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日本精工株式会社(NSK)

幽霊を「研究する」ということ

田部井さん 私が怪談を必要に応じて引き出すことができるのは、これのおかげですね。

――このファイルは何でしょう?

田部井さん 私が研究生活の中で蒐集しゅうしゅうした怪奇譚かいきたんをまとめてアーカイブしたものです。古代の文献から最近の怪談まで全部で2万個ほどの話がまとまっていまして、Excelファイルとしても保存しています。

▲田部井さんの本棚にある怪奇譚たち

――2万はすごい……! ここに書かれている単語は何ですか?

田部井さん これはそれぞれの話をジャンルごとに分類するためのキーワードです。たとえばExcelファイル内で「女性」「変身」「鬼」と検索すると、女性が鬼になる話がいくつかでてきますよ。

――田部井さんの研究には欠かせないデータバンクですね!

▲思わず読みふけるシャカ夫

田部井さん 他の怪談研究家の皆様とも共有して、より多くの人が加筆・拡大できるようにする構想もあります。

――田部井さんのような研究をなさっている方は、他にもいらっしゃるんですね。

田部井さん はい、民俗学メディア論文学といった様々な分野に怪談を研究されている方はいらっしゃいます。そういった専門家を集めて交流会を開くこともあるのですが、自分と違う視点からの研究を知ることができるのでとてもいい刺激になりますよ。

――田部井さんご自身は幽霊の成り立ちや歴史について研究されていますよね。腰を据えて幽霊を研究するって珍しいと思うのですが、きっかけなどはありますか? ホラーが大好きだったから、とか……?

田部井さん 実は私、幽霊がすごく怖かったんですよ

――え、そうなんですか!?

田部井さん ただ、幽霊は怖いのに妖怪はそこまで怖いと思わないことに気づいたんです。川に行っても「河童が出てくるから怖い……」とはならない。これってどんな違いがあるんだろう、と思ったのがきっかけだと思います。

――幽霊と妖怪の違い、ですか。

田部井さん 両者の分類については長い間、民俗学での大きな議題になっていますね。そういった疑問や学説に触れるうちに、「幽霊」研究への興味が出てきたんです。

――過去にもそういった研究をしていた学者さんはたくさんいらっしゃったんですね。

田部井さん そうですね。私がこうして幽霊1本で研究活動を続けることができているのも、先人の方々が研究してきた地盤があるからです。私の怪談アーカイブも、そういった研究の流れの一助になればと思っています。

――民話や伝承を扱う学問の奥深さの一端を知ることができて、大変興味深いです……!

▲話はめちゃくちゃ盛り上がった

――ところで、お会いしたときからずっと気になっていたのですが、普段から和服姿に数珠をつけられているのですか?

▲途中から慣れたけど、初対面の時はかなり気になっていた

田部井さん そうです、これは普段着です! 実は服装は完全に趣味で、研究とは特に関係ないんですよね(笑)。幼い頃から和装に興味がありまして、今ではずっとこんな服を着ています。ただ……

――どうかされました?

田部井さん この数珠は、いわゆる「見える」人からの印象がよくないんですよね……。霊感のある方に話を伺ったとき、「あなたの数珠をつかむ無数の手が見えるけど、どこで手に入れたものなんですか……?」とたずねられたこともあります。

――え、えぇ……?

田部井さん でも私、この数珠をどこで入手したか覚えていないんですよ。ずいぶん前から身につけてるはずなんですが、貰ったのか、買ったのか、はたまた拾ったのか、あまり記憶がないんです。不思議ですよね。

インタビューを終えて

我々がホラー作品に感じる「怖い」「不思議」という感情が、色々な学問的観点からひも解かれていくのはとても痛快で興味深かったです。

そして、田部井さんのお話からは、幽霊に対する愛と熱意がひしひしと感じられました。途中「幽霊のことなら何でも答えてくださるのでは?」と思ったほどに各方面に精通されていて、研究者としての「厚さ」に終始圧倒されていました。

伺ったところによると、インタビュー時点で博士論文提出直前とのこと。田部井さんが長年育んできた「幽霊」に対する好奇心の集大成、それが結実するのを心から期待しております。

この度はお時間をいただき、本当にありがとうございました!

▲ご協力いただき、ありがとうございました!

【最後に復習クイズ!】

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この記事を書いた人

シャカ夫

京都大学出身。クイズと毒とホラーが大好き。見るだけで世界が広がるような知識を皆さんにお届けできるよう、日夜頑張ってまいります。

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