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2021年5月26日の夜、皆既月食が起こります。

今回は、今年最も大きい満月が皆既月食になる、珍しい月食。そしてなんと、日本全国のどこでも見ることができるのです。これは見逃せない!

2018年1月31日の皆既月食(出典:国立天文台)

はじめまして。この度新しくライターを務めることになりました、小南(こみなみ)と申します。名古屋大学で航空宇宙工学を専攻しています。

この記事では、宇宙が大好きなわたしが、月食のしくみから観測のポイントまでわかりやすく解説します!

目次

月食ってなに?

月食とは、地球の影に月が入り、月が暗くなったり欠けたように見えたりする現象のことをいいます。

では、月食はなぜ起こるのでしょうか?

月食はなぜ起こる?

地球の衛星である月は、自ら光っている星ではありません。月は、恒星である太陽の光を反射することで夜空で光って見えるようになります。

月食は地球によって月に当たる太陽の光がさえぎられてしまうために起こります。太陽の光によってできた地球の影の中を月が通過することで、月が暗くなったり、欠けたように見えたりするのです。

月食が起こるしくみ

よって月食は太陽と地球と月が一直線に並ぶとき、つまり満月の頃だけに起こります。

ただ満月は毎月訪れますが、そのたびに月食が起こるわけではありません。それは地球の公転軌道と月の公転軌道が5.1°程度傾いているためです。そのため太陽と地球と月が一直線上に並ぶのは約半年に1回となります。通常の満月は地球の影より北側や南側にそれたところを通過しています。

月の軌道は傾いている
太陽・地球・月が一直線に並ぶのは約半年に1回

月の満ち欠けと何が違うの?

ところで、月食で月が欠ける様子と、ふだん見ている月の満ち欠けは何が違うのでしょうか?

月は、太陽の光を反射することで見えるようになるので、太陽の光が当たっていない(影になった)部分は、地球から見ることができません。月に当たる太陽の光は一定なので、地球に昼と夜ができるのと同じように、月も明るい部分と暗い部分にわかれます。

月は約1ヶ月かけて地球の周りを公転しています。このとき、地球から月が見える方向が変化するため、明るい部分と暗い部分の形が変化するのです。これが月の満ち欠けです。

月の満ち欠けが起こるしくみ

皆既月食ってなに?

さて、月食の中でも今回は皆既月食です。

地球の影には本影(太陽光がほぼさえぎられた濃い影半影(本影を取り囲む薄い影の2種類があり、月が本影に入ったときのことを一般的に月食といいます。そのうち月の一部だけが本影に入り込む現象が部分食、月の全てが本影に入り込む現象が皆既食となります。今回はこの皆既食中の月を見ることができるんです!

皆既食中の月って見えるの?

皆既月食って、月が地球の影の中に完全に入ってしまうということは、皆既食中の月は影に隠れて観測できないのでは?

いえいえ、大丈夫です。皆既月食は観測できます!

皆既食中の月は真っ暗になって見えなくなるわけではなく、このような「赤銅(しゃくどう)色」と呼ばれる赤黒い色に見えます。

2018年1月31日の皆既食中の月(出典:国立天文台)

なぜ月が赤銅色に見えるの?

月が真っ暗にならない理由は、地球のまわりの大気がレンズのような役割を果たし、太陽光が屈折されて本影の内側に入り込むため。赤銅色に見える理由は、レイリー散乱という現象にあります。

太陽光には青や赤などいくつもの光が含まれており、青い光は短い波長、赤い光は長い波長と、それぞれ異なる波長を持っています。

そして、光には大気中の微細な分子にぶつかると散乱する、という特性があります。このとき、波長の短い光のほうが散乱されやすくなります。これが、レイリー散乱です。

太陽光が地球のまわりの大気の中を通過する際、青い光は散乱されやすいため、大気をほとんど通過することができません。一方で赤い光は散乱されにくいため、光は弱められながらも大気を通過することができるのです。

皆既食中の月が見えるしくみ

このようにかすかな赤い光が月面を照らしてくれるおかげで、わたしたちは普段とは違った幻想的な月を観測することができるわけです。

ただし、皆既食中の月の色はいつも同じではありません。大気中にチリが少ないと、大気を通り抜ける光の量が多くなるため明るいオレンジ色に、反対にチリが多いと大気を通り抜ける光の量が少なくなるため、っぽく見えます。過去には大きな火山活動によって火山灰が撒き散らされ、皆既食中の月がほとんど見えないこともあったようです。今度の皆既月食はちゃんと見られるといいですね!

今回の皆既月食の特徴は?

今年一大きい満月が月食に!

今回は2021年のうち最も地球に近い満月が皆既月食になる、という珍しいものです。

月の公転軌道は円形ではなく楕円形をしており、地球と月の距離は一定ではありません。また月の軌道は太陽の影響を受けて変化するため、満月や新月のときの距離は毎回異なります。地球に最も近い位置で起こる満月は、最も遠くで起こる満月に比べて視直径が約14%大きく、約30%明るく見えます。

満月の距離のちがい(出典:国立天文台)

※ちなみに大きく見える満月の名称として近年用いられている「スーパームーン」という言葉ですが、実は天文学の正式な用語ではなく、定義もはっきりしていません。そのため本記事では、今回の皆既月食を「スーパームーン皆既月食」と呼ぶことをあえて避けています。

赤く光る星・アンタレスとの共演!

今回の月食中の月の近くにはさそり座の一等星アンタレスが見えます。アンタレスは赤く光る星ですので、同じく赤く光る皆既中の月との夜空での共演が楽しみです!

観測する際に気を付けることは?

皆既月食について知ると、観測するのがさらに楽しみになってきますね。最後に、今回の皆既月食を観測する際に気を付けたいポイントを2点お伝えします。

月食が見られる時間に注意!

1つ目は、皆既月食が見られる時間がたった19分しかないということです。今回は本影の端を通り抜けるような月食となっており、皆既食中の月が見られる時間が非常に短くなっています。皆既月食を見ることができる時刻は20時09分~20時28分となりますので、見逃さないようにご注意ください!

各地で月食が見られる時間。その他の地域はこちらを参考に!

月食を見る場所に注意!

2つ目は、今回の皆既月食は低空で見られることです。地域によって地平線からの高さや方角は少し異なりますが、皆既食中の月の高度はおよそ10〜15°と日本国内ではどこであってもかなり低くなります。南東の視界が開けたところを事前に探しておきましょう!

まとめ

今回の皆既月食のポイントは以下の通り。

全国どこに住んでいる方でも、今回の皆既月食は楽しむことができます。ぜひ5月26日の20時頃、みんなで一緒に皆既月食を観測しましょう!

参考文献

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この記事を書いた人

小南

小南です。名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻所属。「楽しく読んでいたら、いつの間にか知識も身に付いていた!」と思っていただける記事を提供するべく日々奮闘中。皆さんの一時の気晴らしとなることができれば幸いです。

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