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1首目 足繁く通ったりしているうちに、東京スカイツリーは私

 

引用元:東京タワーは4本足、でもスカイツリーは3本足。理由を塔オタクが熱弁(著:鞠乃)

では早速ですが、冒頭で紹介したこちらの短歌はいかがですか? 僕はすごいよくできた短歌だと思ったんですが……
意味としても取りやすく、とてもよくできている短歌ですね。

スカイツリーと人間、どちらも縦長のオブジェクトなので、形を対比させているのかなとも思いました。
私も歌集で見かけても全く違和感を感じないレベルだと思いました。

入っている単語に矛盾が全然なくて、しっくりきますよね。
素人考えだと、「東京スカイツリー」が1単語なのに4句目と5句目に分かれちゃってるのがダメなのかなと思ったんですが、特に問題じゃないんですか?
単語を2つの句に分けて配置するのは「句またがり」と言って、独自のリズムを持たせたいときなどによく使われる手法ですね。

特に下の句(4,5句目)の7・7を10・4や5・9にしている歌は多いです。

この句に関しても、10・4になっていることでエレガントな雰囲気が感じられます。

思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ

――俵万智/『サラダ記念日』

※下の句での句またがりの例

なるほど、5・7・5・7・7になってることは必須ではないんですね。

じゃあこの短歌は完璧にめっちゃいいということでよろしいですか!?!?
いや……これはむしろよくできすぎてて逆に面白くないかもですね。
確かにちょっとベタすぎにも感じます。綺麗にできてるおかげで逆に、「足繁く」と「通ったり」のどっちも入ってるところに説明くささがあるかもしれません。
巨大なものや輝いてるものに自分を重ねる、という表現は短歌でめちゃめちゃよく見る表現なので、「AIなのに人間っぽいこと言うなよ!」って思っちゃいますね。
手厳しい……。なんかいきなりレベルの高いこと言われてません?
詠み人がいないので好き勝手言えちゃいます(笑)。

2首目 「数字」です。ぐるりと辺りを見渡せば、時計・お金・本のタイトル

引用元:巨大数、素数、レピュニット数、謎の「↑」…数字を極める記事特集(著:QuizKnock編集部)

続いてはこちらです。ディストピアっぽくて、「AIが詠んだ短歌」らしさが出ていて面白い一首なんじゃないかと思って選んでみました。
これは実質5・8・5・6・7になってるんですけど、「・(中黒)」がいい働きをしてますね。一拍置いて読んだときのリズム感がハマっている感じがします。
「数字です」の「です」だけちょっと初心者っぽい感じがありますね。語尾などで音の数を合わせにいくのは結構やりがちです。

でも2句目以降がかなり機械っぽい不気味さがあってキズになってないですね。
そうですね。全てが「数字に支配されてる」、みたいな世界観の皮肉っぽい作品は見る気がするんですが、時計・お金まではよくあるけどそこに本のタイトルが並列されているのが不気味でいい感じです。
「ぐるりと辺りを」が4・4の音になってるのも、なんかロボっぽくていいですよね。

まさにAIが作風を発揮している短歌と言っていいと思います。

3首目 ざらざらした練習曲 』『犬のためのぶよぶよとした前奏曲

引用元:【激ムズ】変わったクラシック音楽のタイトル、実在するのはどれ?(著:はぶき りさ)

抽出した中で面白い文字列になってたので持ってきたんですが、これも短歌として読めるのでしょうか……?
区切れが曖昧ですが、分けるとしたら6・6・6・7・6でしょうか。全体では31音になってそうですね。

多用はされないけど、最近の破調の短歌として、連作の中に混ぜ込まれることはギリありそうですかね。
僕も全然短歌として読めちゃいます。むしろ好きですね。
ちなみに「犬のためのぶよぶよとした前奏曲」は実際にあるんですけど、残りの「鳥のためのざらざらした練習曲」はクイズのために作られた誤答選択肢で、この記事にしかない単語なんですよね。

選択肢はランダムで表示されるので、短歌になってないときもあるというのも「偶然」の面白さがあっていいなと思います。
だとするとより一層面白いですね。

国の名前や部活動の名前など、単語をたくさん並べて情景を浮かび上がらせる短歌は、人間が詠む短歌にも、いなにわさん・せきしろさんの偶然短歌の本にもありますね。

アルメニア、アゼルバイジャン、ウクライナ、中央アジア、およびシベリア

――ウィキペディア日本語版「モロカン派」より

偶然短歌botより

今回の短歌は前半が切れていて「犬のための」の対比が誰のためなのかもわからず、1.5個分の羅列になっているというのが怖くていいですね。
だし、人間が作ったらやっぱり「前奏曲」を前に置いちゃいそうですよね。
確かに。「前奏」ではなくその前にする「練習」が来ているというのもオシャレですよね。

人間が作ったら絶賛しちゃいそうです。
やったぜ。

4首目 読んでくれないといたずらしちゃうぞ〜 ! ハロウィンといえばカボチャ。なんで

引用元:お菓子だ!仮装だ!ホラー映画だ!おうちで楽しむハロウィン特集(著:QuizKnock編集部)

これはまさに抽出ならではの文意のわからなさがありますね。何を「読め」と言われているのだろう……? というのが気になっていい感じです。

もし人間が作ってたら、飛躍させすぎかなと思うかもですね。
僕は短歌に対するメタみたいにも見えました。この短歌そのものを「読め!」みたいな。
そして前半はテンション高いのに、急に冷たくなるのがびっくりしちゃいますよね。
そうですね。「ハロウィンといえばカボチャ。なんで」最高だなと思いました。

「いたずらしちゃうぞ〜」っていう可愛い感じなのに急にスン……となるの、どこかのアニメの魔法少女みたいですよね(笑)。

一見すると一貫性がないように思えますが、これはむしろ「テンションが乱高下している」こと自体に一貫性がある短歌だなと感じます。
これが歌集に載ってたら絶対目に止まっちゃいますね。
ですね! このクオリティの短歌を毎週いっぱい、1年くらい見続けてたら、めっちゃいい歌集が作れそうな気がしてきました。

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この記事を書いた人

灼熱亭 火焔

新人ライター。燃え上がるような熱い魂を持っている。

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