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はじめまして! 新しくライターになりました、まちょです。大学院で薬学を専攻しています。

今年の夏も暑かったですね。私も虫刺されが気になって仕方ありませんでした。
「虫刺され」というと蚊をイメージする人は多いと思いますが、ふと考えてみると、「刺す」という言葉のわりに蚊に刺されている時って別に痛みも何も感じませんよね?

これは偶然でも何でもなく、彼らは彼らなりに、気づかれないように刺しているのです。なにせ、気づかれようものなら死に直結しうるのですから。血を吸っているあの瞬間、彼らは隙だらけです。むしろ隙しかないのです。

では、どうして私たちは蚊に刺された時に痛みを感じないのでしょうか。理由を大きく2つに分けて解説していきます。

理由① 針がとっても細い!

蚊が痛みを感じさせずに血を吸える秘密。その理由のひとつは「針の細さ」にあります。

蚊の針は、6本の細い針が束になった構造をしており、直径約0.06~0.07mmといわれています。対して、インフルエンザワクチンなどの予防接種で使う針の太さは0.5mm以上で、蚊の針がいかに細いかがわかるかと思います。

では、細いと何がいいかと言うと、「痛点」を回避しやすくなるのです。皮膚には痛点と呼ばれる感覚点が散在していて、その痛点に存在する「センサー」が「痛み刺激」を感知します。簡単な話、針が細いほど痛点に当たらない可能性が高くなるわけです。

理由② 痛み止めを流し込んでいる!?

2021年に生理学研究所、関西大学、富山大学の研究者らが共同で興味深い論文を発表しました。それは蚊の唾液には痛み止めが含まれている可能性があるというものです。

前述の通り、痛点には「センサー」が存在しています。具体的には、TRP(トリップ)チャネルなどのセンサーが刺激の感知に関与しているのですが、なんと蚊の唾液に、TRPV1やTRPA1チャネルの働きを抑える物質が含まれる可能性があることが判明しました。つまり、蚊の放出する痛み止めによって、痛点で針による刺激が感知できなくなり、痛みが軽減される、というのです。

また、同じ論文では、マウスの唾液も似たような効果を持つことが示されています。
もしかすると、私たちヒトを含む多くの動物が傷口をなめるのも、唾液による鎮痛が理由のひとつだったりするのかもしれませんね。

ちなみに、唐辛子はTRPV1、わさびはTRPA1チャネルを活性化させることで辛みを起こしています。2021年のノーベル生理学・医学賞は、まさにこのTRPV1チャネルの役割の解明についてのものでした。こういった研究から痛みと辛みは本質的には同じ感覚であることがわかってきたのです。

蚊の針が医療に貢献する?

このように、蚊は様々な側面から痛みを感じさせないように工夫していることがわかったかと思います。

現在は蚊の針にヒントを得た「痛くない注射針」を開発する研究も進んでいるそうです(こういった動きをバイオミメティクスと言います)。そんな注射針ができたら夢のようですよね!


我々からすると憎たらしい蚊ですが、このような戦略をもって、自分よりもはるかに巨大な生物に挑み、気づかれる恐怖と闘いながら血を吸うその健気な姿を想像してみてください。どうでしょう、少し愛おしく感じてきませんか?

では、次の記事でお会いしましょう。

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この記事を書いた人

まちょ

博士後期課程のまちょです。専門は薬学です。薬学は生物・物理・化学すべてを網羅する学問ですが、分かりやすくかつ興味をもってもらえるような記事を書きたいです!

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