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東大が求めている「読み方」

ここからは、東大で出題された文章からいくつかの文を抜き出して、解答に求められるポイントを考えてみましょう。

ここで注目するポイントは大きく「付け加えるな!」「共感するな!」の二つです。

付け加えるな! 求められているのは、あなたの知識ではない

まずは、出題された文章の冒頭。たいていの場合、冒頭にはその文章全体で何について論じるのか、「問題提起」をする文章が配置されています。

与えられた困難を人間の力で解決しようとして営まれるテクノロジーには、問題を自ら作り出し、それをまた新たな技術の開発によって解決しようとするというかたちで自己展開していく傾向が、本質的に宿っているように私には思われる。[・・・中略・・・]東日本大震災の直後稼働を停止した浜岡原発に対して、中部電力が海抜二二メートルの防波堤を築くことによって、「安全審査」を受けようとしているというニュースに接したときも、同じ思いがリフレインするとともに、こうした展開にはたして終わりがあるのだろうかという気がした。技術開発の展開が無限に続くとは、たしかにいい切れない。次のステージになにが起こるのか、当の専門家自身が予測不可能なのだから、先のことは誰にも見えないというべきだろう。けれども科学技術の展開には、人間の営みでありながら、有無をいわせず人間をどこまでも牽引(けんいん)していく不気味なところがある

下線を引いた文章が、この問題の(一)で「どういうことか、説明せよ」と問われている部分です。つまり、受験生は下線の引かれた部分が「どういう内容の文章なのか、その意味を説明しなさい」と問われているわけですね。

ここで引用したのは、問題文の最初の段落の6割くらいなんですが、実はもうここに引用している部分で解答のほとんどを作ることができるんです。

ざっくり言うと、科学は人間が問題を解決するための手段です。それなのに、科学がまた新たな問題を作り出して、人間がその問題を解決するために科学を発展させる……というふうになると、科学がどういうふうに発展していくかの主導権を握っているのが、人間ではなく科学そのものだ、手段であるはずの科学が人間をむしろ操っているように見える、というのがこの文章の核となる内容ですね。

冒頭の一文「与えられた〜思われる」と下線の引かれた文章が大体同じ内容について述べられた文章ですから(と、言い切れるかどうか、そこに読解力の差が出るのですが……)、最初の一文の要素を核にすれば、下線が引かれた部分の意味が分かるよ、という感じで解答を書いてやればいいわけです。

そして、ここで注意してほしいのが次の点です。さきほどざっくりと書いた要約は、一文目に書いてあることのほとんど言い換えでしかない、ということです。つまり、東大の入試問題を解くときに、文法や語彙の知識は必要だったとしても、関連したテーマについてあなたが具体的な知識を付け加える必要は一切ない、ということです。

たしかに、具体例として原発の話が出ていたり、この後の部分では不妊治療の話が出たりします。ですが、科学技術の展開の具体例をあなたが他にも出して説明したりすることは一切必要ありません。

「どういうことか」と聞かれている場合には、下線が引かれている文章と内容的にイコールになるもので、よりわかりやすく書いてやる、というのが原則です。そのときに使う素材は、あなたのなかにあるものではありません。あくまで、文章のなかにあるものです。

どうして文章のなかにあるものを重視しなければいけないのでしょうか。聞かれていることについて「正しい」答えを返せばオリジナルな内容でもいいのじゃないか。そう思う方もいるかもしれません。しかし、採点者は出題した文章に書かれていない内容で答えられたときに「採点基準」を作ることが困難になります。

それは、何が「正しい」答えかどうかは立場や見方によって変化するからです。間違ってなさそうな答えが書いてあっても、それをいろんな人が自分流の書き方で書いてきたら、どれにより点数をあげるのか、判断が難しくなってしまいます。

そして、それは「文章を適切に読む」ことではなくて、その先の「議論」の次元(つまりは、大学に入った後に学問としてやるべきこと)に属することなのです。

だから、問題で問われるのも、「正しい」答えのようなものではなくて、この文章のなかで、この文がどういうことを意味しているのか、それをしっかり読めていますか? という確認になるのですね。

以上が、一つめのポイント「付け加えるな!」です。

次のページでは、もう一つの「共感するな!」というポイントについて考えてみましょう。2/4

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QuizKnock編集部

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