ごきげんよう、栞です。
長年、私はトイレへ行くたびに思っていたことがあります。
それは、「なぜトイレットペーパーにはシングルとダブルがあるのだろうか?」ということです。
シングル派、ダブル派で国民を二分するともいわれるトイレットペーパー。一体どんな経緯で、この2種類が誕生したのでしょうか。そもそも、トイレットペーパーのシングルとダブルの紙には違いがあるのでしょうか。
そこで、今回は「スコッティ」や「クリネックス」などのブランドが有名な日本製紙クレシアに取材してみました。
▲理系学生の心の友、「キムワイプ」も日本製紙クレシアだぞ!(日本製紙クレシア提供)
あの「ロール型」には歴史あり!
いまやロール型のトイレットペーパーは生活必需品ですが、日本で和式トイレが主流だった時代には、ロール型ではない「落とし紙(ちり紙)」が使われていました。水洗トイレの普及により、洋式トイレが増え、壁にホルダーを取り付けて使用するロール型が一般的になったようです。
日本製紙クレシア(当時:山陽スコット株式会社)がトイレットペーパーの販売を開始したのは、1963年のことでした。担当者によると、アメリカで使われていた機械を輸入して生産・販売していたそうです。
なぜシングルとダブルが生まれたのか
現在ではシングル派とダブル派で人気を二分しているトイレットペーパーですが、日本ではシングルとダブルのどちらが先に発売されたのでしょうか。
日本製紙クレシア担当者:当社では、シングルの方が先に発売を開始しております。 当社が日本でトイレットロールの販売を開始したのが1963年で、合弁会社であったアメリカのスコット・ペーパー社のノウハウを活用し、生産を開始したのが、「ロール形状」の「スコット トイレット ティシュー 75m シングル」です。
一方で、同社からダブルが発売されたのは1964年。シングルの方が1年先輩ということになりますが、ダブルが生まれた経緯については、担当者も「当時の資料を確認しましたが、経緯に関してはわかりかねます」とのことでした。
そこで、ダブル誕生の背景を衛生用紙を製造しているメーカー団体・日本家庭紙工業会に問い合わせてみました。確固たる証拠はないものの、会員各社の情報をまとめると、以下のような経緯になるそうです。
事務局担当者:トイレットペーパーには、大きく分けて大手製紙メーカーが生産するバージンパルプを原料としたパルプもの、中小製紙メーカーが主に生産する古紙を原料とする古紙ものに分けられます。
ちり紙を製造していた中小メーカーの古紙もののトイレットペーパーの販売が始まり、パルプものトイレットペーパーは、より肌ざわりが良い等の差別化・品質対応のためダブルが発売されたと推測されます。
日本家庭紙工業会によると、日本で最初にトイレットペーパーが作られたのは大正後期だったそうです。とはいえ、当時の日本には水洗トイレが少なく細々と作られていた状況で、戦時中には軍艦に積まれる軍需物資としても生産されていました。戦後、占領軍からの特需や水洗トイレの普及もあり、1949年に本格的な生産をいち早く始めたのが静岡県のメーカーだったといいます。
こうしてさまざまなメーカーがトイレットペーパーの製造に参入した結果、差別化を図るためにダブルが誕生したようです。現在では、パルプもの・古紙ものの両方にシングルとダブルが存在しています。
ちなみに、2020年の日本家庭紙工業会の調査によると、消費量の割合はシングルが約45%、ダブルが約55%とのこと。ダブルの方がやや多めですが、本当に人気を二分していることがわかります。
▲ダブルの方がやや多い!
シングルとダブルは紙も違う?
日本製紙クレシアの「スコッティ フラワーパック 1.5倍長持ち 8ロール」を比較してみると、シングルは1ロールあたり75m、ダブルは37.5mとなっています。
単純に、シングルはダブルの2倍の長さですね。長さ以外にも違いがあるのでしょうか。早速聞いてみましょう。
ずばり、シングルとダブルの違いは何ですか?
日本製紙クレシア担当者:シングル・ダブルの 1 枚は同じではありません。ダブルは、シングルよりも薄い紙を 2 枚重ねにしています。さらに、紙には表と裏があり、ダブルはなめらかな面が上下どちらにも(外側に)なるように重ねています。単純に巻きm数でいうとシングルの方が長いですが、お使いになる方の使用感の好みで選んでいただいております。
シングル1枚とダブル1枚は違うのですね。たしかに、シングルとダブルでは肌触りが異なっているように感じていましたが……。
▲「クリネックス コンパクト」のシングル(左)とダブル(右)。好みによって使用感を選べるぞ!(日本製紙クレシア提供)
では、シングルとダブルでは原料も違うのでしょうか。
日本製紙クレシア担当者:シングルとダブルに関しまして、製品の品質によってN材(針葉樹)とL材(広葉樹)の配合を変えています。
N材とは、ドイツ語のNadelholz(針葉樹材)から、針葉樹パルプのこと。繊維が長く、紙の強度を保たせることが得意です。L材とは、ドイツ語のLaubholz(広葉樹材)から、広葉樹パルプのこと。繊維が細く短く、用紙の地合を整えるために用いられます。
原料の配合によって、やわらかさや肌触りを変えていたのですね。
1人あたり1年で52ロール使っている!
オイルショックやコロナ禍などで、トイレットペーパーはたびたび買い占めの対象となってきました。昨年(2020年)、買い占めが起こった際に日本家庭紙工業会が公表した数字によると、日本人は1人あたり1週間に1ロール消費しているそうです。この数字を知っていれば、必要なときに必要な分だけ買うこともしやすいですね。
とはいえ、1年間で1人あたり52ロールのトイレットペーパーに触れていると思うと、少し意識が変わりますね。
▲こんなに使っていたとは!
これからはトイレットペーパーにもこだわっていきたい、そう思いました。お気に入りのトイレットペーパーを見つけることが当分の目標になりそうです。
【今日の1問】
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