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はじめまして! ジミー・ジーンと申します。QuizKnockでは主に動画やWebの裏方として働いています。

8年前に初めてクイズ大会に参加して以来、私は何十万問というクイズと出会ってきました。その中でも私が愛してやまないのが、『地下クイズ』というジャンルです。

「地下クイズ」とは?

一般的なクイズを「オモテのクイズ」と呼ぶならば、地下クイズは「ウラのクイズ」。平たく言うと、アンダーグラウンドな問題がたくさん出題されるジャンルです。

UMA(未確認生物)や超常現象、都市伝説から、この場で書くのがはばかられるような題材まで、いろいろな事柄に関する問題が出ます。

▲「地下クイズ」の問題例。自己責任でご視聴ください

私の「地下」との出会いは幼稚園の頃、ビデオテープに録画されていた、超能力者のユリ・ゲラーが出演するテレビ番組を見たときのことでした。

指先に念を込め、いとも簡単にスプーンをへし折る彼の姿を見て、私も家じゅうのスプーンをグニャグニャにして、超能力者気分を味わったものでした(今思い返せば、曲げることができたのは細いスプーンばかりです)。

「地上」での挫折

そんな私は、大学入学からしばらくして地下クイズのとりこになりました。とはいっても、学生の間の軸足は「地上」のクイズ大会。特に、日本最大級の学生向け競技クイズ大会「abc」での活躍を目指して、日々クイズに取り組んでいました。

しかし、学生クイズ人生最大の目標だった「abc」は、1つの誤答をきっかけに自滅するという、とてもほろ苦い終わり方でした。

その4カ月後、ならば地下クイズでリベンジだと意気込んで出演したテレビ番組『令和最初の地下クイズ王決定戦』も、最後の1問に泣いて準優勝。結果を残したかった大会で立て続けに悔しい負け方をし、モヤモヤとした不完全燃焼感を抱えながらなんとなく毎日を過ごしていました。

▲右から2番目の席、仮面をつけているのが筆者。リベンジを狙うも、優勝には届かず

「このままじゃダメだ、今年は絶対に地下クイズで結果を出す1年にする」。翌年の「一年の計」はそんな内容でした。

「地下」日本一へ。闇の道をゆく

そこで私が目標に据えたのが「WxY」での優勝。

地下クイズの猛者が集まる大会で、言うなれば地下クイズ版の「abc」です。しかも今回の大会は、ルールまで「abc」とまるっきり一緒です。「abc」でも、地下クイズでも悔しい思いをしてきた私は、両方ひっくるめて、リベンジするにはここで優勝するしかない!と決意しました。

以来、私の生活は徐々に「地下」めいてきました。

部屋のいたるところに恐ろしげなタイトルの本やうろんな見た目の雑誌が積まれていき、ブラウザにも物騒な内容のタブが増殖していきます。YouTubeにおすすめされる動画も、気がついたら人様に見せられないようなものばかりになりました。

▲少しでも「これは役立つかも」と思った本は手に取りました

不安になったときの心の支えになったのは、周りの人からもらった応援や地下知識。ゲームに詳しい先輩は地下クイズで出そうなゲームについて、映画に詳しい先輩は地下クイズで出そうな映画について......といった具合に、いろいろな人にはげましの言葉をかけられながら、たくさんのことを教えてもらいました。

大会の直前期には単語帳アプリで毎日3,000個のメモに目を通したり、当日を意識して作った約800問のクイズを対策会に持っていったりと、abcのときよりも高い熱量で勉強を進めました。勉強の量と勉強にかけた時間は自然と自信につながり、「私が最強だ」という心持ちで当日を迎えました。

奇しくも、大会前日に乗った新幹線の座席は「ひかり666号の13号車」。「地下」と縁の深いオカルティックな数字の並びを引き当て、運命的なものを感じずにはいられませんでした。

▲大会当日もお守り代わりにして、肌身離さず持ち歩きました

「できすぎ」な1問で……

緊張のあまり当日はすっかり寝不足だったものの、筆記ラウンドは全体2位。「今日はいけるんじゃないか」という気持ちで、その後の早押しラウンドに臨むことができました。

早押しラウンドでは一度、焦るあまり誤答をし、学生時代の「abc」を思い出してしまうこともありました。そのとき助けてくれたのは、同期と先輩に「これは出題されそう」だと叩き込まれた知識。

2人の顔を思い浮かべながらその1問……ここには書けないようなタイトルの漫画『××××☆××××』(伏せ字)を正解してからというもの、勢いそのままに決勝まで勝ち進むことができました。

▲(画像はイメージです)

決勝でも、数日前の対策会で出題してもらった問題から、小さいころに見ていたニュースの内容まで、人生で触れてきたさまざまな情報が正解につながっていきました。自分の人生のあらゆる「地下」要素、日の目を見ると思ってもいなかった要素が、クイズのためにフル動員されていく感覚です。

自分のペースでクイズを続けてたどりついた、「あと1問で優勝」という場面

問題。

母方の親類に精神科医のフロイトがいる、かつて一世を風靡したイスラエル生まれの……

思い浮かんだ答えはひとつだけでした。

母方の親類にフロイトがいるということは、「地上」のクイズで耳にした記憶があったような、なかったような。でも、イスラエル生まれということは、自分で問題を作ったときに確認したことがあります。そして何より、この答えは私の「地下」の原体験です。

なんだかできすぎだな、と思いながら、私は思った答えを口にしました。

「ユリ・ゲラー!!!」

「地下」にあった、最高の瞬間

応援してくれた人たちに最高の結果で恩返しできたこと、何年も一緒に地下クイズをやってきた先輩たちの前で優勝できたこと、目標への努力がやっと報われたこと……。正解の音が鳴った瞬間、いろいろな「嬉しい」気持ちが混ざり合い、ステージ上で応援してくれていた先輩2人と抱き合って泣いてしまいました。後にも先にも、クイズで嬉し泣きしたのはこのときだけです。

ジャンル限定の(しかも地下クイズの!)大会なのに、「人生の全てを出し切った」という感覚も湧いていました。

今後はユリ・ゲラーの姿を見るたび、この1日のことを思い出すのだと思います。実際、先日は『月刊ムー』の裏表紙に載るユリ・ゲラーの写真を見た瞬間、優勝した瞬間の記憶が鮮烈に蘇りました。

▲この号の裏表紙で、ザ・オカルトな広告に載っていた氏。昔テレビで見たときと変わりない眼力でした

ユリ・ゲラーには、「あなたのおかげで、いろいろなことが報われました」と直接お礼を言いたいくらいです。でも、彼は超能力者。私の感謝の気持ちはもう伝わっているんじゃないかな......そう思うことにします。


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