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こんにちは、木村です。

今月(2025年11月)15日、ある国際的なスポーツイベントが日本に初上陸することをご存じですか? それが、耳のきこえない(デフ・Deaf)・きこえにくい人のための、4年に1度のオリンピック、デフリンピックです。

第1回大会の開催からおよそ100年となる今月、東京2025デフリンピックが開催されます。

普段、テレビなどで目にする機会があまりないデフスポーツ。今回は、その最前線で戦う選手にお話を伺いました。インタビューに答えてくださったのは、東京2025デフリンピック陸上日本代表の樋口光盛こうせい選手です。

樋口光盛選手
2000年生まれ、大阪府出身。デフ陸上800m、3000m障害の日本記録を保持。東京2025デフリンピックに、800mと1500mの日本代表として出場予定。
インタビュアー:木村 真実子
「東京大会の機会を逃したくない!」との思いから、選手へのインタビューを実施。中学校のバドミントン部を引退して以来、スポーツは「見る専」。

きっかけは「チームプレーへの苦手意識」

――まずはデフリンピックへの出場決定、おめでとうございます!

樋口選手 ありがとうございます。

▲北海道での合宿直後にもかかわらず、取材を受けてくださいました

――樋口選手の「きこえ」について、少し伺ってもいいですか?

樋口選手 補聴器を外すとまったくきこえず、お風呂の中で反響する音がぎりぎりきこえるかな、くらいです。補聴器があれば問題なく会話できますが、相手が早口だったりボソボソ喋っていたりするときは、やっぱりきき取れないこともありますね。

マスクをしている場合は外して、ゆっくりめに話してもらえると助かります!

――わかりました! ではさっそく……樋口選手はいつ頃から、どのようなきっかけで陸上競技を始めたんですか?

樋口選手 中学生の頃、最初は野球をやっていたんです。ただ、やはりきこえないという部分でチームプレーに苦手意識を感じてしまって。

姉が陸上競技をやっていたので勧誘を受けて、そこから陸上競技を始めました。

――お姉さんがきっかけだったんですね。いろいろな陸上競技がある中で、いわゆる中距離の800mや1500mに取り組まれている理由は何ですか?

樋口選手 元々は中学校で3000m、高校で5000mをやっていたんです。でも、長距離はやっぱりしんどい時間が長いので。高校3年生のときに指導してくださる先生が替わったのもあって1500mに挑戦してみたら、いい記録が出たんですよね。そのあと1500mも長いなと思って、800mに挑戦したりしました。

さらに短い400mも走ってみたんですけど、これはあまり自分に合わなくて、最終的に800mと1500mでいこう、と。

――いろいろと試行錯誤された結果の中距離だったんですね!

1年前、初めて立った世界の舞台

――社会人になる前には、一度競技を離れた時期もあったと伺いました。

樋口選手 記録が伸びなかった時期ですね、2022年の頃です。でも社会人1年目のときにやっぱり続けたいという気持ちが強くなって、復帰しました。

――2022年というと、ちょうどデフリンピック2025年大会の開催地が東京に決まった頃ですよね。復帰した当初から出場を目標にしていたんですか?

樋口選手 はじめはデフリンピックに出たいという気持ちはまだなかったです。それより前の2024年に世界デフ陸上競技選手権大会があって、まずはそれに出場することを目標にしていました。

――目標叶って世界選手権に出場、800mで日本新記録の2位、1500mで3位と素晴らしい成績でした。

――そもそも世界の舞台自体、これが初めてですよね?

樋口選手 初めてでしたね。でも、日本国内の大会と世界大会とで、そこまで大きな違いはなかったです。もちろん言葉の壁というのはありましたけど……。手話の世界では「国際手話」という言語があって、海外の選手たちはそれを使って国を超えたコミュニケーションを取っていました。

国際手話:さまざまな国の人にとってわかりやすい表現で作られた、世界共通の手話。

樋口選手 でも日本では「日本手話」が主に使われていて、国際手話を使う人はほぼいないんです。僕も国際手話はわからなくて……。日本人のデフ選手は、世界大会でのコミュニケーションに困る人も多いんです。ただ、僕にとって陸上競技をする上でコミュニケーションはそんなに重大ではなかったというか。勝てばいい、くらいに思っていましたね。

今は「1日でも無駄にしたくない」

――今はデフリンピックに向けての準備期間かと思います。それこそ、この取材の前日まで北海道で合宿だったとか……。

樋口選手 合宿は大体1年に5回くらいあります。夏には北海道、冬には沖縄、大事な国際大会の前には東京でおこなったりと、季節によって場所も内容もさまざまです。

昨日までの合宿では、朝に6〜8kmくらいの軽いジョギングをして、そのあとは決まった距離を決まった速さで走るペース走とか、合計3kmくらいのスピード走とかが中心の練習メニューをやってきました。

▲合宿中の樋口選手(本人提供)

樋口選手 僕は中距離の選手ですけど、距離の違う選手も合宿では似たメニューに取り組んだりしていますね。

――合宿以外では、普段どのくらいの練習をされているんですか?

樋口選手 週に2日は大学を練習場所にして他の(きこえる)選手と一緒に、それ以外の5日1人でやることが多いですね。

――ほぼ毎日ですか!?

樋口選手 以前は週に1度オフの日を設けていましたが、デフリンピックが近いので1日でも無駄にしたくないという気持ちで今は毎日やっています。

次ページ:「実は、デフリンピックの歴史って長いんです」

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この記事を書いた人

木村 真実子

東京大学大学院修士1年の木村です。生物素材化学について勉強しながら、作問したり早押ししたりしてクイズを楽しんでいます。好きなものはJ-POP・広島東洋カープ・フクロウなど。身の回りを見渡すのが少し楽しくなるような記事を目指します。よろしくお願いします。

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