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コジマです。

救急車が走り去るときに、サイレンの音がだんだん低くなるように聴こえた経験はないだろうか。このように、音源が移動しているときに音の高さが変化する現象をドップラー効果という。

音の高さが変わる……。私(男性)はよくカラオケに行くが、女性ボーカルの曲を原キーで歌いたいことがしばしばある(大抵は出ないので1オクターブ下で我慢する)。しかしドップラー効果を利用し、素早く動きながら歌えば高い声に聴こえるのでは?

原理的に出来なくはないはずだが、問題はその速さである。どのくらいの速さで動けばいいのだろう。

ドップラー効果は意外にシンプル

ドップラー効果による周波数の変化は、割と簡単な数式で計算できる(高校物理の範囲)。

 

音源や観測者(聴いている人)の速さは、音と同じ方向に向かうとき正、逆方向に向かうときに負となることに注意してほしい。

救急車のサイレンを立ち止まって聴いている状況を考えてみる。救急車は音源なので、vsに救急車の速さを代入する。voには観測者の速さ、ここでは0を代入すればいい。またVは音速で秒速約340m

救急車がこちらに時速30km(秒速10m)で向かってくるとき、vs=10なのでf’/f = 340/(340-10) = 1.03。つまり聴こえる音の周波数は元の1.03倍になり、高い音に聴こえる。

そのまま救急車が通り過ぎ、同じ速度で遠ざかっていくとvs=-10になって、f’/f = 340/(340+10) = 0.97。聴こえる音のほうが0.97倍の周波数なので低く聴こえるという訳だ。

音速の半分でいい!

男性と女性の声域はおおむね1オクターブくらい違うだろう。ある音を1オクターブ高くすると、周波数は2倍になる。

つまり、ドップラー効果で音を1オクターブ高くするためには、上の式でf’がfの2倍になるようにしなければいけない。聴く人は静止している (vo = 0) とするとき、f’ = 2f となるvsV/2。つまり音速の半分の速さで聴く人に近づきながら歌えば女声に聴こえる!

速い、怖い、遠い

音速の半分とは、秒速約170m時速に直すと約612km。仮にこの速さで動けたとして、人間が時速612kmで自分の方向に突進してきたら怖くてカラオケどころじゃない。

また、この方法の問題は、声が高くなるのは音源が近づいてくるときだけであるところ。近づき切ってしまうと元の声に戻ってしまうので、歌っている間は常に近づいてくる状況にせねばならない。5分の曲を時速612kmで近づきながら歌うために必要な距離は51km……。


時速612kmで走らずとも、発声トレーニングで高音は出るようになるという。素直に声帯を鍛えよう。

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この記事を書いた人

コジマ

京都大学大学院情報学研究科卒(2020年3月)※現在、新規の執筆は行っていません/Twitter→@KojimaQK

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