最近ニュースなどでもよく耳にする「温室効果ガス」。地球温暖化の原因とされ、「環境に悪いもの」というイメージが強いですが、実は地球になくてはならないものなのです。
温室効果ガスがなくてならないものってどういうこと?
初めまして。新ライターの森脇哲人と申します。神戸大学大学院で気象工学や大気環境を研究している私が、今回取り上げたいのは「温室効果ガス」です。
温室効果ガスとは一体どんなものなのか、もしも温室効果ガスが全くなくなってしまったら地球はどうなるのか、わかりやすく解説していきます。
地球温暖化と「温室効果ガス」
近年、地球温暖化により北極・南極の氷がとけたり、台風や洪水、竜巻などの自然災害が増えたりと、あらゆる環境問題が引き起こされています。
そんな地球温暖化の原因とされているのが、大気中に多量に排出される「温室効果ガス」です。地球温暖化防止のため、現在世界各国で「温室効果ガスを削減しよう!」と様々な取り組みがなされています。
これだけ聞くと、いかにも「環境に悪い」という印象を受けますが、温室効果ガスそのものは実は人類にとってなくてはならないもの。私たちが地球で暮らすうえで、とても重要な役割を担っているのです。
温室効果ガスが持つ役割とは
温室効果ガスとは
以下のような2つの性質を持つ気体を温室効果ガスといいます。
(1)太陽からのエネルギー(光や熱)を透過させる性質
(2)地球からのエネルギーは吸収し、再び地球表面に向かって放射する性質
このガスは地球の大気の中にわずかに含まれており、代表的なのが二酸化炭素で、他にもメタンや一酸化二窒素などが含まれます。
▲温室効果の仕組み
この性質によって、太陽から得た熱を地球に封じ込め、表面付近の大気が温められています。このように温室効果ガスによって地球が温められる現象を温室効果といいます。
温室効果ガスがゼロになってしまうと…?
ここで、温室効果ガスが全くなくなってしまった場合を考えます。温室効果ガスがないと、太陽から受け取った熱は、地球の表面からそのまま宇宙空間へ放射され、地球は温められません。
▲温室効果ガスがない場合
もしも、大気中に温室効果ガスがなかったとすると、地球の表面温度はマイナス18℃程度になると見積もられています。このような環境では、さすがに生きていくのは大変ですね。
だからこそ温室効果ガスは、人類にとってなくてはならない存在といえます。これらのガスがもたらす「温室効果」によって、現在の地球の平均温度は約15℃に保たれています。
私たちが温暖な気候で暮らせているのは、温室効果ガスのおかげだったのです。
一方、近年は…
しかし、近年はそうも言っていられません。産業活動が活発になり、この温室効果ガスが多量に排出されて大気中で熱の吸収が増えた結果、過剰に気温が上昇し始めているのです。必要以上に温室効果が働き、地球温暖化につながっています。
▲地球温暖化のメカニズム
温室効果ガスはゼロになってしまうと人類が生活できる環境ではなくなってしまいます。しかし、増えすぎると地球温暖化の原因となってしまうので、適切な量に保たれないといけないのです!
最後に
「悪者」と思われがちな温室効果について、重要な役割があることも理解していただけたでしょうか。良い点があると言っても、増え続けている温室効果ガスを温暖化防止のために減らしていかなければならないのが現状です。
現在、世界各国で温暖化防止のために温室効果ガスを削減する政策がなされています。たとえば、化石燃料ではなく再生可能エネルギーを使った電力事業政策や、ガソリン車を廃止して電気自動車を普及させるといった動きが見られます。
温室効果ガスの発生源は、電気を作る際の化石燃料の燃焼や自動車の排出ガスなど、私たちの生活に強く結びついているものです。電化製品の主電源をこまめに切る、出かける際は公共交通機関を利用する、買い物の際はエコバッグを利用するなど、身近なことから温室効果ガスの排出を減らしていきましょう!
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