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こんにちは! 好きなスープはホタテスープ、ライターののりです。

2月中旬から3月下旬までの約30日間、北海道の八雲町(やくもちょう)という町に滞在し、「ホタテの耳吊り」という仕事をしてきました。

「耳吊り」って何?

まずは、「耳吊り」について少し説明させてください。

北海道の水産物の中で、生産量、生産額ともに最も高い割合を占めているのがホタテです。

北海道の主なホタテ漁は大きく分けて2つ。かごで育てた稚貝を海底に撒いて育てる地撒じまき式と、ロープや篭を使って稚貝を海の中に吊り下げて育てる垂下すいかです。

耳吊り」とは、垂下式の方法の一つで、特に稚貝の“耳”と呼ばれる部分に穴をあけ、ロープに取り付けて海の中に吊り下げるものを指します。

ここで問題。

垂下式で育ったホタテは、海底を動き回る天然のホタテと比べると、殻を閉じるための筋肉である閉殻筋、いわゆる貝柱が柔らかいのが特徴です。また、海底に接しないため、身に砂が入ることもありません。

「耳吊りバイト」をはじめよう

私が行ったのは、北海道二海ふたみ八雲やくも町。その名の通り、日本で唯一、日本海と太平洋の2つの海に面する町です。

酪農や水産などの一次産業が盛んなほか、北海道土産として有名な木彫り熊の発祥の地でもあります。“噴火湾”は噴火でできた湾というわけではなく、周りに火山があることから名づけられました。広く浅い豊かな漁場である噴火湾では、ホタテやカレイ、サケなどの漁が行われます。

▲移動中の車窓から見える噴火湾。奥に見えるのは活火山の駒ケ岳

耳吊りアルバイトの1日

04:00 a.m. :起床

ノーメイクのまま、自転車で仕事場へ向かいます。早起きが苦手な人には厳しい職場ですね。何日も続けると目覚まし時計よりも早く起きられるようになったので、朝型の習慣を身に着けたい人にはおすすめです。

▲夜明け前に仕事場に到着します

05:00 a.m. :仕事開始

仕事を始める時間はそれぞれの自由。最初は7時頃に仕事を始めていましたが、次第にその面白さに惹かれ、到着時間はどんどん早くなりました。ですが、私がどんなに頑張って早くに到着しても、漁師さんたちはいつもすでに仕事をしていました。働き者だ……!

▲ベテランの方は私の2倍ぐらいのスピードで稚貝を付けていきます

仕事中の格好は、漁師カッパに長靴、ゴム手袋、アームカバーです。足が冷えないように靴下は二重にしたり、カイロを貼ったり、防寒することも重要です。

私がやっていた仕事としては、

  • 穴を開けた貝が入った篭を水槽から揚げて机まで持って行く
  • ロープについたピンに通す
  • 1本のロープに付け終わったら、水槽に持って行って吊るす

という作業です。ロープ1本につき約200個の稚貝が付けられます。ホタテは長時間机の上にあると死んでしまうので、素早い作業が求められます。

▲この後、海に持って行って吊るします

07:00 a.m. :朝ご飯休憩

2時間働いたので小休憩。今日の朝ご飯はホタテ入りのチャーハンおにぎり。このぐらいの時間になるとアルバイトさんの人手が増え始めます。近所のおばあちゃんや若者、漁師さんの家族など、さまざまな人がいました。

07:20 a.m. :仕事再開

休憩時間が終わると、また変わらない仕事を黙々とこなします。

この後10時頃にも小休憩を挟みます。大学のことについて聞かれたり、近くのスーパーのことを教えてくれたり、町外から来た私にもたくさん話しかけてくれました。

00:00 p.m. :お昼休憩

1時間のお昼ご飯休憩です。今日のお昼ご飯は、漁師さんやアルバイトさんからおすそ分けしてもらったホタテ、昆布、玉ねぎ、ネギを刻み、小麦粉、卵、チーズを混ぜて焼いたチヂミ風。

おばあちゃんたちの道南弁の会話に交ざることができるこの時間が、私にとっては何よりの楽しみでした。まるで本当の孫のように可愛がってもらいました。友だちと仲良くおしゃべりしていたおばあちゃんたち。耳吊りも楽しそうに作業していたのが印象的でした。

01:00 p.m. :仕事再開

お昼からの仕事を再開します。これ以降は、その日の波の状況によって終わる時間が変わります。遅い日は17時頃になるときも。逆に早い日は12時頃に終わります。

寒いですが、黙々と集中する作業は意外と楽しいものでした。どうすれば速く作業をこなせるか、研究しながら工夫するのも楽しいです。

ただピンを通すだけではなく、正常に成長できていない貝をはじくことも大事な仕事です。ここでたくさんの稚貝がはじかれているのが驚きでした。

ホタテを食べよう!

はじかれたたくさんの稚貝。これらをいただけるのもこのバイトのうれしいところです。 

八雲のおばちゃんに教えてもらった殻付きホタテの便利な下処理の仕方を紹介します! 皆さんも試してみてくださいね。

鍋に貝とコップ2杯程度の水を入れ、火にかけます。

全ての貝が開いたら火を止めます。

貝から身を外します。

▲殻をスプーンのように使うと便利です

ここでちょっとつまみ食い……しようとした方はホタテリテラシーが足りていませんね! 緑色のウロと呼ばれる部分は毒性があるのでしっかり取り除かなければなりません。貝毒は加熱しても毒性を失わないので注意が必要です。

ここまですれば、色々な楽しみ方ができます! シンプルにバターで炒めたり、炊き込みご飯に入れたり、カレーにトッピングしたり……。冷凍して保存もできるのでしばらくはホタテに困りません!

貝殻の捨て方は地域によって異なるので、確認して捨ててくださいね。

ホタテ養殖のこれから

こんなにおいしいホタテですが、いつまでも当たり前のように食べられるわけではありません。海水温の上昇が原因でホタテが育たなくなったり、海洋酸性化によりホタテの貝殻が弱くなってしまったり、ホタテ養殖が難しくなってきているのが現状です。

▲捨てられるホタテの貝殻は、利用方法が追求されています

今回やった「耳吊り」はホタテを育てるための作業のほんの一部ですが、その一つひとつがあって、ようやく食卓に届きます。海の変化はホタテにも大きく影響し、その影響を加味して養殖にも工夫が凝らされています。

その環境を良くするのも悪くするのも、人間。この先もおいしいホタテを食べ続けるためには、海のことや環境のことを「遠い話」としてではなく、少しだけでも意識してみてほしいです。

海の環境はどこか別の世界の話ではなくて、必ず自分たちの食卓につながっている。そんな事実を知った上で食べるホタテは、前より少し重みがある気がします。

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この記事を書いた人

のり

北海道大学水産学部に在学中です。海に関するさまざまなことに興味があります。海と人の素敵な関係性が愛おしくて大切にしたいと思っています。画面越しに磯の香りを感じられるような記事をお届けしたいです!

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