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東日本大震災から6年ということで現状の地震学について解説していきます。

※この記事は第2回になります。第1回を読んでいない方は先にこちらをお読みください。

まずは1問クイズから。

目次

P波とS波

地震が発生すると地震波が出て大地を揺らします。地震波(実体波)には大きくP波S波の2種類があります。縦波のP波と横波のS波、つまり振動する方向が異なります。詳細は下図。

進行方向(上向き)に対して振動方向が平行なのがP波、直交するのがS波である。

一般的にS波の方がP波より振幅が大きくゆっくりと伝わるため遅く到達します。私たちは地震は最初弱い揺れがはじまり、しばらくして大きな揺れがやってくることを経験的に知っています。

2008年6月14日の岩手宮城内陸地震における仙台市の地震計の記録。南北方向の加速度を表す。P波とS波の到達が読み取れる。
image / Via 気象庁

地震学的には2種類の速度の異なる波の存在は、地震の震源決定のための重要な要素になっています。100年以上前の明治時代に、地震学者の大森房吉はP波とS波の到達時刻の差(初期微動継続時間)から震源までの距離を求める公式を発表しました(大森公式)

複数の地震計のそれぞれで大森公式から震源距離を計算することで、震源位置を推定することができます。また、各地の地震計の振幅から地震のマグニチュードやメカニズム解を推定して発表します。

科学の叡智、緊急地震速報

P波とS波による震源決定を応用して生まれた画期的なシステムが緊急地震速報です。大きな地震が発生した際に揺れが来る前に揺れが来ることを知らせる、こんなシステムがあるのは日本だけです。東日本大震災以後大きな地震が多い状態が続いているので目にする機会も多くなっています。

緊急地震速報では、震源に近い(つまり早く揺れが来る)地震計のデータを使って即座に震源とマグニチュードを推定し、瞬時に震源から離れた地域での予想される震度を計算しテレビや公共機関を通じて発表します。

緊急地震速報は、地震波の到達時間のずれを利用して、揺れが来る前に地震の発生を伝える。
image / Via 気象庁

緊急地震速報の発表基準ですが、最大震度5弱以上が予想される地震において、震度4以上の揺れが予想される地域に発表されます。ただし、震度の予想は1段階の誤差をもっているので、最大震度が5弱だったのに速報が発表されない場合や、逆に速報が発表されたのに最大震度が4であったという場合は往々にしてあります。

また、時々あきらかな誤報が発生することはご存知だと思います。機械の故障や、別の場所で同時に発生した複数の地震を単一の地震だと誤解してしまうことが原因です。特に大地震の後は地震活動が活発になるため、誤報の割合は増加します。とはいっても地震が発生していることは紛れもない事実なので身の安全を確保するのは当然です。

巨大地震の余震は数十年にわたって続く

大きな地震が起こるとその震源の周辺で多くの地震が発生します。このような地震をまとめて余震と呼んでいます。大きな余震は場合によっては本震に匹敵する規模となり、二次災害を引き起こすこともあります。

東日本大震災では単独でも大地震であるマグニチュード7クラスの余震が多数発生しました。そしてこれからも発生するでしょう。大きな本震であればあるほど余震は多く、長く続きます。東北沖ではおそらく数十年にわたって2011年以前より活発な地震活動が続くでしょう。

阪神淡路大震災における余震回数の推移。
image / Via 気象庁のHP

余震はなぜ発生するのでしょうか? 本震で大きなすべりが発生することで、その周辺の大小さまざまな断層にかかる力が増減します。このうち力が増加した場所にある断層では次にその断層で発生する地震までの時間が大幅に短縮されます。その結果本震から短い時間でたくさんの地震が発生します。(ただしまだよくわかっていなことも多いです)

余震の回数については有名な統計法則があります。余震の頻度は本震が発生してからの時間に反比例する(ただしカットオフ時間あり)というもので、大森則といいます。(さきほど紹介した大森公式とは名前が同じだけで別概念です)大森則がなぜ成立するかを解き明かすことは地震学の重要課題の一つです。

さて、次は津波についてです。

次のページに続く(1/2)。

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この記事を書いた人

S.O.

現在は東京大学大学院博士2年。QuizKnock最初期にいくつか記事を書いていました。

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