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「学ぶこと」「知ること」を楽しいものに変えるような作品を発表し続けている、デザイナーのみっけさん。

▲「知りたい」をデザイン

WebメディアQuizKnockでは、「みっけのクイズパレット」と題して、そのデザインの裏側にある「ものの伝え方」に迫る連載をお届けしています。

▲前回の記事はこちら!

今回のテーマは、「デザインとしての文字」。私達が普段何気なく見ている文字も、実は「何かを伝えるためにデザインされたもの」かもしれない……そんなテーマでお届けします。


文:みっけ

私にとってデザインとは、「何かを伝えるためのもの」です。何かを伝えたくて作られたなら、それはデザインされています。

そんな「デザイン」はさまざまなジャンルに分けられます。

たとえば、「プロダクトデザイン」といえば立体物のデザインです。雑貨や家具、家電など、大小問わず製品のデザインを指します。

逆に「グラフィックデザイン」は平面のデザインです。広告や商品パッケージ、ロゴデザインなどがそれにあたります。私の理論で言えば、「伝えるために作られた平面のもの」であれば「グラフィックデザイン」と呼べるでしょう。

だとしたら、あなたが今読んでいるこの「文字」も、デザインされているといえるのではないでしょうか?

文字は人に何かを伝えるために生まれてきたのだから、きっとそうだと思います。連載第2回は、文字そのものを「グラフィックデザイン」として見たらどうなるのか、そんなテーマでお届けします!

視点を変える、伝わり方が変わる

文字、特に日本語において異彩を放つのは「漢字」でしょう。

母国語なのに、きっと一生かけても出会わない未知の姿がどこかに潜んでいる…もどかしいような、ワクワクするような、不思議な存在です。
デザインという視点においても、ひらがなやカタカナにはない魅力が詰まっています。

▲丁

丁。なんてシンプルな漢字でしょう。
どんなに急いで書いてもどうにか読めそうな、頼もしい漢字ですね。

▲丁の成り立ち?

辞書で調べてみると、最初はくぎの頭だったものが、くぎを横から見た形に変わり、丁という漢字が生まれたとの話がありました(最近では、釘ではなく「人の頭頂部」を象ったものではないか、との説が有力なようですが)。

▲なるほど

ただ、最初の姿を見て「くぎを上から見た図だ!」と思う人はどれだけいるでしょうか? 横から見た姿の方が、くぎらしいですよね。
見方を変えてデザインしてみる」というのは、デザイナーとして大事な工程のひとつです。

例えば、クライアント(依頼者)から「桜」をモチーフにマークを作る依頼があったとします。
桜といえばこの形!というのは誰しもなんとなくイメージがあると思いますが、そこをぐっと堪えて、さまざまな姿を想像し、調べ、描き起こします

▲桜をモチーフにしたマークの案

時期を変えた桜、角度を変えた桜、種類を変えた見た桜、表現を変えた桜……。意外といろんなパターンがあることに気付きます。

あまり奇をてらいすぎると奇抜になり、シンプルすぎると他と被る。クライアントがマークで「何を伝えたいか」をヒアリングしながら案を絞っていきます。

丁という漢字も、こうやってくぎに思いを馳せながら、「どうすればこの漢字の意味が伝わるか」、考えて作られたデザインなのかもしれません。

伝えたいことは人それぞれ

▲顳(読み:ショウ・ジョウ)

「顳顬(こめかみ)」の、「顳」です。調べてもこめかみをあらわす以外には使われていない漢字のようでした。私はこの漢字にひとつ疑問があるのです。

耳って3つも必要でしょうか?

確かにこめかみって耳の上にあるんですけど……左側にギチギチに3つ押し込むほど必要でしょうか?

こめかみということばは読んで字のごとく「米を噛むと動くところ」からきています。どちらかというと口とか顎の方が親交が深そうです。

デザイナーは言います。

こめかみという漢字に使いますので、口や顎…お米なんかをモチーフにしてもいいかもしれません
クライアントは言います。
耳を入れてください。できるだけ多く
耳ですか?
この子のアイデンティティは耳の近くにあることです。それを強く表現してください
はい……

伝えたいことは人それぞれです。

好きな漢字のデザイン

ここからは、漢字の見た目、つまりデザインそのものについての個人的な好みのお話です。

▲鬚(読み:シュ・ス・ひげ・あごひげ)

かっこよくないですか?構図が。

4分割して互い違いになってるようなデザインです。

似ているパーツが位置を反転するように並んでいる……少年漫画の最終巻の表紙なんかにありそうです。主人公とライバルって正反対なとこあるけど結局似た物同士だよね、みたいな……エモいですね。

あと、デザイナーとして嬉しいパーツといえば「彡(さんづくり)」です。
「丶(てん)」とかもそうなんですが、シンプルな線や点の連続はモチーフを入れやすく大変便利です。

▲「参宿」の文字デザイン

▲「袖の時雨」の文字デザイン

私の過去デザインなんですが、「参宿」のさんづくりは流れ星、「袖の時雨」の点はを取り入れています。このふたつはこういうワンポイントにちょうどいいんですよね! ロゴデザインの依頼でこのパーツがあるとテンションが上がります。

デザイナーが恐れる漢字

▲鬮(読み:キュウ・くじ)

恐ろしいデザインです。画がひしめき合ってます。

このデザインを考えたのは三徹明けとかでしょうか?正気とは思えません。普通に書いてもしんどそうですが、デザインとしても非常に困ります

上の画像を見ても分かるように、一番外側の縦画と内側の縦画で線幅をかなり変えているんですよね。線幅を調整しなければ小さなパーツが潰れてしまうからです。

このように、画数が多い字や線幅が太い字体の場合、微調整しなければいけないのがなかなか大変なわけです。ただ、デザインだからできる「逃げ道」はあります。

▲「フェルマーの最終定理」の文字デザイン

私の過去デザインです。

「最終定理」は「定」以外のパーツをかなり省略しています。テストではバツですがデザインとしてはアリな表現です。線を太くしたい時や見栄えをよくしたい時によくやる手段ですね。

この程度の画数でも省略しないといけないのに、「」だったらと思うと……ゾッとします。

いかがでしたでしょうか? 漢字ってデザインされているんだな、と思っていただければ嬉しいです。それが私の伝えたかったことです。

では最後にクイズを1問!

筆者プロフィール

みっけ

デザインが好きな会社員。

知りたいこと、楽しいことを作品にしてSNSに投稿中。

8/28(月)には、眺めるだけで楽しく学べる『知りたいこと図鑑』がKADOKAWAより発売。
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

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この記事を書いた人

QuizKnock編集部

身の回りの気になることをクイズでお伝えいたします。

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