こんにちは、薬学大学院生のまちょです。
みなさんは幼い頃、おくすりは好きでしたか?
粉薬などは苦くて、どちらかというと苦手だった人が多いのではないでしょうか。
かくいう私も粉薬が嫌いで、ジュースでどうにか苦みをごまかせないかなどと考えたものです。
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しかし、水以外で薬を飲むと、その効果が十分に発揮されないどころか、体に害を及ぼす可能性すらあるのです。
薬を飲むこと自体が目的となってしまい効果が弱くなってしまっては本末転倒。今回は薬が効くしくみとともになぜ薬は水で飲むべきなのかを解説していきます。
薬が作用を示すためには?
薬は身体中を「旅」する
薬が効くためには、まず薬が効果を発揮したい「場所」に届かなければなりません。頭痛薬は頭に、花粉症の薬は鼻に届く必要があります。
例えば、内服薬(飲み薬)を飲んだとします。まず薬は口から入り消化管をたどり腸に着きます。すると薬は腸から血中に移動し(吸収)、血液と共に全身を巡ることとなります(分布)。
これらの過程を経て、薬は目的の場所にたどり着き、効果を発揮します。
続いて、薬の一部は肝臓にある酵素により、効果を発揮しないかつ排出されやすい性質に変えられます(代謝)。そして、旅を続けながら最終的には腎臓から尿とともに体外に出ます(排泄)。これにて薬の旅が終わります。
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つまり、薬の力自体以外にも、吸収、分布、代謝、排泄というこの4つの過程もまた薬の効果を左右する要因であるわけです。
薬の副作用とは
ちなみにですが、薬は全身を旅するため、もちろん効果を発揮したくない場所にも到達してしまいます。
そこで示される作用は、いわゆる副作用と呼ばれます。例えば、花粉症の薬が脳で作用を示すことで眠気が副作用として出るわけです。
薬の「正しい飲み方」とは?
このように、薬が適切な効果を発揮するためには、薬が正しく身体中を旅する必要があります。
そのために、薬は水または白湯で飲まなければなりません。逆に言えば、水(白湯)以外の液体で薬を飲むと、その液体に含まれる成分が「薬の旅」の予定を狂わせてしまう可能性があるのです。ここからは、具体的にどんな飲み物が薬のはたらきに影響を及ぼすのかみてみましょう。
お茶
お茶に含まれているカフェインが影響する可能性があります。睡眠薬の効果を弱めてしまったり、逆に解熱鎮痛剤では効果を強めてしまう恐れがあります。効果が強まるということは、それだけ副作用も強まるためかえって危ないです。
牛乳
食品に含まれるミネラルは、薬に結合することによって吸収を妨げてしまう恐れがあります。よって、ミネラルの一種であるカルシウムが多く含まれる牛乳は避けた方がいいでしょう。また、カルシウムと薬が結合するということは、カルシウム自体も十分に吸収されなくなってしまうということ。非常にもったいないですよね。
グレープフルーツジュース
グレープフルーツの果肉に含まれるフラノクマリンは肝臓の代謝酵素の働きを弱めてしまいます。つまり、薬は代謝されずに旅を続けることになるため、その分効果が過度に強まってしまいます。特に高血圧の薬などを常用している方は注意が必要です。
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また、薬を飲むときさえ注意すればいいという話でもありません。なぜなら、薬の旅はすぐに終わる訳ではないからです。特に、上記のフラノクマリンは代謝酵素への影響が数日続くため、相互作用する可能性のある薬の服用中はグレープフルーツジュースは控えたほうがいいでしょう。
薬剤師に訊こう!
薬がどのようにして効くのかを理解すれば、水で飲むべき理由がよくわかるかと思います。
一方で、薬によっては水以外で飲んでもいい場合もあります。
例えば、幼児が薬を飲みやすいよう、アイスクリームと一緒に食べさせたりすることもありますし、子供や高齢者が薬を飲むことを助ける服薬専用のゼリーなども存在します。
薬の注意点は多く、勉強している私たちでさえ見落とすこともあるほど難しいですが、そのために薬剤師がいます。不安に思うことがあれば、自分で調べるだけでなく薬剤師さんに訊くのがおすすめです。
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