひとたまりもないだろう。

▲それなりの高さの山ができている

正直、もう少しバラけてハラハラと落ちていくだろうと思っていたのだが、降り注ぐというよりはのしかかるといった塩梅で紙束は落ちていった。今回は1億円分で実験したが、9桁の限界まで行けばこの10倍が降り注ぐ。こうなると本当に危ない。

 

さて、これを実寸大に戻して考えよう。

通常サイズの紙幣は、1/25版と同じ密度でサイズが大きい。となると、より速いスピードで落ちていくだろう。今回の実験をそのまま拡大すると、落下する長さは75mに当たる。そしてその距離を、最低でも4~5kg、重ければ50kgもの塊が頭上から降りそそぐのだ。

 

やっぱり危ないじゃないか!!

大金を手に入れた喜びのあまり、ビルシャワーをすることはとてもおすすめできる行為ではない。紙幣は必ずしも美しく飛ばない。物理的なマネープレッシャーは、心のみならず体まで押しつぶすだろう。

お金の価値は、使い方次第。喜びは、金を得たことそのものより、その使い方によって得るべきものなのである。ビルシャワーもカッコいいけれど、もっとカッコいい、お金の価値を最大限に引き出すような生き方をしてみてはどうだろうか。こんな禊では、心まで洗うことはできない。清貧という言葉があるように、何者にも変換できない価値を持っていること、美しく生きることこそが、あなたを一番輝かせてくれるのだ。

ボロは着てても心は錦」。身の回りの小綺麗さにとらわれず、大きく生きていこう!!

 

……さて。

床、綺麗にするか。 

 

 


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この記事を書いた人

伊沢拓司

QuizKnockCEO、発起人/東大経済学部卒、大学院中退。「クイズで知った面白い事」「クイズで出会った面白い人」をもっと広げたい! と思いスタートしました。高校生クイズ2連覇という肩書で、有難いことにテレビ等への出演機会を頂いてます。記事は「丁寧でカルトだが親しめる」が目標です。

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