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日本精工株式会社(NSK)

論文が採択されるまで……必要なのは「仲間意識」と「根気」

論文はどういう手順を経て採択までいくんでしょうか?
そうですね……大体こんな流れですね。
▲論文ができるまでの流れ(白砂さんの分野の場合)
うわ、いろんな手順を踏んでいるんですね……!
著者が論文を執筆した後は、学術雑誌の編集者が「担当編集者」になり、最低限のチェックを行います。これが「事前チェック」で、ここで弾かれる……門前払いを食うこともあります。むしろしょっちゅうですね。そうなると1からやり直しで、別の学術雑誌に出すことになります。
弾かれる時は投稿してから2、3日かかることが多いんですが、僕は最短で寝て起きたら不採択になっていたこともありますよ。
ほんの数時間で!? せっかくがんばって書いても、そんなすぐに却下されるなんて心が折れそうですね……。
▲同じ研究論文で5、6回弾かれたこともあるんだとか
これをクリアして、査読と呼ばれる段階に入ります。論文の評価をする「査読者」に論文の審査や評価をしてもらう段階です。
ここでやっと論文の中身をしっかり見てもらえるわけですね。
査読が終わったら、編集者に論文が返送されるので、著者は論文の修正や回答書の作成を行います。返ってきた論文には、10個とか20個とか、修正要求がとにかくたくさんついています。著者はそれに全部対応して、編集者へ再投稿をします。
全部ということは、ひとつひとつですか?
そうです。これが結構骨が折れるんですよね。「ご指摘ありがとうございます」「こう直しました」「この点については、こう考えてこの表現にしました」といったポイントを押さえながら書くんです。ときには英語で返すこともあって……
それは……査読者にも、編集者にも、共同研究者にも、とにかくいろいろな方面に気を遣う必要がありそうですね……。
本当にその通りなんですよね。かなり大変な作業なので、研究者のなかには「立ちはだかる敵を倒すんだ!」みたいなモードでコメントを返す人もいますよ。
でも、僕は編集者や査読者も一緒に論文をブラッシュアップしていく仲間だと思っています。これは、学生時代に指導教員から教わって以来、自分で大切にしている考え方ですね。
▲編集者や査読者は、良い論文を出すための仲間
ここまでで、修正点がなくなったところでようやく採択(accept)というわけですね。
いや、油断は禁物です。このあとキックされることもあります
まだあるんですか……!? 論文が出るまでって、本当に大変なんですね……。
修正と査読を繰り返して、担当編集者がOKを出したら、ここでようやく採択、という流れです。
やっとだ……。ちなみに、ここまでどれくらいかかるんですか?
今回は9月に投稿して、2月に採択されました。投稿から採択までが半年以内に収まったのは、けっこうスムーズに行った方です。最初の段階から好意的なコメントを寄せてもらえて、運が良かったですね。
半年で早い方……! 長いとどれくらいかかるんですか?
ときには年単位でかかりますよ。
年単位! 途方もない期間ですね。根気が必要そう……。
▲研究は、とにかく根気強さが求められる

「問題文」は「question sentence」じゃない?

今回の論文の採択後、後続の英語論文も書いていたのですが……そのときに、英語の校正者の方からも指摘があって。
英語ですか。
論文を投稿する直前なんですけど……校正者の方は「ネイティブから見ると不自然な表現の修正」をしてくれたんですが、“quiz”や「問題文」という単語の扱いについて指摘をされましたね。
たとえば、どんな指摘をされたんですか?
そうですね……「問題は“sentence”ではなく“prompt”だ」とか。あとは「クイズはcultureじゃない、entertainmentで十分だ」といった指摘もありました。
ただ研究の記録を書くだけではなく、世界中の人にわかりやすい文章で伝える必要もあるんですね。本当に大変だ……。

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この記事を書いた人

あさぬま

好きなひらがなは「ぬ」。QuizKnock編集部で記事の編集をしています。人の話を聞くことが大好きです。

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