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あるところに、バナナと石がおりました
両者は争い始めました
バナナが勝ちました
こうして人類が生まれました めでたしめでたし

...は?

導入のはじまりはじまり

皆さんこんにちは! 神話が大好きな桑名です!

さて、いきなり謎の話から始まりましたが、これは実はインドネシアのある島に伝わる人類の起源に関する神話のひとつなんです。

人類の起源と言えば、例えば旧約聖書におけるアダムとイヴなどが有名だと思います。

旧約聖書では、神が自らの姿に似せてアダムを作り、そのアダムからイヴが生まれ、彼らが人類の始祖となりました。

一方のインドネシアでは、人類を生み出したのは神ではなくバナナなのです。

というわけで今回は、こちらの「人類の起源バナナ説」の神話について解説していきます!

実はこの神話、似たようなものが各地に存在しており、それこそ日本神話にも似た構造の話が登場するのです!

それでは、ぜひ最後まで読んでいってください!

人の寿命はバナナのせい?

さて、まずは先ほどの神話をもう少し詳しく説明していきます。

あるところに、バナナと石がおりました
両者は、これから生まれる「人間」をどのようなものにするかで喧嘩をしていました
喧嘩の末、ついには重くて硬い石がバナナを殴ってしまいました

もう勝負は決したかと思いましたが、次の日になると子供のバナナがふたたび戦いを挑んできました
▲本来は性別とか無いです あくまでイメージです

そこから何度バナナが倒されても次の代のバナナが戦いを挑み続けました
そうしてついに石が深淵へと落ちてしまいバナナが勝利しました
▲石が攻撃する際に狙いを外して落ちてしまったらしい

こうして勝利したバナナが人間を作ることになり、人間はバナナのように「命に限りはあるが次の世代に引き継ぐことができる存在」になりましたとさ
▲めでたしめでたし

この神話によると、人類はバナナから生まれたから寿命がある、ということのようですね。

ふむふむ、という感じですが、ここでバナナに関するインドネシアの他の島の神話も紹介しましょう。

こちらは、人類の最初の父母がすでに存在している状態からスタートします。

あるとき神が、最初の父母に石を与えました
▲いつも神様から食べ物をもらっていたらしい
しかし、最初の父母は「何か他のものをください」と石を送り返してしまいました
▲ワガママだけど、食べたくないならしょうがない

今度は神がバナナを与えると最初の父母は喜んでバナナを食べ始めました

神はそれを見て「もしも石を選んでいたなら石のように不変な永遠の命を得られてただろうに」と言いましたとさ
▲そんなこと言われても……

めでたしめでたし……?

めでたくはないですが、ここでも「不変の存在」バナナ「限りある存在」として描かれ、結果的にバナナが選ばれたことによって人間に寿命が生まれたことがわかります。

このような神話は「バナナ型神話」と呼ばれます。登場する存在は多少違えども、「人間に寿命がある」理由についての似たような神話が各地で見られ、遠いところだとマダガスカルでも見られます。

▲バナナの登場する神話の分布

そして面白いことに、複数の民族の神話で共通してバナナ「限りある存在」として描かれることから、これらの神話はバナナ栽培の伝来に伴って伝わっていったという可能性が示唆されています。

日本だと「岩」or「花」?

実は、この「バナナ型神話」と似たような構造は日本神話にも登場します。

それは、ニニギノミコト(瓊瓊杵尊)という神が妻をめとるときのお話です。

このニニギノミコト天照大神アマテラスオオカミの孫にあたる神で、「天孫降臨」によって神々が住む高天原たかまがはらから初めて地上に降り立った神とされています。つまり、私たち人類にとってはご先祖様とも言える存在です。

地上に降りたニニギノミコトには、イワナガヒメ、コノハナサクヤビメという二人の姫が妻として送られました。
しかしニニギノミコトは、美しいコノハナサクヤビメだけを選び、容姿が醜かったイワナガヒメを拒んで送り返してしまいました。

実はこの二人の姫が送られてきたのには、深い意味が込められていました。
イワナガヒメは「岩(石)」を象徴しており、岩のように永遠に変わらない命を持つことを意味していました。一方で、コノハナサクヤビメは「花」を象徴し、一族の繁栄と引き換えにはかなく短い命を持つことを意味していたのです。

ニニギノミコトが永遠を象徴するイワナガヒメを退け、花のように美しいコノハナサクヤビメだけを選んだことで、彼の子孫である人間は「花のようにはかなく散る命」を持つ存在になった、と伝えられています。

つまりここでは「岩(石)と花(植物)」で対比されており、ものは違えど「石とバナナ」と同じような対比となっています。結末も同じです。

そのため、こちらも「バナナ型神話」の類型だと言われています。

まとめ

今回は東南アジアの面白い神話について解説してみました。

このように、複数の文化圏に伝わる神話などについて様々な面で検証し、相互の関係性について調べる学問的試みを「比較文化」といい、私が現在大学で学んでいるものになります。

もちろん、神話以外にも「文学」「言語」なども比較文化の対象となります。

この記事を読んで、比較文化の面白さ、わかっていただけたでしょうか?

今回紹介したものの他にも、日本の神話と似ている神話がどこかの国にあるかも……?

それでは最後に1問クイズです!

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この記事を書いた人

桑名 良治

筑波大学2年の桑名です。神話や日本語、群雄割拠の時代などが好きです。日本語検定1級。

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