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ライターのymoriです。

次の4月で就職する修士2年の大学院生です。もう修士論文は提出したので家で遊んだり、民族料理やラーメンを食べに行ったりしています。

さて、私は大学院生として量子力学に基づいたシミュレーションで物質について解析を行う研究をしてきましたが、一応それなりに学会や研究集会に参加したことがあります。

たまに「○○学会で~について議論が交わされた」というようなニュースを聞くこともあるかと思いますが、「学会って具体的に何をしているんだ?」というのはあまりイメージが湧かないかもしれません。

そこで、自分の経験をもとに学会についての説明する記事を書きたいと思います。

目次

そもそも学会とは?

学会とは研究成果を発表する集会です。多くの研究者や大学院生が集まってそれぞれの研究成果を発表します。

発表の方法には口頭発表ポスター発表という2つの形式があり、どちらかを選んで発表することになります。なお、ポスターとは自分の研究成果を1枚の大きな紙にまとめたもののことです。

同じ学問分野の人たちが集まる文化祭みたいなものと言えるかもしれません。(演劇も演奏も屋台もないですが……)

school_bunkasai だが文化祭より堅苦しい

特に厳密な定義は無いですが、学会には日本国内の大学や研究機関に所属する人が参加する国内学会と海外の大学や研究機関に所属する人も参加する国際学会の2種類があります。

いずれの場合も参加手続きや開催内容に大きな差はありません。ただ、国際学会は手続きも発表も英語であるためハードルは高いと言えるでしょう。

ところで、学会に参加するにはある程度の研究成果があることが必要です。どの程度の成果だったら学生を学会に参加させるか判断するのは指導教員なので、参加できるか否かは指導教員によるでしょう。

ただ、学会発表は研究業績になるので、むしろ学会に参加するように言われることの方が多いのではないかと思います。

学会で発表するためにはどうするの?

基本的には、学会のサイトで氏名・所属大学・発表テーマといった発表者の情報を登録して参加費用を払い、学会の指定する書式でまとめた要旨を提出するだけです。

この参加費用は自分の場合は研究室の予算から支払われていました。ちなみに、学会参加するにあたっての交通費や宿泊費も研究室の予算から出たので、お金について心配することはありませんでした。

要旨とは「こんなことを発表するよ~」と他の参加者に知らせるための文章です。参加者が提出した要旨はパンフレット(か電子ファイル)としてまとめられ、配布されます。

また、実は研究成果がまだまとまっていなくても、結果が出せる見込みが立っていれば要旨に「~について発表を行う予定である」などと未来形で書くこともできます。(ただ、見込みが甘いと要旨と実際の発表内容が食い違って格好悪いことになるかもしれません)

ちなみに、学会の要旨は参加者に配布されるものなので、しっかりした内容でないといけません。そのため、学会のたびに指導教員や助教に要旨を見せ、表現や文章構成が添削されることになります。

私も国際学会に参加するために要旨を自分なりに書いたことがあるのですが、先生に提出して返ってきたWordファイルを見ると、自分の文章が半分以上無くなっていました。(苦笑)

teacher_saiten_man 最初の頃は大幅に添削される

口頭発表か?ポスター発表か?

冒頭のほうで口頭発表とポスター発表の2種類の形式があると述べましたが、それぞれ発表の特性が違います。

口頭発表ではその発表会場にいる大勢の人たちに聞いてもらうことができますが、発表後の質問時間が限られているためなかなか詳しく議論を行うことができません。

しかし、それでも自分と似たような分野の研究者から質問やコメントをもらうことができます。逆に、誰も興味を持ってくれずに司会が時間を埋めるために質問するような事態もありますが、これは少しさびしいことです。

これは小規模な集まりだったがやはり口頭発表は緊張した 小さめの集会(@韓国)だったが英語の口頭発表は緊張した

一方、ポスター発表では決まった発表時間の間ずっとポスターの前で自分の研究に興味を持ってくれる人を待って、来てくれたときにポスターを見せながら説明し、質問に応じたりします。

自分のポスターの前に来てくれた人が全く別の分野で一から説明する場合も、同じ分野の研究者が来て詳しく議論することになる場合もある発表形式です。

私はポスター発表も口頭発表もしたことがありますが、私はポスター発表の方が好きです。

poster_gakkai ポスターはA0サイズの大きさだ(@台湾)

 

立ちっぱなしで何度も話すことになるので肉体的には辛いのですが、あまり緊張しないし、興味を持ってくれた人から直接コメントが貰えるのが良いところだと思います。

ついでに言えば、あまりに人が来ないときは近くの発表者に話しかけて、ポスターについて解説を受けたり、研究事情や就活事情などの世間話をしたりできます。

ちなみに、どの程度添削されるかも教員や助教次第な面が大きいのですが、ポスターについては指導教員の添削が入りますし、口頭発表の場合は研究室のミーティングでリハーサルを行ってスライドの修正を行うことになります。

自分の発表が終わったら

発表した後は、自分の研究と関係がありそうな他の人のポスターや講演を見たり、同じ分野の権威として有名な教授の講演を見に行ったりします。

まったく興味が無い講演ばかりのときはコーヒーを飲んで休んだり、周囲を散策しに行ったりすることもあります。

そして、学会が終わった後は先輩・同期・後輩、教授と食事(というか飲み会)に行きます。この学会が終わった後の一杯と食事は達成感のスパイスが加わって美味です。

また、バンケットと言って学会が研究者の交流を促すための会食の場を設けることもあります。

自分の知る限り、バンケットは国際学会で催されることが多かったのですが、これは一人ぼっちの学会参加だったり、とてつもなく高い参加費だったりしなければ是非行きましょう。

美味しい料理が出ます(多分)。

2016-11-01 19.17.13 (640x480) 実際のバンケットの様子(@台湾)

まとめ

以上みてきたように、学会とは研究成果の発表が行われる場です。

研究には多くの苦労がありますが、学会は他の研究者から自分の研究について意見をもらえる貴重な場ですし、開催場所によってはちょっとした旅行にもなります。

なかなかポスターが印刷できなくて死ぬような思いをしたり、電車の中で小声で発表原稿を暗唱したりすることもありましたが、大学院生活の思い出になったように感じられます。(もう1度やりたくはないですが……)

この記事を見てくれた方が学会について理解を深めていただければなによりです。それでは!

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この記事を書いた人

ymori

東京大学OB。専門は量子力学に基づいたシミュレーション。ラーメン屋で野菜をマシにして食べる草食系。スパイスの効いた料理と度数の高いお酒が好きです。

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