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コジマです。

関西に住んでいると、東京に出るときはどうしても新幹線のお世話になる。京都を出て東京に着くまで2時間ちょっとで着くのだからすごい時代だ。

50年前は4時間かかった!

東海道新幹線が開業したのは1964年。開業当時、東京-新大阪間の所要時間は4時間だった。単純に計算をすればだいたい半分の時間で移動できるようになっているということになる。

その要因のひとつが新幹線の高速化。開業時に走っていた0系の最高速度が210km/hなのに対し、現在運行中のN700系の最高速度は300km/h。実に90km/hもの速度向上を達成している。

最高速度210km/hの0系と最高速度300km/hのN700系

ところで、こうして画像を比較してみると、車両の先端、いわゆる「鼻」が、時代とともに伸びていることが見て取れる。世の中の速い乗り物……スポーツカーやジェット機もまた流線型の機体をしているし、機体がシャープになることは高速化につきものなのだろう。

だが、長い鼻が高速化に伴うもの、ということは知っていても、鼻を作ることで具体的にどのような効果があるのだろうか。シャープにすれば速くなる、という単純なものなのだろうか。

調べてみると、そこには「トンネル微気圧波」という現象が関係していた。

鼻は騒音を防ぐためにある

列車がトンネルに突入すると、その瞬間にトンネル内部の空気が圧縮される。圧縮された空気は波となってトンネル内部を伝わり、出口まで到達する。この波をトンネル微気圧波といい、突入するときの速さが大きいほどトンネル微気圧波のエネルギーは大きくなる。

この現象の何が問題かというと、トンネル微気圧波がトンネル出口から出たときの衝撃が大きな音を発生させるのである。周囲の住民に騒音被害があってはいけないから、新幹線を走らせる上ではトンネル微気圧波の低減が重要な問題となり、騒音の増加を無視してむやみにスピードを上げることはできない

トンネルに勢いよく列車が突入するとき、先頭車両の先端が尖っているほうが、平面の場合よりも押し出す空気が少なくなる、というのは直感的にも分かると思う。長い鼻は、そんなトンネル微気圧波に対する軽減策のひとつなのだ。

むやみに伸ばすのも考えもの

ただ、「トンネル微気圧波を小さくする」という目標だけを追い求めて鼻をどんどん伸ばすと、今度は座席に割り当てられるスペースが少なくなってしまう。あちらが立てばこちらが立たず……。騒音軽減と座席スペースの確保をうまく両立できる鼻の形状は、実験やシミュレーションを通して試行錯誤的に模索されている。

N700-TOP-3.JPG N700系の先端形状(エアロ・ダブルウィング)は、遺伝的アルゴリズムという機械学習的手法で生まれたことで知られている。(画像:Wikipediaより

もちろん、鼻を改良することで空気抵抗が減り、スピードが上がる面もあるだろうが、「長い鼻がスピードを上げる」というよりは「スピードを上げると大きくなる騒音を長い鼻で抑えている」というのが正しいようだ。

参考文献

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この記事を書いた人

コジマ

京都大学大学院情報学研究科卒(2020年3月)※現在、新規の執筆は行っていません/Twitter→@KojimaQK

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