デフスポーツで活躍のスタートランプ
――デフリンピックに出場するときは、規定上「補聴器をつけられない」んですよね。練習でもその環境に合わせているんですか?
樋口選手 デフリンピックでは補聴器はつけられませんが、実はきこえる選手と一緒になって同じスタート方法で競うような記録会のときは、つけたまま走れることも多いんです。他の人と練習するときは周囲の足音もききたいし、普段は装着したまま練習していますね。

――デフリンピックについては外して一発勝負、という感じなんですね……。大会本番では、スタートの合図はどうしているんですか?
樋口選手 「スタートランプ」の光を見ます。400m以下の種目では足元にあって、赤から始まる3色の光が「位置について」「ヨーイ」「スタート」の役割をするんです。800m以上になると、2色のランプ(スタンドシグナル)を少し遠くに立てるようにして使います。
▲左が短い距離で使う3色、右が2色のスタートランプ(提供:日本デフ陸上競技教会)(画像をトリミングしています)
――400m以下はクラウチングスタート、800m以上は立ってのスタートなので、スタートランプも目線に合わせる必要があるんですね。
応援は「サインエール」で!
――スポーツの試合での応援というと、やっぱり声援や鳴り物のイメージが強いです。デフリンピックを観戦するとき、選手に応援の気持ちを届けるにはどうしたらいいですか?
樋口選手 声援の代わりに身振りで伝える、「サインエール」というものがあります。
僕は走る側なのであんまりやったことがないですけど(笑)。サインエールをわかりやすく教えてくれる動画もあって、こういう……
▲手を前に伸ばして……なるほど……
▲「サインエール」の紹介動画の例
――覚えやすい! 観客みんなでやったら、一体感がすごそうですね。
樋口選手 やっぱり現地で目立つので、応援してもらっているな〜と嬉しくなります!
実は長い! デフリンピックの歴史
――スタートの合図、応援スタイルと教えていただきましたが、他に樋口選手が「デフリンピックについて知ってほしいな」と思うことはありますか?
樋口選手 歴史の長さですかね。オリンピックが始まったのが1896年で、パラリンピックは1960年から。そして、デフリンピックは1924年に始まっていて、今年で100周年なんです。
――パラリンピックよりも、だいぶ歴史が長いんですね!
樋口選手 そうなんです。そこがあまり知られていないなって思いますね。
――そもそも、「パラリンピックに聴覚障がいを持つ方用の種目はない」というのも、知らない人は多いかもしれません。
樋口選手 海外では、日本と比べてデフリンピックの認知度が高いように思います。日本でも東京大会を機に、もっと多くの人に知ってほしいですね。

800mは「ぶつかり合いが楽しい」
――樋口選手は800mと1500mの代表として出場されますが、これらの種目の見どころはありますか?
樋口選手 特に800mは、はじめの100mだけ選手ごとに決められたコースを走って、それ以降はみんな一緒のオープンコースを走るんです。

なので内側に一気に選手たちが集まって、接触して転んだりもする。その争いは見どころのひとつです。やってる側としても楽しいですよ。
――転倒が怖かったりはしないんですか?
樋口選手 まったく。僕、大阪出身というのもあって。
――……結構、オラオラでいけちゃう感じですか?
樋口選手 そうなんですよ(笑)。
▲この笑顔で言われると、にわかには信じ難いですが……――接触のスリルまで楽しめるのはすごい……。800mを戦う上では確実に「強み」ですね。
応援するけど負けたくない、同年代の選手
――ちなみに、競技に取り組む中で意識している選手はいますか?
樋口選手 関西大学2年生の
▲樋口選手が「日本トップレベル」だと紹介してくれた萬野選手
樋口選手 デフリンピックに出場する中だと、棒高跳の
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▲こちらも国内外で活躍中、棒高跳の北谷選手
樋口選手 去年の世界デフ陸上競技選手権大会では銀メダルで、悔しくもあったと思うのでリベンジしてほしいですね。でも僕も負けたくないです。
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