強くなるきっかけは「頼る人がいなくなった」こと
――この記事を読んでいる中には、樋口選手のように何かの目標に向かって取り組んでいるという人もいると思います。今の樋口選手から、何かメッセージをいただけますか?
樋口選手 「自分で考えて行動すること」の大切さは伝えたいです。僕が陸上に取り組む中で、強くなるきっかけになったかなと思うことがあって。
――と、いうのは?
樋口選手 高校3年生のときに指導してくださっていた先生が異動してしまって、教えてくれる人がいなくなったことです。このときに自分で「ここからどうしよう」と考えて、これまでにメモしておいたことを見返したりもして……。その経験が、強くなれた理由なのかなと思います。

樋口選手 中学や高校ってたいてい教え導いてくれる人がいるけれど、僕はたまたまいない時期も経験した。だからこそ、「自分で考えて動く」のも大事ってことに、気づいてほしいと思いますね。
陸上が「趣味」から「仕事」へ
――樋口選手は今年6月から、小学館ミュージック&デジタル エンタテイメント(SMDE)所属のアスリートとして活躍していますね。今日もSMDEのオフィスをお借りして取材をさせていただきました。
樋口選手 それまでは「趣味」としてやっていた陸上が「仕事」になって、会社の名前を背負っているという使命感も生まれました。応援してくれる人がより一層増えたんだなという実感もありますね。今日も「みんな執務室で応援してるよ~」って社長が言いに来てくれたり(笑)。家族も練習仲間も所属する会社の人にも、みんなに良い報告ができるように頑張らないとなと思います。

6年ぶりに感じた「新記録、出るかも」
――そんな樋口選手のキャリアの中で、何か大きな「壁」に当たった経験はありますか?
樋口選手 自己ベストが全然更新できなかったことです。高校3年生のときに800mで1分55秒44を出して、当時の大阪でトップ10に入るくらいだったんですけど、そこから6年間記録を更新できなくて。
――6年間ですか……。
樋口選手 ようやく更新できたのが、去年(2024年)。日本陸上競技選手権大会のオープン種目に出場したときで、トップ選手ばかりが集まる大会ということで普段の大会と比べても特別感がすごかったんです。
▲樋口選手の出場シーンはこちら
――いつもより大きな舞台って、緊張してしまわないんですか?
樋口選手 むしろ、競技場に入った瞬間から「あ、なんか今日、記録出そうやな」って思ったんですよね。お客さんからの応援に、いつも以上に力をもらったのもあったんでしょうね。
――樋口選手、特別感を楽しめるタイプなんですね……。今のお話を聞くと、初出場であるデフリンピックの場にも強そうだなと思ってしまいます。
樋口選手 プレッシャーがあった方が燃えるので、大舞台に強いタイプだとは思っています。だから、「東京デフリンピックでも何か起きるんやろうな」と……。
――大会当日がめちゃくちゃ楽しみになってきました……!!
東京2025デフリンピックは、誰もが「世界レベル」に触れるチャンス
――いよいよ11月にはデフリンピックが開幕。実は、誰でも気軽に見に行ける大会なんですよね?
樋口選手 はい。よくあるスポーツの大会と違って、観戦申し込みも、チケットの購入も必要ありません。誰でも気軽に、フラッと来ていただければ世界レベルの競技を見られる場所なんです。
日本ではまだまだデフリンピックの知名度が高くないので、東京大会がきっかけになってくれればいいなと思います。
▲【第25回夏季デフリンピック東京2025 公式YouTubeチャンネル】より引用
――最後に、東京2025デフリンピックに向けた、樋口選手自身の意気込みを教えてください。
樋口選手 自分にとって初めてのデフリンピックがたまたま東京大会ということで、「東京で日の丸を背負える」ということに誇りを持って走りたいです。「応援したいな」と思ってもらえるように、頑張ります!
――私も応援させていただきます! ありがとうございました!
▲お忙しい中、本当にありがとうございました!
中学生の頃、「チームプレーに馴染めなかった」ことから始めた陸上で、世界の舞台にたどり着いた樋口選手。自らの経験をもとに、「何ができるか」「何をしたいか」を自分で考えることの大切さについても教えていただきました。
デフリンピックという大舞台を前に、「プレッシャーがあるほど燃える」と語る姿も印象的。世界最高峰の選手同士によるぶつかり合いが東京で見られることにワクワクが高まる時間でした。
◎東京2025デフリンピックに関する情報は、こちらから。




























