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「肩たたき券」を有効にする方法もある

ちなみに、特別代理人を立てずに契約した場合でも、子どもが成人してから「その肩たたき券、有効で良いよ」と追認すれば、契約は有効なものとなります。もし追認しなければ、当然契約は効力を有しません。
契約が有効になるにはあくまでも成人した人間の意志が必要で、子どもだけの判断で有効な契約はできないんですね。

大人になって有効性を追認した場合は、どれくらいの時間、回数肩たたきをするのがよいでしょうか?
これまでの親への感謝の気持ちが続く限り、肩たたきをすればいいと思いますが、法的には、先ほどご説明したとおり、準委任契約なのでいつでも解除ができます。

ですので、肩たたきをしていて疲れてきたにもかかわらず、もっと肩たたきをしてくれと頼まれた場合には、すぐに肩たたき券に関する契約を解除すると親に伝えて、肩たたきをやめればいいと思います。

肩たたき券の有効性をめぐって裁判は起こせるか?

ちなみに、親が無理やり肩たたき券を使用しようとした場合は、裁判を起こすことも可能なんでしょうか?
はい、裁判を起こすこと自体は可能だと思いますよ。
そうなんですね。てっきり無効な契約の場合は初めから裁判も起こらないのかと思っていました。
実は法律というのは、初めから事例に応じた正解が決まっているわけではなく、いわば非常に動的なものなんです。

ですから、肩たたき券の有効性について裁判を起こす場合は、親と子が互いの論拠となる条文を主張し、その解釈を擦り合わせて結論を出すことになるでしょうね。
なるほど、型にはまった答えが決まっているわけではないんですね。
はい。あくまでも、もしも裁判になればほぼ間違いなく肩たたき券は無効と判断される、ということですね。

ただ、訴訟には手間もお金もかかるため、勝てるとわかっていても実際に裁判に発展することはまずないでしょう。
じゃあ、さすがに過去に「肩たたき券」の判例はないんですね。
肩たたき券に関する裁判例はありませんが……、肩たたき、いわゆる解雇に関する判例は多数ありますね
なるほど……。

「契約」は恐れすぎず、困ったら相談を

肩たたき券って、実はめちゃくちゃ複雑な制約に縛られてたんですね。友達との約束に対してもちょっと慎重になっちゃいそうです。
いやいや、そんなに恐れる必要はないと思いますよ。そもそも「契約」とは、川副さんが思っている以上に自由なものなんです。
えっ、そうなんですか?
はい。そもそも契約とは、基本的には自由に規定して結べるものです。法律に定めのない内容であっても、互いの合意の下で契約に盛り込まれた内容であれば有効となります。
そうだったんですか! 先ほどの準委任契約のお話で、マッサージ店がキャンセル権を排除していたのも、そんな自由な契約の一例だったんですね。
そうですね。ただしそのなかでも、「強行規定」と呼ばれる、最低限守らなければいけない決まりはあります。肩たたき券の例でお話しした未成年者の契約も、そんな基準によって守られています。
なるほど。基本的に契約は自由ではあるものの、あまりにも不当な契約が結ばれないように規定が定められているんですね。
ときどき未成年の方が関わる契約トラブルの事例を耳にしますが、実はきちんと対処すれば被害を免れられることも多くあります。困ったら迷わず身近な法律の専門家に相談してみてほしいですね。
何事もまずは相談ですね。

それでも「肩たたき券」は作られ続ける

今回の取材を通して、肩たたき券のように本当は法的に有効ではないけれど裁判にはなっていない事例って、実は日常にあふれているような気がしてきました。
おっしゃるとおり、よく見れば法的な根拠のない慣習は日常生活にたくさんあると思いますよ。

そもそも、法律には行為の正しさが争議の的となった際の判断基準という側面がありますから、実際の社会規範が必ずしも全て法律に則っているわけではないのかもしれませんね。
法律で規定がなくても、お互いの気持ちによって成り立つ行為もあるんですね。
肩たたき券は、親と子の思いやりの形ですからね。法律を引用して目くじらを立てるばかりではなく、親への感謝を忘れないようにしたいものですね。

▲肩たたきは感謝の気持ち

最後に、もしも水田さんが親から昔の肩たたき券を渡されたら、肩たたきをしてあげますか?
本当に私の肩たたき券か確認させてくれ」と言って一度持って帰りますね。その後、代替的に私の子どもに肩たたきをさせる和解契約を結ぶと思います。

まぁ、その和解契約も無効なんですけどね(笑)。
意地でも自分はしないんですね(笑)。

ありがとうございました!
こちらこそありがとうございました。

取材を終えて

「肩たたき券って断れないの?」という無粋な疑問から始まった取材でしたが、気がつけばいつの間にか親への感謝の気持ちを思い出していました。今度実家に帰ったら、久しぶりに肩たたきをしてあげようかな。

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この記事を書いた人

川副 啓太

京都大学文学部4年の川副です。日々の一コマが少し楽しくなるようなクイズをお届けできればと思います。よろしくお願いします!

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