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どうも、薬学大学院生のまちょです。

私、幼い頃の記憶はもうほとんど覚えていないのですが、ひとつだけ強烈に嫌だったことを覚えています。

それは坐薬ざやくです。お尻から入ってくるあの感覚が嫌で嫌で、泣きわめきながら母に入れてもらっていました。なぜこんな思いをしなくてはいけないのだろうと母を恨んでいましたね(笑)

ただ、大きくなって薬学を勉強している今では坐薬が有用であることはとても理解できます。特に、かつての私のような幼い子供、または高齢者など薬が飲めない方にはとても有用です。

今回はそんな坐薬について、その利点や合理性をお話ししていきたいと思います。

即効性がピカイチ

坐薬の一番のメリット、それは「即効性」にあります。

飲み薬とは異なり坐薬は直接血液中に移行するため、吸収がとても速いのです。

以前、「薬を水以外で飲んじゃダメ」な理由【薬学生が解説】」という記事でも解説したのですが、薬は体内を旅します。

簡単に説明すると、薬は主に小腸から吸収され、血液に移行することで身体中を巡ります。飲み薬の場合、口から飲んで小腸に届き、吸収され効果を発揮するまで一般的に15~30分程度かかると言われています。

それに比べ、坐薬は肛門から入ったところにある直腸から即座に吸収されるため、即効性が高いのです。

例えば子供が苦しそうで、一刻も早く熱を下げてあげたい時に重宝しますね。

坐薬は「初回通過効果」を回避する

続いては薬の開発の観点からです。

坐薬の最大の特徴は「初回通過効果」を回避できることでしょう。

初回通過効果とは?

先ほど、薬は吸収された後に血液の流れに乗り身体中を巡るといいましたが、正確には、身体中を巡る前にいったん肝臓を経由します。

みなさんも肝臓は知っているかと思いますが、具体的に何をしている臓器なのか知っていますか? 肝臓の主な仕事は「代謝」、つまり、食べ物など外部から吸収されてきた物質を分解したり、毒性を弱めたりすることにあります。

そして、私たちの身体を守る飲み薬も肝臓を経由するため、当然代謝の対象となります。つまり、薬が吸収されて身体中を巡る前に代謝を受けることで、実際に口に入れた量よりも薬の服用量が減少してしまいます。これが初回通過効果です。

そのため、多くの飲み薬は開発の際、初回通過効果をシミュレーションしたうえで服用量を設定しています。しかし、代謝能力は個人差が大きいため、正確なシミュレーションが難しいのです。

坐薬が初回通過効果を受けない理由

しかし、坐薬は直腸から吸収されるため肝臓を経由せずに身体中を巡ることになります。

つまり、初回通過効果を受けないため、薬の分解が少なくより正確な服用量の設定ができます。これは薬の開発にとっては非常に重要なことです。

ちなみに、初回通過効果を回避できる剤形は他に舌下錠ぜっかじょう貼付剤ちょうふざい、点眼薬などがあります。

まとめ

自力で薬が飲めるようになってからは、坐薬の出番は少ないかもしれませんが、坐薬には「即効性」や「開発のしやすさ」などたくさんのメリットがありました。

幼い頃は「なんで坐薬なの……」と思っていたのが、実は子供のためを思っての坐薬だったわけですね。

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この記事を書いた人

まちょ

博士後期課程のまちょです。専門は薬学です。薬学は生物・物理・化学すべてを網羅する学問ですが、分かりやすくかつ興味をもってもらえるような記事を書きたいです!

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