とにかくフィジカルがタフ!
▲リカオンはこんな動物!
狩りには
▲リカオンは新鮮な肉を追求しすぎて、獲物が生きたまま腹を裂いてむさぼることから「残虐な狩りをする」という謂れもある(画像提供:富士サファリパーク)
チーターは時速およそ100kmで走れますが、ほんの数百mでバテてしまいます。チーターを含むネコ科(ライオンを除く)は待ち伏せや短期決戦型なのに対して、イヌ科は仲間と連携しながら執拗に獲物を追跡します。この執念深く獲物を追い回すことができるフィジカルが、成功率の高さのひとつの要因といえるでしょう。
▲顎の力も強力。私は動物園で録音した「リカオンがエサの骨肉を咀嚼する音」を聴きながら、入眠することがある(画像提供:富士サファリパーク)
また、リカオンはオオカミと比べても動きが俊敏でキレがあります。この機敏なステップで獲物や外敵を翻弄することも得意です。(動物園でリカオンの走り回る姿を見ても、とにかく素早い! 『トムとジェリー』並みにヌルヌル追いかけっこすることがある)
▲学名:Lycaon pictusの「pictus」とは「彩られた」という意味。からだの迷彩柄はなんともクールでシャレオツ。ぬいぐるみにしても映える
まるで「ホワイト企業」な組織づくり
いくら身体能力が高いといっても、リカオンは1頭だけでは非常に弱い存在です。しかし、群れで連携して行動することで、獲物を高確率で仕留め、ライオンやハイエナなどの外敵も追い払うことができる無敵の獣と化すのです。
リカオンなどイヌ科の動物は、よく鳴き声やボディランゲージでコミュニケーションをとります。しかし、リカオンの群れの連携力の強さはそれだけにとどまりません。人間に引けを取らない「社会性」が発達しています。
教育の手厚さ〜率先して子どもの面倒を見る〜
リカオンは自立できるようになる生後14カ月あたりまで、おとなから大切に養育されます。おとなたちによって狩りが成功すると、現場で最初にお肉をあずかるのは子どもたちです。子どもたちは群れの未来を担う存在だからこそ、群れで一丸となって世話をするのです。なんとも先進的ですね。
▲このお肉はサバンナの未来を担うみなさんへの期待を込め、無償で支給されています
子どもたちはじゃれあいながらすくすくと成長すると、群れごとの独自の狩りの技術が継承される習性があるともいわれています。
福利厚生も充実〜弱き者に手を差し伸べる〜
リカオンの群れは基本的にとても友好的で、お互いに鼻を近づけあって挨拶したり、スキンシップしたりすることで争いを回避しているともいわれています。
たとえば、過酷な自然界では弱ったりケガをしたりするメンバーが現れると、狩りから帰ってきたメンバーがお肉を吐き戻して与えるなど、リカオンの群れは積極的にサポートをする姿が観察されています。たとえ生き残るのに不利だとしても仲間をいたわるという強い絆がうかがえますね。
▲誰も取り残されない社会。SDGsのパイオニアかもしれない
民主主義〜個々の声に耳を傾ける〜
なんと、リカオンは狩りに行くタイミングを多数決で決めているという報告があります。
リカオンは狩りの前に集合(ラリー)すると、何体かのメンバーがくしゃみをするという行動が観察されました。このくしゃみの数が多いほど狩りに出る可能性が高いことから、くしゃみによって合意形成をしているという見解があります。高度なコミュニケーション能力を持ったリカオンだからこそできる意思疎通といえるでしょう。これぞ真の「王」の器……!
▲リカオンが王政をしく社会で生活したいと思いませんか?
みなさんの思う「百獣の王」は誰ですか?
というわけで私は「百獣の王」にふさわしいのはリカオン!……と声高に推薦します。ここまで読んで「百獣の王にふさわしい動物は他にいる!」と異を唱えたい方はぜひハッシュタグ「#シン百獣の王」で教えてください。理想の王国を築きましょう。
▲おまけ。身を寄せ合うリカオン。べらぼうにかわいい(画像提供:富士サファリパーク)
サムネイル画像提供:富士サファリパーク
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