VTuberの因幡はねるさんが企画やクイズなど、普段の活動について自由に語る連載「因幡はねるの #更新予報」。
第5回となる今回は、前回に引き続き、自身が経験した「子宮体がん」についてのお話です。「子宮体がん」かもしれない――そう気付いたあと、何を考え、どう行動したのでしょうか?
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前回の続き
子宮体がん検査の結果が出るまでは、「もう気軽に旅行できなくなるかもしれない」と思い、愛犬2匹と伊豆へ出かけたり、普段よりたくさん散歩へ出かけたりしました。
▲愛犬こむぎこ、きなこ。伊豆のニューヨークランプミュージアム&フラワーガーデンにて
検査結果を聞きに行く前日、たまたま実家から遊びに来ていた母に「実は前から体調に不安があって、子宮体がんの検査結果を明日聞きに行く。私の中では絶対子宮体がんだと確信している」とうち明けました。
しかし母は「そういう重大な病気が発覚している場合、事前にクリニックから電話が来るものだから、今日来てないなら大丈夫だと思うよ」との返事。
たしかに「今までそういう検診に行ったとき面倒で検査結果を聞きに行くのが遅くなったことがよくあるけど、連絡が来るほど大変じゃなかったからなんだなぁ」と、ちょっと安心していました。
当日、ちょっと早起きして病院へ出かけました。朝イチで行くつもりが住所を間違え、1時間遅れで到着。診察室の前で「事前連絡が無かったんだから、きっと大丈夫」と自分に言い聞かせていました。
先生「子宮内膜上皮がんの疑いだから、明日大きい病院行ってね」
私「え?」
先生「〇〇病院に紹介状書いとくから、なるべく早めに行ってね」
私「?」
私「私、がんなんですか?」
先生「疑いと出てるので、明日大学病院で調べてもらってください」
私「はい……」
先生が冷たすぎるのはさておき、考えられる最悪の結果が出てしまいました。
病院の前からタクシーに乗った時も「私、がんなのに普通にタクシー乗ってるなぁ」とか「運転手さんにがんですって話してみようかな?」とか、なんだか変な心理状況になっていました。
「がんかもしれない」と診断されて……
帰宅後、母に「私、子宮体がんらしい」と伝えると「嘘でしょー!」と言われました。そしてなぜか鯛のお頭を焼いてくれました。私はそのまま犬を抱っこし、ベッドでしばらく泣いていました。
検査結果報告から1時間程度。この時点でずっと考えていたことは、自分の身体のことよりも
①大事な愛犬2匹と離れ離れになるかもしれない、この2匹の面倒をちゃんとみられなくなってしまうかもしれない。
②この結果を一番に伝えて相談したい相手はファンのみんな。今までどんな出来事も一番に報告してきた。でも診断が確定していなくて伝えられない。
この2つでした。
「自分が死んでしまうかもしれない」という不安や「今後VTuberを続けられるのか? 続けられなくなったら治療費や生活費は大丈夫なのか?」という不安が出てきたのは、かなり後のお話でした。
その夜、普段通りの生配信をする気持ちになれなくて、メンバーシップ限定配信をしました。元気に雑談するつもりが、開始ボタンを押した瞬間、突然涙が止まらなくなりました。何の説明もないまま泣き続ける私に、リスナーさんたちは優しくしてくれました。困惑させてしまって本当にごめんなさい!
【メンバーシップ限定】おはなし【因幡はねる / ななしいんく】
翌日、大学病院に行きました。とても優しい女医さんで、あまりの優しさに突然涙があふれて止まらなくなりました。「数年前から不調を感じていたので、もしかして相当悪いのかもしれない」と伝えましたが、先生からは「不安ですよね、まだ疑いだから確定していないし、おそらくがんだとしても初期だと思います」と言われました。
実際に初期だとわかるのはまだだいぶ先のお話なのですが、なぜ先生は初期だとわかったのでしょう? いまだにわかりません。
この時、今後の人生で妊娠を望むかどうか聞かれましたが、即答で「望みません! もしがんだったら絶対に治るような手術をしてください!」と伝えました。命より大切なものは犬しかありません。先生は「がんだった場合、リスクを考えるとやはり子宮、卵巣、リンパ節の摘出が望ましいです」と仰いました。私は「絶対にそうしてください!」と答えました。
子宮体がんの精密検査は痛いと聞いていたのですが、私はなぜか全く痛くなくて拍子抜けしました。(泣き叫ぶ人や、終わった後しばらくベッドで横になる人もいるらしい)なんかおへその裏をぐりぐりされてるなぁ、くらい。その後MRIも撮って帰宅しました。
10日後、検査結果を聞きに行くことに。この10日間が人生で一番つらい10日間でした。病気が確定した後や、手術後よりも何よりも一番つらい10日間でした。(でも毎日配信してたな……)精密検査を受けた直後から、体験記が書けるようにTwitterの非公開アカウントを作ってメモをとっていたのですが、検査結果を聞きに行く日の朝は「生きられますように!」と呟かれていました。
検査の結果――
検査結果を聞きに行った4月28日。診察室の前で名前を呼ばれるのを待つ間、自分でも信じられないくらい心臓がはやく動いていました。よくドラマなどで診察室で結果待ちするシーンってありますよね。まさにその状態。なんてこと考えて気を紛らわしていました。
先生から告げられた内容は以下の通り。
初期の子宮体がんグレード1(手術しないと確定できないので予想)
MRIを見る限り、がんが子宮筋層の半分以下なのでステージ1aだと思います。
5月2日にCTの検査をしましょう。CTでリンパ節が腫れていなければステージ1とみて良いでしょう。その場合、腹腔鏡手術という開腹なしのお腹に穴をあけて行う手術になります。
腹腔鏡手術の場合、前日から入院で、だいたい1週間以内で退院となります。
開腹しないため回復が早く、退院翌日からデスクワークが可能な方が多いです。
CTでリンパ節が腫れていた場合はステージ3以上と予想されますので、開腹手術になります。
10日くらい入院が必要となり、場合によっては抗がん剤治療が必要です。長期で抗がん剤治療を行うことはほとんどなく、クールを決めて行います。
ただリンパ節が腫れている場合は、前回撮ったMRIでもっと酷い状態のはずなので、おそらくステージ1と予想されます。ステージ1予想のため、今ここで7月6日の手術枠を抑えます。もしCTの結果で、リンパ節が腫れている場合は、また別日に開腹手術の枠を取り直すことになります。
先生は、図を描いたりして詳しく説明してくださり、「まだ聞きたいことある?」と何度も聞いてくれたりしました。しかし先生のPCのカルテ画面をよく見ると、前回の診察の記録に「突然の落涙」と書かれていて少し恥ずかしかったです。
この後
ここまでのスケジュールがこの診察で決まりました。ものすごいスピード感です。少し事務的に感じる人もいるかもしれませんが、それだけ効率化されて来たということ。ということは、今までの患者さんたちがみんなこのフローで治ってきたんだな、というのを感じて少しホッとしました。「初期の子宮体がんグレード1予想」という考えられる結果の中では一番良いものだったことで安心し、脱力しました。
その日の夜、生配信。
すべて打ち明けると心配させてしまうのではないか、とも一瞬考えましたが、私とファンのみなさんの関係はそうじゃない。今まで生活のほとんどの話を伝えてきました。正確に伝えれば、誤解もされない。そう思ってパワーポイントでスライドを準備しました。赤裸々にすべてを報告し、「個室代が不安だ!」とスパチャをせびりました。
【次回へ続く……】
筆者プロフィール
ななしいんく所属のVTuber。
毎日の生配信や動画投稿、テレビ出演や音楽ライブ出演など幅広く活動中。
2022年には新曲『独占予報』をリリース。2023年3月にはサンリオピューロランドでソロイベント「因の者オフ会 ~絶対ガチ恋宣言~」を開催した。
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